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意図的な立ち止まり

通勤するときに3つの横断歩道を渡らなければいけない。
そのうちのひとつは、あってもなくても変わらないような小さなもので
私は大抵赤信号で足止めを食らう。

ああ、今日も足止めをくらった。
目の前で赤に変わった瞬間に急いでいた足をピタリと止めてしまう。
無視なんて出来ない。
だって後ろには交番があるし、
もしかしたら子供が見ているかもしれないし、
たぶん車がやってくるし、
何より赤信号なのだ。

昔から信号無視をすると小さな罪悪感が付き纏ってくる。
誰かからジッと見られている気分になる。だからなのか、幼い頃から理由がない限り信号を無視することはしなかった。

車通りの少ない信号をわたしは待ち続ける。


「車こないから大丈夫だよ!」と先にスタスタ歩く人の後ろ姿を見ていると、
きっとこの人は世渡り上手なのだろうと思う。
わたしは大丈夫と言われても二の足を踏んでしまう。

あの赤いランプを見ていると
生活に小さな余裕を持ちたいと常に考えてしまう。
たった30秒余りの時間を待てない心の隙間のなさはどうやらわたしの生活も圧迫させるらしい。

途中で変わってしまった赤信号を見ながら走った瞬間に、水溜まりに足を突っ込んでしまった。

つまりはそういうことなのだ。

赤は止まれではなくて一息つこうね、の合図だ。
青になったらまた一歩踏み出せばいい。

びしょびしょになった靴で帰路につく。
目の前で信号無視をする人たちを横目にわたしは待ち続ける。
赤信号があってよかった。
今日も1日よく頑張ったなんてこと、立ち止まらなきゃ思わなかったもの。

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