ストレスフリーでイラストのお仕事を進める方法
こんにちは、イラストレーターの頼和 愛(よりわ あい)です。
今回はイラストレーターとして仕事をする上でとても大切なお話をします。
イラストのお仕事でストレスになることってありますよね。金額が安い? 納期が短い? これらに関してはある程度引き受ける前にどうにかできる部分があると思うのですが。
私が広告代理店でアートディレクションをしていた時、一番ストレスだったのは
本データ提出後の修正です。
本データ納品後の修正って、イラストレーターとクライアントとの間に挟まれた身としては、めちゃくちゃ胃が痛くなる案件でした。イラストレーターに嫌がられながら修正指示をする……やっとのことで再校を出したのにクライアントがつかまらない! また修正? 今日校了させないと入稿が間に合わなくなってしまうーー!!! といった風に。
余裕のあるスケジュールを組んでいても、思わぬ大量の修正などでスケジュールが押してしまうのはとてもあるあるでした。
何十回何百回ヒヤヒヤしたことか……。
クライアントもある程度高いお金を払っていますし、今後も継続して受注したいはずなので、デザイン会社も「修正は1回までじゃないと追加料金ですよ」とかは言って来ませんが、その分クライアントも修正に遠慮がない。
そもそも一般的なスケジュールが初校→再校→(稀に念校)→校了(責了)と、修正が前提みたいになっている……。
こういったことを何回も見ていて、このやりとりすごく無駄だなあと思っていたのです。
頑張って描いたイラストに修正が入るって結構ストレスですし、内容によっては金額に合わないなんてこともあるでしょう。
そこで、今回は納品後の修正をなるべく回避する方法についてお話しします。
まずは結論から、それは
「ラフを極力、本データに近付けること」です!
何故、これによって納品後の修正を回避できるのか、私の体験談を元にお話ししましょう。
本データ提出後に修正が出てしまう最大の原因は、
クライアントがラフ段階で完成品をイメージできていないからです。
ラフでOKが出たのに本データが来た途端、NGになるというのは、ラフで思い描いていたイメージ(そもそもイメージできていたのかって話ですが)と実物がかなり違ったということです。
それって誰の問題でしょう? クライアント? でもクライアントに絵の想像力つけてくれって無理な話なんですよ。自身に絵心のある人はそもそも人に頼まないですからね。絵が描けないからこそ人に頼むわけです。
イラストレーターの人って大抵当たり前に絵が描けて、
絵が描けなかったり絵に関する想像力がない人の気持ちが分からないんです。
これはかなり極端な例ですが、例えばこんなラフが来たりします↓
「いやいやいや、これ分からないでしょ!笑」
って当時密かに思ってました。でもイラストレーターは「ラフってこういうもの」って感じで平然と出してくるし(勿論忙しいとかもあるんだと思いますが)、クライアントの方も「こういうものかあ」って納得しているのかプライドなのか「よく分からない」とは言わないんですよね。ラフって割とすぐOK出してくれるんです。
そもそも↑これ良し悪し分かります? っていう笑。
これでOK出て進んでも、いい意味でも悪い意味でも全然違うものができてくるんですよ。そりゃ修正になりますよね。よほど運が良くなければ。
つまりラフの段階で完成形のイメージがしっかりクライアントに伝わっていれば、完成品はそこでOKしたものからイメージが大きく変わらないため、修正を減らせるのです。
でもラフを本データに近付けるって具体的にどうしたらいいの? そのためには以下の6点を意識しましょう。
一つずつ説明していきます。
1、綿密にヒアリングする。
これはかなり重要です。
ラフへ取り掛かる前に5W1Hを意識して、丁寧にヒアリングしましょう。
Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)
クライアントは何をしている人か、いつまでに(納期)、どの媒体で(データの仕様)、何を描いてほしいのか、何故それが必要なのか(目的)、どのように表現したいのか(好み)。
特に前提の目的部分はとても大切です。
これが違うとラフを出しても見当外れになることがあるからです。また逆にこれを知ることで、クライアントが望むイメージと多少違っていても、問題解決のために最適な案を提案できるかもしれないからです。
これってイラストレーターとしての腕の見せ所で、クライアントが考えていなかった良い案を出せると評価が上がったりします。
描いて欲しい内容についてもなるべく詳しく聞いていきます。相手から言われなくても「〜についてはどうですか?」と積極的に聞いておきましょう。色味の好みなどもできれば聞いておくとベターです。
2、なるべく本データに近い線を描く
ラフでもさっきのような棒人間とかへのへのもへじではなく、ちゃんと顔のパーツや肉を付けた身体まで描いた線画を描きましょう。
そのまま線画の清書に移れるような下書きにするのです。
3、色を付ける
色は絵の印象を大きく左右します。これが違うだけで線が同じでも絵が違うものに見えるくらいなので。
そもそも色がなかったら完成形をイメージすることなんてできません。
完成形をイメージして色を付けておきましょう。
4、複数案を出す
よほどクライアントの依頼が定まってない限り、最低でも2案は出しましょう。余力があれは3〜4案あってもいいと思います。
複数案を出すことで、6でお話するフィードバックがもらいやすくなるからです。
また、依頼側としても複数出してくれた方がやる気を感じられますよね。
可能なら毎度3案くらいは出したいところですが、3案と決めてしまうとハードルが上がってしまい、スケジュールの関係などでできなかった時の印象が悪いので、事前のクライアントへの説明では「最低2案」ということにしておいた方が無難です。
5、解説をつける
提出する時は必ずそれぞれの案に簡単でいいので解説を入れましょう。何故その案を出したのか分かると、単純に絵面だけを見せるよりも説得力がアップするのでオススメです。
出した案の中でも自分から見たオススメを決めて伝えましょう。オススメも何もなく提案するよりはクライアントも判断しやすいです。
6、ラフ案についてフィードバックをもらって、理想案になるまでできれば何回でもラフを出す
ここが一番大切です!
何案か出した中でクライアントから見て「どの案のどの点が良かったのか」をフィードバックしてもらうのです。一発でこの案、と決めてもらわなくていいです。
フィードバックを元に、いいとこ取りの案を再提出すると良いでしょう。
クライアントが納得してくれるまで出し続けてもいいと思います。何せラフですからね。本データを何回も修正よりは断然ましでしょう。
ラフだからと適当にOKされないように
「この段階で気になる点を全て伝えて欲しいこと、本データ納品後の修正は簡単なもののみ」
と伝えておくと良いと思います。
ここでクライアントと完成イメージがしっかり共有できればほぼほぼ大丈夫だと思います!
余力があれば、本データはカラーバリエーションを持たせて2案ほど提出しても良いかもしれません(グラデーションマップは便利)。
私は今のところこのやり方で、本データ納品後の修正は殆どないです。
ラフの段階である程度クオリティの高いものを提出できると喜んで頂けますし、初回の取引であれば安心して任せることができるはずです。
ラフは何回出してもさほど労力はかからないと思いますが、本データを作成した後のデータ修正は本当に辛いですし、時間の無駄です。最悪他の仕事にしわ寄せがいくことも有り得ます。
精神的にもラフでダメ出しを受けても、「じゃあこうしよう」と前向きに捉えられますが、本データ提出後だと「えええ! 違ったの〜?!」ダメージが大きいです(勿論修正の度合いによりますが)。
なるべくストレスフリーで効率よく、お客様と良好な関係を築いてお仕事をしていきたいですよね。
これを読んだ駆け出しイラストレーターさんもストレスフリーでお仕事ができますように。
記事がお役に立ちましたら、サポート頂けるととても嬉しいです!資料の購入費として使わせて頂きます。