手紙

弟が拘置所からでてきたとき
たくさんの手紙の束をだして言った
「時間がいっぱいあったから遺書を書いた」
私の知る限り遺書とは一通のはずだ。
弟が差し出した封筒は10をこえていた。
お父さん、お母さんへ
お姉ちゃんへ
家族の名前が書かれているものや、離婚した奥さんと子供にあてたもの。
元カノにあてたものもあった。
両親へがいちばん多く何通も書かれていた。
「姉ちゃだけ読んでいいよ」
そう言われたから全部読んだ。

二世で育ったことへの葛藤、その苦悩と憤り、悲しみ。
全てがその手紙に書かれていた。
最初は文字も綺麗で丁寧に書かれているが、2枚目、3枚目に進むとどんどん文字が乱れていく。

弟の感情が溢れ出ている。
最後はかきなぐるような文字になっていた。
魂の叫びがそこには書かれていた。

父親に当てた手紙の中に私のことが書かれていた。
嗚咽するほど泣いて、心から思った。
私は私のことを誰も理解していないと思っていた。
100%のうち親友が70%、旦那は60%
子供たちは20%
みんな私のことを知らない。
それでいいと思っていた。

弟は80%知っている、理解している、通じている。
あとの20%は自分がわかっていればいい。

進みたい、前に。
弟が少しでも楽に生きていけるように。
幸せになれるように。
80%を理解して受け入れてくれる唯一の存在をなくしたくない。

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