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日記、2023,02,07。

 此処のところ、パンに嵌っている。
 もともと白い米の飯が苦手だったこともあり、子供の頃からパンの方が好きだった。が、毎朝パン食だったかと謂うと、そんなことはない。親が昭和一桁の家庭で、朝食が毎度パンと謂うことは、あまりない。基本は白飯、味噌汁、目玉焼きだ。大人はそれに、漬物がつく。
 で、熱中してしまったパンである。
 わたしが住まう地域は、どうもパン屋の激戦区らしく、こだわりのパン屋があちこちに点在している。点在しているだけあって、駅から遠かったり、判りにくい場所だったりする。車がないので、歩きで行けるところしか訪ねることが出来ない。
 で、まあ、三軒のパン屋へ(間を開けてだが)なんとか辿り着き、それぞれ旨そうなものを買って帰った。
 兎に角わたしはハード系のパンが好きで、食パンですら甘いと思ってしまう。菓子パンなど、貰ったとしても食べないだろう。どの店のものでも美味しいと思えるのが、ベーコンエピである。これは手作り系のパン屋なら大抵、何処にでもある。
 エピ、と謂うのは「麦の穂」を意味するそうな。勿論、ベーコンが入っていないものが基本であろう。しかしわたしは、そのベーシックなエピを見たことがない。いつでもベーコンが挟み込まれている。
 先日、パン屋を探して迷子になり、一時間ほど彷徨い歩いて業務用のスーパーマーケットに辿り着いた。別の場所にもあったが、所謂「業務スーパー」ではない。店内をうろうろ歩き廻っていたら、パンのある棚に20%引きのシールが貼られたチャバタの入った袋がひとつだけ、ぽつんと置かれていた。
 五個も入っている。定価でも七百八十円だ。安い。何も買う気はなかったが、思わず手に取った。これはもう、サンドウィッチにするしかない。ならばと、野菜売り場へ足を向けた。
 安い。涙が出そうだ。サラダ菜が九十八円なんて、以前なら当たり前の価格だが、今やサラダ菜そのものを見掛けないし、葉もの野菜の値段はどんどん高くなってゆく。高くない、と思えば、中身が少ない。これをステルス値上げと謂うらしい。上手いこと云うな。

 午後の二時かそこらから出掛けて、何処だか判らないままうろつき廻り、帰りも何処だか判らないまま彷徨い歩いて、家に戻ったのは夕方の四時半だった。店に滞在した時間は、ほんの十五分ほどである。
 彷徨いすぎだろう。寒いのに汗だくになっていた。これは運動量の所為だけでなく、迷子になったストレスの方が大きい。この年で迷子もないが、見当識が曖昧になるのは老人に特有のことである。
 そこまで衰えてはいないが、土地勘がない場所では行先も判らず不安になるのも致し方ない。不安になればストレスが溜まり、自律神経が不安定になる。そうなると多量の発汗、動悸、息切れなどが起こる。
 まあ、それはいい。無事に家に着けば、すべて時間が経てば治る。
 落ち着いてから、晩飯に作って食べたチャバタのサンドウィッチは、それはもう、とても美味しかった。帰り道にあった100円ローソンで買った生ハムと、新鮮なサラダ菜、カルディで買ったオリーブの入ったクリームチーズ。
 不味い筈がない。旨いに決まっている。
 ああ、貧乏人なのにこんな贅沢をしていいのだろうか。単価は安いけれど。

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