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「パンダ探偵と珍道中」

東京の下町にある小さな探偵事務所。そこで働くのは、パンダのコスプレをした探偵・田中パン太郎。彼の口癖は「竹か死か」。

ある日、事務所にやってきたのは、緑色の髪をした老婦人。

「うちの孫がね、宇宙人に誘拐されたのよ」

パン太郎は竹を噛みながら真顔で答えた。「はい、よくある話です」

助手の佐藤は慌てて訂正した。「いいえ、全然よくない話です!」

しかし老婦人は続けた。「それがね、宇宙人がUFOじゃなくて自転車で来たのよ」

パン太郎は竹を噛み砕きながら言った。「なるほど。エコな宇宙人ですね」

調査を始めたパン太郎と佐藤。まず向かったのは、老婦人の孫が最後に目撃された公園。そこで彼らが見つけたのは、奇妙な自転車の車輪の跡。なぜか四角い。

「四角い車輪...」パン太郎は腕を組んだ。「きっと、宇宙では円周率が3じゃなくて4なんですよ」

佐藤は頭を抱えた。「いや、そもそも円周率関係ないでしょ!」

そんな二人の前に現れたのは、全身銀色のボディスーツを着た怪しい男。

「我々は地球の自転車を研究しに来たのだ」

パン太郎は竹を指して叫んだ。「やはり!エコな宇宙人!」

佐藤は絶叫した。「いやいや!普通に怪しいでしょ!」

しかし宇宙人は意外なことを言った。「実は...自転車の乗り方がわからなくてね」

結局、パン太郎と佐藤は宇宙人に自転車の乗り方を教えることになった。公園で練習する銀色の宇宙人。周りの人々は奇異の目で見ているが、新しい自転車教室だと思っているようだ。

練習の末、やっと自転車に乗れるようになった宇宙人。しかし、今度は止まり方がわからない。暴走した宇宙人を追いかけるパンダ姿のパン太郎と汗だくの佐藤。町中を疾走する奇妙な追跡劇が始まった。

「あそこだ!」パン太郎が叫ぶ。「ラーメン屋の前で静止している!」

しかし近づいてみると、それは別の銀色の人間だった。よく見ると、ラーメン屋の看板だ。

「まったく」佐藤はため息をつく。「もう何が何だかわからない」

そんな時、空から奇妙な音が。見上げると、宇宙人が自転車ごと木の上に。

「降りられないんだ〜!」宇宙人が叫ぶ。

結局、消防車を呼んで宇宙人を救出することに。はしご車から降りてきた宇宙人、その手には...老婦人の孫?

「実は」宇宙人は恥ずかしそうに言った。「彼に自転車の乗り方を教えてもらおうとしたんだ。でも、怖がられて逃げられちゃって...」

孫は付け加えた。「僕、自転車乗れないんです...」

この騒動、実は孫が自転車に乗れないのを隠すためだったと判明。老婦人は大笑い。

「まあ!そんなことだったの?心配して損したわ!」

事件は解決。しかし、パン太郎にはまだ疑問が。

「で、結局なんで四角い車輪の跡があったんですか?」

宇宙人は照れくさそうに答えた。「あれは...自転車の箱を引きずっていただけなんだ」

全てが明らかになり、パン太郎は満足げに竹を噛んだ。「やはり真実は一つ。『竹か死か』ですな」

佐藤は天を仰いだ。「もう、何が何だか...」

そして翌日。事務所に現れたのは、今度は赤いアフロヘアの男性。

「実は、うちの犬が...」

パン太郎は身を乗り出した。「宇宙人に誘拐されましたか?」

男性は首を傾げた。「いえ、ゴリラに恋をしたみたいで...」

パン太郎と佐藤は顔を見合わせた。また新たな珍道中の始まりである。

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