第44話「最強vs最強」

ーーードォォォォン!!

凄まじい衝撃音と爆風が…

2人の最強を、包み込み。周囲にも、伝わっていく。

すぐ横にあったブラックアビスの本部は、その衝撃を受けて…

窓ガラスは、全て吹き飛び。
頑丈そうに見えたコンクリートの外壁も…
今にも、崩れそうなほど、ガタガタと揺れ動いていた。

「くっ。

とにかくっ!僕たちは、ここを離れなければ…っ!」

サクヤ隊長は、そう言って、俺の右腕を掴み。

小柄な身体で…俺を、思いっきり引っ張りながら、

凄まじいスピードで走り始めた。

「でもっ!ノヴァン大先生が…!」

俺は、自分では走ったことのないような猛スピードで、

引きずられるように進みながらも。

上半身だけで、大先生が残った、後ろを振り返った。

すでに、10メートルは離れてしまった、

さっきまで…自分たちがいた場所では…

…ちょうど、2つの巨大な光の塊が。

膨らみ合って…ぶつかる、寸前だった。

2つの色…
”真っ白な光”と、…不思議な、”複雑な色の光”。

複雑な色は…そう、例えるなら、シャボン玉の…膜のような。

もしくは、水面に浮いた…油のような。

見る角度で違う…
複雑に、複数の色が…混じり合っているような。そんな色の、光。

そんな…2つの光が、

膨れ上がって、ぶつかって…弾け飛ぶ。

ーーードォォォォン!!

2回目の、爆音と爆風。

その、あまりの衝撃に…

「ちっ!!」

「うわっ!!」

発生源である最強2人からは…
たぶん、30メートルは離れていたはずなのに。

猛スピードで走っていた、サクヤ隊長と俺は、

その勢いのまま…
2人して、前に吹き飛ばされた。

サクヤ隊長は、上手く受け身を取って転がっていったが…

俺は、すぐ足元の地面に、思いっきり激突し。

全身を打ち付けることで…吹き飛ぶ勢いが、どうにか止まった。

「いってぇ〜!!!」

痛みにもだえ、地面をのたうち回っていた、その時…

ーーーガラガラガラ!!!!

凄まじい音と共に

後方に見えていた…

…ブラックアビスの、本部が。跡形もなく…倒壊した。

「なっ…!」

それに…

「どうなってんだ、あれ…!」

元・ブラックアビス本部…現・瓦礫の山。その、周囲…

大先生と組手の修行をしていた、あの場所…

あんなに青々と生えていた芝生が、地面ごと、えぐれるように消え。

今は…土や岩がむき出しの…荒れた土地に、なっていた。

まさか…

(2人の最強が…ただ、発現した、だけで…!?)

一瞬で、地形が…根本から、変わってしまった。

そんな、荒れた土地の、中心に、目を凝らす。

そこには…

「よーく…狙うんですよ。」

ヒト型の…”真っ白の”人魚姫のような、ノエルが。
発現者であるブレイズの隣に…優雅に、寄り添うように、立っていて。

その、上空には…

【黒の再来】の時のように、真っ白で鋭利な氷柱が。

ただし、あの時より…

本数も、大きさも。比べ物にならない位、増えている。

(これが…ブレイズの本気、なのか…?)

大男のような重量の氷柱が…ぱっと見ただけで、10本以上も

鋭利な部分を大先生に向けて、空中に静止していた。

「あんなの…避けれっこない…!」

俺は、届かないと…分かってはいるけど。

居ても立っても居られなくて、

ブレイズから、少し離れた所に立つ、大先生に向かって大声で叫んだ。

「逃げて…!!!」

空を覆い隠すような…圧巻の、氷柱。

さっきまで晴れていたのに…天気まで、変えてしまったようだった。

その、計り知れないチカラのすべてに狙われている、大先生。

そして…

そんな大先生の、隣には…

「ペアレ…機嫌、悪いのか?

今はほんと…真面目にキツイ状況だからさ、頼むぞ?」

そう、話しかけられている…シャボン玉のような色合いの”獣”が、一匹。

あれは…

「ライオン…だ!」

遠くても、ハッキリと分かる。

だって、明らかに…

「…デカすぎ、だよな?」

ペアレ、と呼ばれた獣の…大きさは、
実際のライオンでは、考えられないほどで。

その背中にまたがれば…
たぶん、建物の2階と、ほぼ同じ高さにいるような景色が…見えると思う。

建物の1階…
つまり、1部屋に…入れないくらい大きい、ライオンだ。

四足歩行の状態であれなら…

(もし…立ち上がったら…?)

頭の中で…

二足で立ち、覆いかぶさってくる巨大なライオンを…想像して。

ブルッと、身震いしてしまった。

(あんな大きさのオーバー、見たことない…!)

規格外の大きさ…それは、つまり…

そんな大きさにまで、オーバーを発現できる、
大先生のカラーズのチカラが…凄まじい、ってことで…。

「百獣の王に…あの、大きさ!

大先生は…ほんとに、ブラックアビス”最強”なんだ!」

俺は、地面に倒れ込んだまま。

遠くにいても…不思議と、頼もしい。そんな隊長を見て、

誰に言うわけでもないけど…そう、自慢するように叫んだ。

「ノヴァン隊長…珍しく、正面突破、ですか。

小細工なしで、ぶつかるつもりです。

ブレイズのチカラを…真っ向から受けて

彼のチカラを…測るつもり、でしょうね。」

サクヤ隊長が、

大先生の意図を説明しながら、そっと近付いてきた。

吹き飛ばされたダメージは…
俺と違って、全く無いらしい。さすが、”隊長”だ。

そして

「最強たちが…動きますよ。

急いで、”転送箇所”へ。

次はここも…衝撃波なんかでは、すみません。」

そう言って、サクヤ隊長は
地面からやっとこさ立ち上がった俺を、素早く掴んで。

また、さっきのように、猛スピードで走り始めた。

俺は…

どんどんと小さくなっていく最強達に向けて…

「大先生の方が、絶対に、強い!!!!」

聞こえなくてもいいから…そう、叫ばずには、いられなかった。

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