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緑にゆれる(ロングバージョン)

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長編小説「青く、きらめく」の十五年後の物語。大人になったカケル、美晴、マリのそれぞれの愛の行方は――鎌倉周辺で取材で撮った写真と共にお送りします。
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2022年3月の記事一覧

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.14 第二章

 このとき、今まではっきりと形をとっていなかった疑念が、マリの頭の中に、くっきりと浮かび…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.15 第二章

 カケルは、椅子の背もたれに寄りかかって黙って話を聞いている。 「働いていたときは、同じ…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.16 第二章

 うつむいて黙っていると、カケルが場の空気を変えるように笑った。 「何で、お前が深刻にな…

清水愛
2年前
4

【連載小説】「緑にゆれる」Vol.17 第二章

「向こうは、何て」 「マリちゃん」 「子どもができる前は、彼のこと何て呼んでたの」 「……

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.18 第三章

   第三章  まさに、青天の霹靂だった。会社をたたむ。倒産を、みんなの前で通告してから…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.19 第三章

 ふらりと、また来てしまったのはなぜだろう。  二ヶ月ほど前にたどっていた道を、またこう…

清水愛
2年前
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【連載小説】「緑にゆれる」Vol.20 第三章

 結局、そのまま晩ごはんまでいただくことになってしまった。食べつつ、会社が倒産したことを話した。 「同僚のカメラマンが湘南に住んでて、いいよ、っていうから、それもいいかな、と思って。今のところだと家賃高いし。物件、探しに来たってわけ」  チキンのバジル風味のローストをほおばりながら言った。店内には、小さな音で音楽が流れている。やさしいギターのソロだ。 「いい物件、見つかりました?」 「んー、どうだろ。まぁまぁかな」  美晴は、食後の飲み物を用意している。 「ひょっ