報われない父親

母はなぜか、父には厳しい。

今は、父に介護をしてもらっている身ではあるが、私には「お父さんは役にたたない」「(ポータブルトイレの排泄物捨ても)自分の管轄じゃないと思ってるんやわ」などと言う。

いやいや、「(ポータブルトイレの排泄物捨ては)めちゃくちゃお父さんの守備範囲だよ。何ならお父さんがスタメンで、私は控えですよ」と、言おうかと思ったが、母親を否定することになってもややこしいので、黙っていた。

仕事上、自宅療養中の患者さんのお宅に伺うことも多く、家族関係を聞く機会も多い。何となくの印象ではあるが、夫の介護は受け入れないという女性患者さんは、多いような印象がある。また、認知症を患った女性は特に、夫に対して攻撃的になることが多く、これまでの形勢が逆転し、なんだかお父さんがかわいそうな状況になっていることが多い。

ああ、これまで頑張ってきた(つもりな)のにね。報われないお父さん。
ただ、父の介護姿勢を見ていると、申し訳ないが何となくわかる気はする。

介護をしようと思うと、相手が何を欲しているかを察しながら、必要なことを必要なときに提供することが良い関係を築く基本だと感じる。介護者本位ではうまくいかないのだ。そこがいまひとつ理解できないのだ。

細かいことまで言うと、かける声のトーンや大きさでも、関係性は変わる。母親は「お父さんは大きな声で急にしゃべりかけるから嫌だ」という。

確かに、父親のかける声には、相手に対するいたわりはあまり感じられない(申し訳ないけど)。逆に取り入るようなしゃべり方をするときには、何かたくらんでいるなと言う雰囲気が漂ってくる。そして伝わる(残何ながら伝わっちゃう)。

準備する食事の量や、皿への盛り方も、食欲のない相手に「あ、食べたいな♪」と思えるように工夫することができたらいいが、お父さんには高度すぎて無理なのだ。そのため、せっかく母のためにやったことも、逆に取られて報われない結果となる。

これらのもろもろを観察していて、私の行き着きついた結論としては、介護は女性(および、女性的観点を持った人)が向いているということ。女性でもその観点がない人もいるから、一概には言えないが、男性(性)はどうしても「自分」が先に立って物事を考えてしまう。(だから介護は女性がせよと言うわけではないですがね!)

ポータブルトイレも、本人が気持ちよく過ごせるように取り替えるというよりは、汚いものを処分せねばという観点で動いている(ように見える)ので、してもらっている方は、その感じを受け取ってちょっと申し訳ない気持ちになってしまうのだ。

お父さんよ、お母さんといい関係を保つためにも気づいてほしい。でも齢80歳のお父さんが、そう簡単には変われるはずもない。娘としては、無理もしてほしくない。なかなかにもどかしいところである。

ただ、そんな状況のなか、父の(自分なりの)努力が報われる時は来るのだろうか、ということには興味がある。いつかくる最期の時に、母は父に「ありがとう」と言ってくれるのか。

でもまぁ言ってくれなかったとしても、あなたはめげずに生きて行くのだろうけどね。男性(性)の良さは、ある程度の鈍感さで打たれ強いことだと思います^^


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