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今日も、明日も、明後日も。

「今日も一日良い日でありますように。」

表参道のコーヒーショップで働いていた時、毎朝必ずマイボトルを持ってハンドドリップを頼んでくれるお客様がいた。
たった数分間、コーヒーが淹れ終わる間の会話はいつだって穏やかなものだった。

雨の日も、風が強い日も、晴れた日も、台風の日だって
その方はいつも来てくださって
「昨日のおすすめとても美味しかった。今日もおすすめで。」
なんて言って私がコーヒーを淹れている姿をじっと見ていてくれていた。

「行ってらっしゃい。」
いつも見送るときに掛ける言葉。
それにいつも返ってくるのは
「今日も一日良い日でありますように。」

私はいつだってあなたの一日の為の一杯を淹れていたはずなのに、
お客様の方から私の一日を幸せにしてくれるとは思わなかったんだ。
たった数秒のやりとりだけれど、
私はその良い日を更新し続けられた。

私はもうそのお店に立つことはないのだけれど、
最近ふと思い出してしまう。
思わず口に出して言ってしまう言葉。
あまりにも丁寧な物言いは少し恥ずかしいから、
ちょっとフランクにさ
「良い一日を!」
最近の口癖になりつつある。


また、誰かの始まりを、一日の終わりを包み込めるような仕事に戻れることに嬉しさがこみ上げている。
「行ってらっしゃい」や「お帰りなさい」を
「良い一日を」や「ゆっくりおやすみなさい」を
伝えられること、届けられること。

明日をバリスタとして生きられること。

『誰かの細やかな幸せを淹れ続けたいね』と
笑顔で話した日からだいぶ月日は流れてしまったけれど。
また、ここからはじめていきましょう。
『コーヒーが飲めない人でも飲めるコーヒーを』
『ここがサードプレイスになるように』

邁進あるのみです。

あなたの良い一日の為のコーヒーを淹れます。
私はそんなバリスタです。

「今日も一日良い日でありますように。」


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