第39話「大先生のありがた〜いお話」

(聞いといてなんだけど…黒は…違うよな?)

ちょっとだけ、ビクビクしながら。

ノヴァン隊長の顔色を伺う。

すると、隊長は…なんもないような顔で

「ヨウのカラーズ?そりゃ…

…”深紅”に、決まってんだろ。」

あっけらかんと、答えた。

(だよな…!良かった。)

…だけど、ほっとしたのも束の間。

「あー、でもな、”深紅が禁色”だから、”特色隊”ってわけじゃ、ないぞ。」

「…え?」

てっきり、そうだと思ったから。

「じゃあ…なんで?」

俺は、わけが分からずに聞き返した。

「アオ兄が…身体に、いるからですか?」

立て続けに、質問する。

そんな、焦った様子の俺とは対称的に。

ノヴァン隊長は、いたって落ち着いた声で返答する。

「アオバが入ってるのも、関係ないな。

”特色”ってのは…お前自身の問題だ。」

そう言って…

「まあ、口で説明するよりも…”百聞は一見にしかず”だな。

ヨウ、今ここで…ちょっと”勅令(ちょくれい)”、してみろよ。」

ノヴァン隊長は、ニヤリと笑って

「お前…、非・発現者だったんだろ?

自分の意志で発現するの、人生初じゃん!

今日は記念日だなぁ〜。やったれやったれー!」

嬉しそうに手を叩いて、
俺の発現を見学するかのように、芝生に腰を降ろした。

「んな!急に…言われたって…!」

1人立ったままの俺は…

…正直、どうしたらいいのか。さっぱり分からなかった。

だって、今まで…

毎朝の”特訓”と称して、
どれだけ身体に日光を浴びても…

…体内に、あったはずのカラーズは。ピクリとも、反応しなかったから。

そして今も…こんなに、良い天気だけど…

(何も…”チカラ”が、湧いて…こない…!)

「こっ、コツとか!発現する、きっかけ…みたいなの、無いですか?!

何でもいいので…

…教えてください!ノヴァン”大先生”!!!」

俺は、助けを求めるように。

芝生に座るノヴァン隊長の前で、膝をついて、大声で頼んだ。

すると…

「…っ!だ、大先生…!」

ノヴァン隊長は、ガバっと立ち上がり

「んんん〜、いいっ!!!

”ノヴァン大先生”…いいっ!!!

ヨウ!お前、今日から俺のこと、そうやって呼べよ!

”大先生”…なんてカッコいい響き…!!」

ノヴァン隊長…いや、大先生…?は、

俺の気まぐれで呼んだ呼び名に

子どものように喜んで。

そのテンションについていけず、
置いてけぼりをくらっている俺の肩に

上機嫌のまま、”ポン”、っと手を乗せ…

「んじゃ、仕方ないから…初めては、俺が手伝ってやるよ。

なんたって、”大先生”、だからな!」

もう片方の手で、自分の胸をドンッと叩いた。

このノヴァン…大先生の動きと同時に。

肩に置かれた彼の手から…俺の身体に。

はっきりと…”何か”が、入ってくる感覚ーー。

そして…

「あっ!!」

(俺の…右腕が…!)

あっという間に、光を帯び始め。

光の中から…出て、きたのは…

「…な、んだ…。これ…。」

ひどく…薄い。

ギリギリ…見えるか、見えないか、の…

「…鳥…か?」

それは、手のひらサイズの…雀のような…。

「…アオ兄…?」

俺は、半信半疑で呼びかけてみる。

でも、正直…色が、薄すぎて。

(さっきの…アオ兄の意志が宿った”オーバー”とは…違う、鳥…?)

俺はすぐ近くの薄い深紅?のモヤが何なのか。全く分からないでいた。

そんな俺の…

一応、自分の意識がある、”人生初の発現”を見て…

「ぶはは!やっぱりそうか!!」

ノヴァン大先生は、心底楽しそうに、笑った。

(…。)

自分の記念すべき”初”の発現に、全く納得いかず。

俺はつい、ムスっとした顔で、大先生を見つめる。

そんな俺の視線に気付いたのか…

「お、おっほん…。」

大先生は、軽く咳払いをして。丁寧に、説明を始めた。

「ま、これがヨウの、発現…まさに”特色”だよ。

間違いなく、チカラは発現しているはずなのに…オーバーやモヤが、極端に”薄い”んだ。」

改めて、自分の右腕近くの薄いモヤを見る。

(消えかかっている…?いや、こういう色なのか…?なんなんだよ、一体!)

「さすがの俺でも、こんな”薄さ”…、今まで、見たことも聞いたこともない。

原因は…

俺が、倒れてる間にヨウの体内を調べた時に気付いたんだが、
お前のカラーズ…つまり深紅の色素は、極端に少ない。

よく【黒の再来】で、深紅の光を出せたなって、不思議に思うほどに、な。」

大先生は、真剣な様子でそのまま説明を続ける。

「この”少ないカラーズ”で、何故かヨウは、”発現”はできる…だが、極端に薄い。

お前の発現には…どんな”チカラ”が宿っているのか。

そのチカラは…”強い”のか、はたまた”弱い”のか。

チカラと”薄さ”には、どんな意味があるのか。

…全くもって、全てが謎の…ヨウは、”特別な隊員””ってわけだな。」

大先生の口調は、真面目なものから、明るい調子に代わり、

「ま!何もかも”未知数”ってことはさ!今から鍛えがいがあるよな〜!

事例がないからこそ!だよ。

めちゃくちゃすごい”チカラ”が発現するかも…だぞ?

アオバの『分け与えよ』も、相当すごい”チカラ”だったらしいし!」

そう言う大先生を見ながら、

アオ兄の…癒やしの”チカラ”や、オーバーのリュウマを思い出す。

(俺も…アオ兄みたいな、すごい発現者に…!)

「あ、ちなみに、アオバの意識がこもったカラーズは左腕、
ヨウの数少ない深紅のカラーズは、右腕に集まって発現するからな。

ま、鍛えてない今のままじゃ…その両方とも、自力で発現すんのは無理だ。

あと、アオバのオーバーに関しては、言っておくことがあるが…

…まあ、まずは自力で、発現できるようになってから、だな。

よっし!
これからビシバシ、”大先生”が、鍛えてやろうっ!」

大先生は、嬉しそうにそう言い。

また、組手の構えで、俺の目の前にドシンと立ちはだかった。

(絶対…強く、なるんだ!)

改めて、そう思い…

「ノヴァン”大先生”!よろしく…お願いしますっ!」

できるだけ大きな声を出して。

ノヴァン大先生の隊服を掴みに、果敢に突進していった。

「あ〜、腹へった!昼飯、食べに戻るぞ!」

大先生の一言で、やっと…修行が、一段落ついた。

(き…きつい。きつすぎる…!!)

俺は一体…何回、大先生に投げ飛ばされただろう。

数える元気も…後半は、無くなってしまうほど…だった。

「あ、ありがとうっ…ございましたっ…。」

息も絶え絶えに、お礼を言って。

大先生の後をついて、また、あの建物…

…ブラックアビスの本部に、戻る。

ぱっと見、6階建てくらいの、その建物は、
コンクリート造りで…結構、質素な感じの外見をしている。

でも、中は…木造の部分もあったりして…

そんな感じで、キョロキョロと建物を物色しながら。
大先生の後をついて、いい匂いのする方向へ、歩いていく。

「ほら、あそこが一応…食堂っぽい、それだ。」

そう言われて、すこし開けたその部屋に、入った時…

「あっ!!!」

「「「ヨウ!!!」」」

そこには…

懐かしい、3人組が。

俺と同じ…びっくりした顔で。俺を、出迎えてくれた。

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