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小説同人誌の作り方〜全体スケジュール編〜

 こんにちは、フリーイラストレーターの頼和 愛(@ai_yoriwa)です。

  今回は小説本の同人誌について、これまで何度か発行してきた自身の経験から全体のスケジュールを説明したいと思います(出版社を通す自費出版ではなく、あくまで自分で執筆発行する小説同人誌についてです)。

 自分で小説を書いて、紙媒体にしてみたいという方のお役に立てましたら幸いです。

 細かい注意点も書いていたら長くなり過ぎたので、それぞれの工程の詳しい説明はまた改めて書かせてもらいます。

 ちなみに何故イラストレーターなのに小説かと言うと、この記事↓でも書いたように

 元々二次創作を始めた時は仕事でのライター経験から小説の方に手を出していたからです(ぶっちゃけ小説の方が数出してる……)。

 漫画本を出す場合も大きくは変わりませんが、漫画の方で注意する点はまた別の機会で取り上げます。

 スケジュールは一応順番を意識して書いていますが、同時に進めないとできないこともかなり多いので、順番はあってないようなもので目安程度だと思ってください。


内容・発行日を決める

 当たり前なんですが、これがないとスケジュールの立てようがないです。

 勿論いつ出してもいいんですが、できれば何かしらの同人誌即売会に合わせた方が無難でしょう。

 何故ならイベント近くになると、そのイベント合わせで発行される本をPixivなどで調べる方がいるからです。

 何でもない時に出すと、元からのフォロワーさん以外には通知されにくいです(フォロワーさんであってもイベントが関係ない時だと見逃すこともあると思います)。

 今まで知らなかった作家さんでもイベントに合わせることにより、他の作家さん目当ての方のついで買いが見込め、新規読者を獲得できる可能性が上がるのです(通販なら送料問題もあるので尚更です)。

 私的に発行予定日の3ヶ月前には内容を決めて執筆に取り掛かった方がいいと思います。

 勿論執筆速度によりますが、後述の表紙問題もあるので、初心者で多少余裕を持つなら最低でも3ヶ月は欲しいところです。


サイズ・仕様を決める

 二次創作の同人誌だと小説はA5か文庫サイズのどちらかが多いです。サイズによって同じ文字数でもページ数が変わるので、早めに決めましょう。

 印刷の仕方も大体の発行部数を考えて、オンデマンド印刷かオフセット印刷なのか決めましょう。

 オンデマンド印刷とは少部数に適した印刷方法で、1冊1冊刷るのでカラー表紙などは少しずつ色味が違うことがあります。100部未満であればオンデマンド印刷が安く仕上がるので適しています。

 一方オフセット印刷は大量の印刷に向いている印刷方法です。最初に版を作って、それを元に刷っていくものなので仕上がりは全て同じになります。再印刷をする場合は最初に版を作る性質上、一定期間は再印刷割引が効くこともあります。印刷部数が100部を超える場合は、オンデマンドよりこちらの方が1冊あたりが割安です。

 その他に表紙の紙を特殊なものに変えたり、挿絵を入れたいなどの希望があれば予め調べて決めておきましょう(それにより金額が大きく変わることがあるため)。

 

印刷会社を決める

 これにより入稿締切が確定します。発行日が決まったらすぐに決めましょう。

 同人誌など個人向けの印刷会社さんは入稿締切がぎりぎり(発行日の3、4日前とか)でもいけるところが多いのですが、ぎりぎりだと割増になるので、できれば早割を活用するようにしたいところです。

 発行日の1ヶ月前くらいが入稿締切のつもりでいると早割などでお財布にも優しいです。

 同人誌専門の印刷会社さんならイベントへの直接搬入もしてくださるので、そのあたりも可能かどうか確認しましょう。オススメの印刷会社さんの情報はこちらの記事に書きました。


イベントに申し込む

 イベントへの申し込みは人気のジャンルなら早めに申し込みましょう。

 申し込み時にはジャンル、印刷会社、搬入部数を申請する必要があるので、スケジュールでこの順番に持ってきていますが、ここができないと他が無意味になるので申し込みの締切日や応募状況(残り枠数)には注意しましょう。締切日前でも満枠になって申し込めなくなることはあります。

 申し込み時にはオプションで椅子の追加が必要か、ポスタースタンド(大きいポスター用の自立式)が必要かは決めておきましょう。一つのスペースを申し込むと大抵椅子は一つ付いてきますが、売り子さんを頼む場合はもう一つ必要になると思います。

 当日一人で頒布すると席を離れるタイミングや荷物管理が難しいので、できれば売り子さんがいた方が良いです。お金の管理にも絡むので信頼できる友達に頼みましょう。早めに売り子さんのスケジュールも確保したいところです。


表紙絵を依頼する

 小説書きさんが悩まれるだろう問題No.1ではないでしょうか。私も小説しか書いていない時はめちゃくちゃ悩みました。この問題が辛くて自分で絵を描き始めたところもあります。

 自分で表紙を描く人は勿論いいんですが、何らかの絵を他の人に描いてほしい場合は、これがまず重要になってくると思います。

 仲の良い絵描きさんがいれば頼んでもいいと思いますし、いなければクラウドソーシングなどで頼んでもいいと思います。

 ↓私も表紙の依頼を受け付けていますので、悩んでいる方がいらしたらお気軽にどうぞ! 校正のお手伝いもできますし、初心者の方でも分からないことがあれば全力でサポートさせて頂きます。ご安心ください。

 頼むタイミングとしては、遅くとも入稿締切の1ヶ月前には頼みましょう(頼んだすぐ後から描ける状態)。

 それよりも時間がないと、相手の都合もありますから失礼な印象があると思います(プロのイラストレーターに頼むなら特急料金を支払えば問題はないと思いますが、友人関係なら余程の仲でない限り引かれるかもしれません)。

 表紙の詳しい頼み方についてはこちら↓の記事で取り上げています。


執筆

 基本的にWordを使って書いていきます(Word以外のやり方はやったことがないので分かりません)。

 とにかく最終的な大体の文字数が確定できるように、ざっと最後まで書いてしまうこと。後で修正が入るにしても、文字なら余白や級数調整で帳尻を合わせが可能です。

 表紙をお願いする方に本の背幅を伝えなければならないので、早めに大体の文字数を確定させることが大事です。

 勿論印刷の見積もりのためにもページ数は必要になりますので、そういった意味でも大体何ページになるのかは早めに知るべきです。

 細かいWordでの設定方法などはまた次の機会にお話しします。


収支計算(発行部数と頒布価格を決める)

 収支計算については正直スケジュールのこの部分というわけでなく、最初から最後までという感じです。早めに収支計算をしておくに越したことはありません(詳しい収支計算についてはまた別でお話しします)。

 文字数が確定したらページ数が決まるので、発行部数を決めると印刷価格が分かると思います。

 これにより1部あたりの頒布価格が出せます。ちなみに1部あたりの頒布価格を印刷費用だけで計算するとお財布的に辛いことがあるので気を付けましょう。

 しかしここで問題です。

「発行部数ってどうやって決めるの?」

 と思いませんか?

 一番いいのは自分が出せる金額から、発行部数を割り出す方法です。

 ただ、出せるからと言ってたくさん刷って、全部捌ければいいですが、めちゃくちゃ余ると結構メンタルがやられたりします……。

 こういった時の対策としてオススメするのが次の項目です。


サンプルを公開する

 PixivやTwitterなどでサンプル公開時にアンケートを取ることで、大体の部数を把握する方法をオススメします。

 ただ、この時も頒布価格は書かないと読者の判断に影響が出る可能性があるので、仮で金額を決めておく必要はあります。イベントでの頒布と通販でも価格は変わるので注意が必要です(委託がある場合は手数料を乗せて高くなるのが一般的)。

 あくまで金額は仮にしておいて、少し高めに設定しておくと良いでしょう。後から高くなると買われない可能性が高まるので。

 ちなみにアンケートを取っても、その部数が必ずしも捌けるとは限りません!(つ、辛い……)

 勿論アンケート部数以上に捌けてしまうこともあるんですが、余ることもあり(私はひどい時はアンケートの結果より20部以上余ったことがあります。あの20人はどこへ消えた……??)、それはそのジャンルの流行り具合なども関係してくると思います。

 なお、部数が決まっていようがいまいが、大切な宣伝なのでサンプルは必ずどこかに公開しましょう。

 どんなに遅くとも発行日の1週間前にはサンプルを公開したいところです。


通販の委託先に申請する

 何らかの同人誌即売会で本を出す場合でも、その会場に来れる方はほんの一握りです。通販を希望する方は必ずいるでしょう(私の場合、会場と通販で2:8くらいで通販が圧倒的に多いです)。

 その場合、自家通販(自宅から送る)なのか、業者に委託するのか決めましょう。

 私の一番のオススメはとらのあなさんです。

 オタクには有名な大手さんなので利用者も多く、仕事も早いです。Twitterで取り上げてくれることもあるので、宣伝にもなります。

 ネックなのは手数料が高いこと。安心感と引き換えに手数料を払う感じですね。

 発行部数が少ないなら、PixivのBOOTHで自家通販がオススメです。手数料もかなり抑えられます。

https://booth.pm/guide

 私個人としては20部を超えると自分でやるのは結構大変なので(梱包・発送作業が結構手間)、基本的には委託しています。延々と梱包・発送作業するくらいなら創作活動に時間を回したいじゃないですか。時間は有限ですよ。

 委託先の詳しい比較や注意点はまた別で取り上げます。


校正

 言わずもがなですが、紙媒体なら校正はかなり大事です。文字数にもよりますが、1週間は欲しいところ。

 ちなみに私は33万字300ページ超えの本を作ってしまった時には校正に1ヶ月くらいかかりました……(ちょっと後悔した)。

 友達で頼めそうな方がいたら頼むのもいいかもしれません。

 私も仕事で10年以上校正をしているので、もしお願いしたい相手がいなくて困っていたらお引き受けいたします。お気軽にコメントでご相談ください。


入稿

 表紙は大体どこもpsd形式での入稿、WordはPDFに変換して入稿になります。

 PDF変換する時も細かな設定が必要になるので、こちらの緑陽社さんのページを見てみてください。とても分かりやすいです。

 この時までに納品先は確定させておきましょう。通常はイベント会場、通販委託先、自宅になると思います。

 また入稿締切は時間が指定されていることが殆どなので、厳守するよう気を付けてください。

 なんだかんだでファイルの出力やタイトル変更、データをサイトにアップロードするのに時間がかかってしまうこともあるので、締切時間の1時間前には入稿作業に入りましょう。


イベント当日の準備

 入稿が済んだら、イベント当日の準備が必要です。

 遠方に行く場合は事前に荷物を送ることもあり、そういう場合はイベント主催者から「●月●日〜●日の間に指定の宅配会社で送ってください」と指定されるため、入稿よりも前に準備することもあります。注意しましょう。

 当日に持っておいた方がいい物や注意点はまた別で取り上げます。


イベントを楽しもう

 同人活動の何が楽しいって、やはりイベント当日の空気かなと思います。

 直前まで締切や準備に追われてかなり疲弊しますが、本を作った達成感とイベント当日の楽しさで全てチャラになります笑。

 自分の完成した本を見るのも感動しますし、自分の本お迎えしてくれる方と直接会えることは何物にも代えがたいものです。また、好きな作家さんにお手紙や差し入れを渡せたり、友達とアフターを楽しんだりととても楽しい1日になります。コロナが流行ってからイベントに出られていないので、私もまた早くイベントに出たいなと思っています(最近はWEBイベントしか参加できていません)。


自家通販の手続き

 とらのあなさんなどの委託先にお願いしていれば必要ありませんが、自家通販を選択した場合はイベントの後に通販の頒布開始と発送作業が必要になると思います。ここまでやればようやく一通りの作業が終わりとなります。

 BOOTHでの自家通販の流れや注意点はまた今度。


 以上が小説同人誌の大まかなスケジュールになります。いかがでしたでしょうか(抜けがあったらすみません)。

 各工程の詳しい注意点などはかなり割愛して、ほぼ別の機会に回してしまいましたが、ざっくりスケジュールだけでも結構やることがありますよね(詳しく書いたらこの2倍以上にはなるはず……)。

 でも同人誌の制作は本当に楽しいです! 私は仕事で今まで何十冊も媒体発行に携わってきましたが、自分で出す本というのは格別の喜びと達成感があります。同人誌を出したことのない方も、是非チャレンジしてみてください。

 何か分からないことがありましたら遠慮なくコメントやTwitterなどでも質問頂ければと思います。

 最後まで読んでくださりありがとうございました!




 


 


 

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