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#5 「大丈夫」の使い方 間違っていませんか?

「レジ袋、大丈夫ですか?」
コンビニでの支払い時に聞かれる。スーパーの会計時でも聞かれる。
居酒屋やファミレスなどでも、メニューを下げるときに聞かれる。
「メニュー、大丈夫ですか?」と。

 同じようにビジネスの場でも、
「この資料を、返送してもらっても大丈夫ですか?」
それに対して
「はい、大丈夫です」
などと答える。

 最近、頻繁に耳にするこの「大丈夫」という言葉。 果たして、このような使い方でいいのだろうか?

 私はどうもこの使われ方に違和感があって、敢えてこう、返事する。
「結構です。エコバックを持ってきていますので」
或いは、
「はい、メニューは下げていただいて結構です」
と、話の意図をきちんと言葉にして返すようにしている。

 先ほどのビジネスシーンでの会話では、
「この資料を返送していただいても、よろしいですか?」
と尋ね、
「はい、承知しました
と答えるのが、丁寧で誤解が生じないやりとりだ。

 そもそもこの「大丈夫」という言葉、本来、どんな場面で使うのかというと、たとえば、目の前で誰かが転んだ時、
「大丈夫ですか? おケガはありませんか」
とか、試験前の受験生に
「これだけ勉強したのだから、大丈夫、大丈夫!」
などというのが正しい使い方だと思うのだが、最近はこの「大丈夫」という言葉がとても便利に使われ過ぎているように思うのだ。

 以前、こんなことがあった。かれこれ1年ほど前になるだろうか。
心電図を測るために訪れた病院の検査室で、看護士が私の体に貼り付ける、あの、吸盤のようなものを手にしながら、こう訊ねた。
「アルコール、大丈夫ですか?」
「んん?」
一瞬、不思議に思いながらも、正確に答えることを常としていた私は、
「はい! 飲んでいません」
と明るく答えた。
 すると、場の空気が一変した。ちょっとした沈黙のあと、看護士は無言のまま、下着姿で仰向けになっている私の体の数か所を、荒々しくアルコール綿で拭いていくではないか。
 私は覚った。この看護士の「大丈夫」の意味は、「アルコール消毒液に、アレルギーはありませんか?」だったのだ。
 いやだ、恥ずかしい。ちゃんと言ってよ。穴があったら入りたい。

 その日の心電図は、きっと心拍数が異常に速く、乱れた波形だったに違いない。


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