見出し画像

戯れすき間コラム1 桜

桜には、何か特別な感情を湧き起こさせる不思議な力がある。
圧倒的な美と迫力と共に、言葉にできない儚さ、寂しさが胸に溢れてくるのである。

それは、満開になってもあっという間に散り、すぐに桜の季節が終わってしまうことへの未練だろうか。

ただ単に美しいのではないからこそ価値がある。
その中に、日本古来の美学とか侘び寂びの要素が垣間見えるからこそ日本人の胸を打つのではないか。

桜吹雪とはよく言ったものである。
パッと咲いてパッと散る。
咲いても散っても圧倒的であり、そして儚げだ。

この季節、陽光と春の暖かさと桜の美しさと、そしてもう取り戻せない、二度と味わえない、記憶さえ定かでないあの頃の——
思い出せそうで思い出せないような、しかしおぼろげながら浮かび上がってくる記憶。

幼稚園のバザーで食べたぜんざい。もっと欲しかった。
母親に連れられて近所の市場に出かけたら一瞬で迷子になったこと。
昆虫標本セットとの中にある謎の赤青の薬と注射器のセットを使ったら、捕まえた虫がただただ死んだだけだったこと。
小学一年生の頃、好きな女の子にわざと意地悪して嫌われたこと。
親が仕事で使ってたセメントで泥団子を作り、硬いぞって自慢したこと。
一人近所の塀の上を歩いていて踏み外して肋骨を強打し、激痛で息が出来なくなり人知れず死ぬのでは?と思ったこと。
高校時代、格闘技の練習中に強烈に金的を喰らい、もう男として生きれないと思ったこと。
通りすがりの友人に勢い良く話しかけたら全くの別人だったこと。

とにもかくにも、そんな思い出と共に溢れ出す儚く侘び寂びのある感情。

そんな感情を何となく楽しんでしまうのは、私だけだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?