【連載小説】「青く、きらめく」Vol.16 第三章 雲の章
部屋のどこかで電話が鳴っている。それが自分の携帯だ、と気づくまでに、少し時間を要した。心が、今ここにいる自分の体を留守にしていたようだ。
「美晴? 元気にしてる?」
哀しい記憶の中とはまるで別人のような母の声がして、美晴は一気に現実に戻される。
「お母さん……」
泣くつもりはなかったのに、ひと言発したら、涙があふれて止まらなくなった。
「どうしたの?」
無言でしゃくりあげる娘の声に慌てている。
「何かあったの?」
ううん、何にも、と小さく言うのが精一杯だった。美晴が