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【長編小説】「青く、きらめく」

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大学の演劇サークルで出会った、カケル、マリ、美晴。三人の視点で描いた、恋愛青春小説。
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#青春小説

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.1 第一章 風の章

   一、風の章  どこか遠くへ行きたい。できれば、北がいい。子どもの頃からずっとそう思…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.2 第一章 風の章

  マリは――と、カケルは思いを巡らす。マリは、新入生の時から、何か堂々として自信ありげ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.8 第二章 海の章

   二、海の章  自分の部屋のドアをくぐると、マリはパタン、と後ろ手で扉を閉めた。いつ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.9 第二章 海の章

「何か、用?」  この人だ。ひと目見て、すぐ分かった。きびすを返そうと思っていたマリは、…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.10 第二章 海の章

 キャンパスからの帰り道は、うっすらと雨で濡れている。土ぼこりが濡れた、雨の日の匂い。マ…

清水愛
5年前
2

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.11第二章 海の章

 マリは、少し緊張気味にスペースに向かう。一歩一歩、秘かな祈りをこめながら。どうか、カケ…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.12第二章 海の章

 あの夏も、そうだった。  本家に集まらないか、という話が持ち上がった夏休み。確か、おばあちゃんの三回忌か七回忌か、マリの記憶は定かではない。マリは小学五年生だった。 本家には、小さい頃から何度か遊びに行ったことがあった。マリの家から車で一時間ちょっと。海の見える小高い丘の上にある、木造の家だった。庭には、木々が生い茂り、みんみんとセミが鳴き立てていた。いろんな花や草が生えていた。その庭で、マリは何度かいとこや親戚の子たちと遊んだ。  翔ちゃんが一番年長で、その妹の広美ちゃん

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.13第三章 雲の章

三、雲の章  もう、一時間も海辺で過ごしてしまった。海を目にした瞬間、先ほどまでの落ち込…

清水愛
5年前
2

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.14第三章 雲の章

 「行こう」  カケルは、振り返らずに海岸を後にする。向かう江の島のすぐ右隣りに、一片の…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.15第三章 雲の章

 カケルと美晴は、しばらく黙ったまま、並んでその風景を眺めた。  ただ茫洋と広がる海。と…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.16 第三章 雲の章

 部屋のどこかで電話が鳴っている。それが自分の携帯だ、と気づくまでに、少し時間を要した。…

清水愛
5年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.17 第三章 雲の章

 足を少しずらして背筋をぴん、と張って立つマリは、美しかった。生まれながらにして、こんな…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.18 第三章 雲の章

 日没直後の海は、少し荒れていた。空は、薄い青から紫へと変わり始めていて、風は夜の気配を…

清水愛
4年前
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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.19 第四章 風の章、再び

  四、風の章、再び  どうして、こんなことになってしまったのだろう。  ひとりになってガランとした部屋に、西日が差している。シャワーを浴びなくちゃ。じきバイトに出かけなければいけない。そう思っても、体がだるくて動けない。カケルは、再び、バタン、と布団に寝ころがる。  シーツに、ふんわりとリンスの匂いが香る。沙耶の髪の匂いだ。沙耶は、いつも通りヒールで弾むようにやって来て、事を済ますと、じゃ、ね、と言って軽い足どりで出て行った。今日は夕方からバイトだから、と言うと、じゃ、そ