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1人では大したことはできない。関わる事で人の力を120%、200%にできた方が面白い 株式会社サクラ衣料 用正 元嗣さん

≪用正元嗣さんのプロフィール≫
出身地:大阪府
経歴:大阪で代々続く卸企業サクラ衣料の長男として生まれる。神戸大学で経営学を学び、カタログ通販のニッセンに入社。データベースマーケティング、新規事業開発などを経てWEB分析チームの運営を担当。
現在:株式会社サクラ衣料 専務取締役 HIRAMEKI事業部長
座右の銘:何事も楽しく

Q:現在のお仕事をされるようになったきっかけをお教えいただけますか。

用正さん(以下、用正)大学卒業後、23歳でニッセンに入社し、2013年の33歳でHIRAMEKI.に関わるようになりました。外の企業で約10年経験を積み、サクラ衣料に帰ってきて、新たに事業を起こして・・・ということだったらキレイなお話なのですが、今のHIRAMEKI.というブランド事業を立ち上げたのは私ではありません。

もともとサクラ衣料は卸問屋でしたが、SPA業態の台頭による「中抜き」や、問屋から商品を仕入れる小売店の廃業が進み、事業自体が厳しい状況になる中、父の代では既存事業に囚われず様々なことにチャレンジしてきました。小売事業、ライセンスブランドの開発、宝飾品の販売、本屋、不動産など。そのような中、当時いたメンバーが新しいものづくりを模索していく中でHIRAMEKI.というブランドが生まれました。

当時、私はそれを社外から一消費者の立場でみていましたが、事業の立ち上げから10年してサクラ衣料に戻ってみると、HIRAMEKI.事業部はサクラ衣料の一事業であるものの別会社のような状態で、会社の経営と事業部メンバーの間にはほとんどコミュニケーションがありませんでした。

そのような中で、私がサクラ衣料に入社して1ヵ月が経った頃、HIRAMEKI.を立ち上げた事業部の責任者が前触れなく退職。突然の出来事に戸惑いながらも、事業を継続するために状況の整理と、残された事業部メンバーとどう関わって行くべきなのかを模索しながらスタートしました。

「HIRAMEKI.で働いている人たちっていいな」とか「HIRAMEKI.に来るといつも嬉しい気持ちになるな」

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Q:そこから始まり、これからどんな世界を作りたいと思われていますか?

用正  手前味噌かもしれませんが、HIRAMEKI.はスタッフ全員が本当に一生懸命、良いものを作っています。商品をはじめ、企画、サービス、接客応対の品質まで。社内だけでなく、社外の取引先やお客様のご支援など、色んな人の力が融合し、出来上がっています。そうして出来たHIRAMEKI.を、1人でも多くの方に伝えていきたいですし、それをもっと良いものにしながら、継続して行くことが大事だと思っています。「HIRAMEKI.で働いている人たちっていいな」とか「HIRAMEKI.に来るといつも嬉しい気持ちになるな」というふうに感じて欲しいですね。会社や事業を、ただ大きくしていくことだけがベストではないと思っています。

Q:そのことに気付かれたきっかけはあるんですか?

用正  周りに感謝するとか、そういう気持ちは結構ありますかね。
自分がクリエイティブな人間だとも思えないし、特別何かに突出した技能を持っているわけでもない。ごくごく平凡な人間だと思っています。1人では大した事はできません。振り返ると、いつも誰かに助けられて生きてきたように思います。人に恵まれているんでしょうね。

そんな私でも、たぶん誰かと比べて得意だったり上手にできるような何かがあって、私にはできないようなことをできる誰かがいて、同じ目標に向かって行けるのであれば、より大きなことができるのではないかと考えています。

サクラ衣料という会社を父が祖父から継ぎ、そして私が入って今後のことを考えて行く立場になりつつある中で、どんな会社になれば自分が楽しいだろうかと考えた時、自分が関わることで人の力を120%、200%引き出せるような環境を作れたら面白いな、と。

話が前後しますが、父の仕事場に小さい頃、よく出入りしていました。
仕入れてきた服がたくさん並んでいる中で遊び、父の働く姿を近いところで見てきました。男4人兄弟の長男ということもあり、おこがましくも、どこかでこの会社を自分が継いでいくものだと考えていた部分がありました。大学を受験する時も、なんとなく経営のことを学べば将来役に立つのではないかという理由で経営学部を選びました。と言いつつ、学生時代は部活ばかりやっていたのですが 笑

その学生時代に打ち込んでいた部活で漠然と感じていたことが、会社経営を意識する中で、人のマネジメントって実はすごく重要なのではないかということでした。軽音楽部に所属していたのですが、そもそも音楽をやりたくて集まっている学生たちが、音楽以外の活動(演奏会の企画、準備、宣伝、運営などの裏方業務や、大学との摂政事、運営予算の管理など)を率先してやりたがるわけがありません。しかし、それらを上手く回さないと練習場所や発表の場、必要な器材の購入もままならない。各人がやりたい音楽をやるために、普段は表に出ないそれぞれの力を発揮して、一つの目標に向かうにはマネジメントの力が重要だなと感じたわけです。

しかし、いざ就職して社会に出ると、他人のパフォーマンスを気にする余裕などなく、如何に自分自身が成長し、キャリアアップするかに考えがシフトしていました。初めてチームを持たせていただいた時にも、そのままのスタンスは変わることなく、マネジメントでチーム力を発揮するよりも自分が成果を出すことを優先していたように思います。自分より年齢も経験も上の方々が沢山いる中で、自身のキャリアアップのためには必要な部分もあったかもしれませんが、当時のチームメンバーからすれば決して良い環境とは言えなかったかもしれませんね。

Q:なるほど。そこからHIRAMEKI.に移られたきっかけはありますか?

用正  前職からサクラ衣料に移ったきっかけは、父からそろそろ戻ってこないかと提案されたことです。それまで特に強要されることもなかったので、自由に道を選択してきましたが、私自身いつかは・・・と思っていたことでもあるので、自然な流れでしたね。

前職では多くの貴重な経験をさせてもらいました。当然、そのまま仕事を続ける選択や、新たな活躍の場を探すという選択肢もありましたが、迷うことなくサクラ衣料に入る選択を取れたのは、その経験があったからだと思います。それがあったから自信を持って覚悟を決めることができました。

特に会社や事業の在り方においては、過去の反省も含めて経験が生きていると思います。例えば、会社の成長だけを考えてしまうと、どうしても数字や効率を優先したくなってしまいますし、動きや結果にもスピードを求めがちです。一方で、様々な理由・目的を持って仕事をする人が集まっているわけですから、それぞれが求めているものを理解せずに、経営側の目線を押し付けても力は引き出せないし、会社も成長しない。結果を求めるプレッシャーを受けながら走り続けるなんてしんどいこと、何年も続かないですよね。

成長すること、大きな利益を上げることも会社にとっては大切ですが、継続することも大切なことだと考えています。仕事は生活の糧を得るための手段でもあるので、簡単には辞められません。しかし、長く続けていると辛い時期もありますし、辞めたくなることも必ずあると思います。だから楽しく。楽しければ辛いことも乗り越えられるし、大きく力を発揮できる。そのために、会社で働く一人一人がどうすれば仕事を楽しめるのかを考えます。

働く時間を1日8時間で週5日と考えると、睡眠時間を除けば1日の約半分は仕事をして過ごしています。この時間がつまらないものになってしまうと、人生の半分を損してしまう。そんな不幸なことはないので、スタッフのためにも、私自身のためにも楽しく続けられる環境を作り続けたいですね。

「ものづくりとはヒラメキを形にして行くこと」

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Q:これからのHIRAMEKI.でどんな未来計画を立てていますか?

用正  HIRAMEKI.の代表的な作品に“アートレザー”というものがあります。独自の技術で革にデザインを施し、革の自然な風合いと経年変化をアートなデザインと共に楽しめます。これまではこういった技術や、ものづくりのノウハウを自社企画のみに使ってきましたが、より多くの個人や企業に活用してもらう機会(OEM生産等)を作ってもいいんじゃないかと思っています。

HIRAMEKI.のコンセプトは、「ものづくりとはヒラメキを形にして行くこと」。自社だけでなく、誰かのヒラメキを形にするのを応援していくような取り組みにも活動の幅を広げることができたら面白いですね。

Q:HIRAMEKI.の事業以外でも新規ビジョンはお持ちですか?

用正  まだ具体的な構想があるわけではないのですが、常に既存事業に囚われない、柔軟な考え方を持つように心がけています。

サクラ衣料は創業から数えて65年を超えましたが、最初から同じ事業だけを続けていたなら、今頃は存在していなかったかもしれません。大事にすべきところは守りつつ、時代や環境に合わせて変化・対応してきた結果、今に続いているのだと思います。完全な新規である必要はありませんが、過去や既存に囚われずに、自由な発想で新しいこともチャレンジしていけるような会社でありたいです。

Q:最後に座右の銘はありますか?

用正  何事も「楽しむ」ことを大事にしたいと思っています。
判断に迷ったときには、自分が楽しいか、楽しくないか。皆が楽しめるか、楽しめないか。自問自答します。そこがズレたら全部ズレますからね。

以前、子供に言われたことが強く心に残っています。学校に行く娘に「今日も頑張って」と声を掛けたところ、「頑張るんじゃなくて、楽しむんだよ!」と返ってきました。何気ないやりとりでしたが、ハッとさせられましたね。仕事も頑張るのではなく、楽しむことが大事。そして、楽しい仕事と、それを楽しめる環境を作ることが自分の役割なんだろうと思います。時には事務所で険しい顔をしている時もありますが、そういう時は反省して、娘の言葉を思い出すようにしています 笑

楽しい気持ちは、必ずしも自分のやりたいことの中だけにあるのではなく、誰かと一緒に体験して起こった感情を分かち合うことが、楽しさの柱かと思います。せっかく会社という組織で活動しているのだから、お互いを活かし合い、分かち合わないのはもったいないと思っています。そう思えるような人たちと一緒に働けているのだから、やはり私は人に恵まれてるなと思います。

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用正 元嗣さんへのお問合せはこちら
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サクラ衣料のウェブサイトはこちら
http://sakura-iryo.co.jp

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【編集後記】
記者を担当した井上です。用正さんとのインタビューを通じて、「楽しさ」を自分にも社員さんにも大切にされているのを強く感じました。人に関わることで、力が120%にも200%にもなると信じられている元嗣さんがこれからどのような事業を立ち上げていかれるのか大変楽しみです。社員さんの力をどんどん引き出す用正さんのご活躍を応援していきたいと思います。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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