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本が売れない時代になったと聞きます。

図書館やレンタル店で借りられる本なら借りますし、現代は電子書籍が当たり前の時代。そちらを利用するため、わざわざお金を払って本を入手しなくてよいこともありますが、本は一度買うと置くところに困ります。続き物で、何冊もあったらなおのこと、収納に限りのある本棚に入らなくなるので困ります。

要らなくなったら処分すれば…?といわれるかもしれませんが、貧乏性なのでせっかく手に入れたものを処分するのは自分にとって苦痛な作業です。

何年か前、ゴミ屋敷状態だった実家を父親と片付けた経験があります。本当に不要なゴミなら捨ててスッキリです。が、思い入れのある品物、だとしても使ってもいない大量の物が部屋を占拠しているような状態では、置いといてもしょうがないので次々に処分しました。後で思い出して悲しくなって後悔した品物もあり、物を処分するのは苦痛です。正直、片付けきる前に気力が途切れてやり遂げられませんでした…。でも実家は相当スッキリしました。

その教訓から、物はなるべく増やさずにシンプルに生きるのを目指しています。…といっても気付いたらなんやかんやで増えていってしまうのですが。

そんな自分でも手元に残しておきたい本というのは、自分なりに厳選したお気に入りのモノで、その中の一冊が「ムーミン谷の冬」です。

ムーミンは言わずと知れた、フィンランド生まれの「トーベ・ヤンソン」さんの児童文学作品シリーズで、妖精のような不思議な生きものの少年、ムーミントロールの物語です。

ムーミントロールの一族は11月から4月まで冬眠するのが普通なのですが、ある冬何故だか目覚めてしまい、再び冬眠することも叶わず、ムーミントロールは家族が眠る中はじめての冬を体験します。
冬は凍えるほどに寒くて、夏に色とりどりの動植物で溢れていたムーミン谷はどこにもなくて、お日さまさえ出てきません。何もかもが死んでしまったようで、見たこともない白い世界。ようやく出会えた起きている人たちとは、ムーミントロールが期待するような交流が出来ず。暗くて寂しい冬に打ちのめされます。
懐かしい親友・スナフキンの残した短い手紙を何度も読み返したり、冬に向かって戦いの歌を歌ったり、偏屈な冬の生きものと何とか仲良くなろうと試みたり…そんな風にして春を迎える物語です。

冷たくて厳しい冬の世界。それでも冬を過ごす中で、雪が空から降ってくることを知ったり、オーロラの美しさを知ったり、偏屈な冬の生きものを理解して受け入れていったり…あんまり好きではなかった冬も好きになれそうだと感じ、当たり前に訪れる春をいつも以上に嬉しく迎えるムーミントロールの物語は、ふとしたときに読み返したくなります。

自分はここ数年、思うようにいかない状況で過ごしております。何とかしたいのに、どうしていいか分からない…辛くても、とにかく一日一日やり過ごすしかない。そんな中で、もどかしさに耐えきれなくなったとき、この「ムーミン谷の冬」を本棚からひっぱりだします。

トーベ・ヤンソンさんは絵描きでもあるので、ムーミンの挿し絵は勿論ヤンソンさんの作品です。その挿し絵をただボーっと眺めているだけのときもあります。

自分にとって手元に置いておきたい本は、そういう何度も読み返したいモノです。ムーミントロールにとってのスナフキンの手紙みたいなモノではないかと思います。

本の内容は既に知っているけど、ページを開けば気持ちが軽くなる。普段は本棚に置いているけど、ここぞというときに心の支えになってくれる。

生きてるうちに、誰かのそういう存在になれるような本を作ってみたいものです。

それにはまだまだ全然修業が足りませんけど…


因みに、ムーミン家も物を溜め込むタイプのようで、作中でおしゃまさんという女の子に「いろんなものを持ちすぎている」と、つっこまれていました。

お国も違えば、種族も違うムーミン家なのですが、どこの親も似たようなところがあるのですね(^^;


「ムーミン谷の冬」の物語は、お日さまが顔を出すようになると、白一色の寂しい冬から、徐々に賑やかさを取り戻し、春に向かって進んでいきます。よその地で、食べ物が無くなってしまったり、住むところに困った人たちがムーミン谷にやってきます。
個性豊かなお客たちの中でも強烈な印象を与えられたのは、ラッパを吹き鳴らし、白い雪の上をスキーで駆け抜ける、黄色と黒のセーターを着たヘムレンさんでした。「偏屈な冬の生きもの」とは違って、前向きで積極的で友好的なヘムレンさんですが、若干、暑苦しく空気を読まないところがあります。

あんなに人との交流を望んでいたはずのムーミントロールも、沢山のお客のお世話に、ヘムレンおじさんの相手にと、新たな悩みを抱えていきます…。

妖精のような不思議な生きものたちの物語なのですが、その性格はまるで人間そのものです。

つい最近、新しい生活をはじめた自分ですが、慣れない人間相手に悩むムーミントロールに共感し、奮闘する姿に励まされる場面もあります。

一日のことをなんとか片付けて布団に転がり込み、眠る前の少しの時間は、「ムーミン谷の冬」の世界に浸っています。

自分の人生には、きっとこれからも何度もこの世界に浸りたくなるときがあると思います。

暖かくて穏やかな、いつもの春を待ちわびて。



ついでになりますが…

以下は、制作した漫画をとりあえず全て収納しているマガジンです。漫画がお好きな方は、よかったらのぞいてみてくださいm(__)m↓


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