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アヒアコ(コロンビアのじゃがいもとチキンのスープ)の構造

最近聴いている音楽がもっぱら中南米の音楽で、特にブラジルとコロンビアに非常に偏っている。ブラジルに関してはこのnoteでもフェイジョアーダやモーリョ・ヴィナグレッチなどブラジル料理を紹介してきたが、よく考えるとコロンビアに関して料理面を何も知らないことに気づいた。

最近お気に入りのコロンビアのグループが新譜を出したこともあり、コロンビア料理についてひとつ調べてみるかと思い、コロンビア特有らしき料理として「アヒアコ」が出てきたので調査することにした。

コロンビア料理に関して

コロンビア料理に関しては日本語ではあまり情報が出てこない。出てきたとしても、エンパナーダやチチャロン、モンドンゴなどは他のラテンアメリカ地域でも食べられているものなのでコロンビア料理としてここで取り上げるのもやや違和感がある。

アヒアコのほかに気になったのが「Bandeja Paisa(バンデハ・パイサ)」というもので、画像検索結果を見るとわかるとおりイギリス系のブレックファストみたいな見た目をしている。これはこれでだいぶ美味しそうなのだが、様々な料理の集合体なので取り上げるのが難しい。ひとまずアヒアコについて取り上げる。

アヒアコとは

スペイン語ではAjiacoと書く。語源は諸説あるが"Aji"が中米の古い言葉で唐辛子を指しており、そこから来ているといわれる。しかしアヒアコ自体は別に辛い料理でもなく、そもそも唐辛子も入っていない。
語源が間違っているのか、どこかで調理法が変わってしまったのか不明だが興味深い。

タイトルで書いた通り、じゃがいもとチキンのスープである。通常はそこにさらにとうもろこしやにんにく、ハーブ類が入る。じゃがいもをあえて煮崩すように煮込むのが特徴的なスープだ。

料理の構成要素

<基本要素>
・鶏肉(基本的にむね肉)
・じゃがいも2~3種類 ※後述
・とうもろこし
・長ネギ(青い部分か白い部分、どちらでもいい)
・にんにく
・パクチー

<現地では使われるが日本では入手が難しすぎる要素>
・コゴメギクの葉っぱ(現地ではグアスカ/guascasという)
→アヒアコには欠かせない要素らしいが、日本で入手するのは難しい。パクチー、パセリ、タラゴンなどのハーブを一緒に入れることで近い味が出せるという。もしくはオレガノでもいいという。
https://www.paulinacocina.net/ajiaco-inmigrante/1521

<トッピング要素>
・アボカドをスライスしたもの
・ケーパー(仕上げにちょっと乗せる)
・生クリーム(仕上げにちょっとかける)

使うじゃがいもの品種

クリオージャ/criollaとサバネラ/sabaneraという2つのじゃがいもを使う。クオージャが黄色いじゃがいもで、サバネラが比較的白いじゃがいも。
この2つで作っているレシピもよくあるが、パストゥーサ/pastusaという品種も入れて3種類で作るレシピも同じくらいよく見られる。

日本ではクリオージャは「アンデスポテト」として手に入る。煮崩れしにくいじゃがいもであり、インカのめざめやメークインなどで代用することもできるかと。

パストゥーサとサバネラはいずれもコロンビアではよく取れる品種らしいが日本では入手が難しい。パストゥーサは煮崩れしやすいじゃがいもだが、むしろ煮崩れさせることによりスープにとろみが出るという。男爵いもなどで代用可能だろう。

サバネラは赤~紫色の皮をしたじゃがいもである(下記参照)。どのぐらい粉質/粘質なのかは不明だが、パストゥーサとクリオージャの中間ぐらいに位置するらしい。日本で代用するとすればレッドムーンやグラウンドペチカなどがいいのではないかと思われる。

料理の手順

<共通の下準備>
・鶏むね肉は皮をとる
・じゃがいもは皮をむき、食べやすい大きさに切る
 ※鶏肉を煮込んでいる間にむいてもいい
・とうもろこしは皮・ひげをとり食べやすい大きさに切る(1本なら4等分ぐらい)
・長ネギは鍋に入る程度の長さに切る
・にんにくは皮をむき、ホールでもみじん切りでもいい
 ※みじん切りにすると、鶏肉を煮込んだ際のアク取りの時に気を付ける必要がある
・ハーブ類は今回オレガノ&パクチーで代用している
<現地レシピ忠実バージョン>
1.鍋に水・とうもろこし・鶏むね肉・長ネギ・にんにく・塩胡椒を入れて40分ほど茹でる
2.鶏むね肉を取り出す
3.もう30分ぐらい煮込む
4.ネギを取り出してじゃがいも(サバネラ&パストウーサ)とハーブ類を入れて30分煮込む。その間暇であれば、鶏むね肉の粗熱がとれていると思うので食べやすい大きさに割いておく
5.じゃがいも(クリオージャ)を入れてもう20分煮込む
6.ハーブ類&割いた鶏むね肉を入れてもう5~10分ほど煮込んで完成

上記現地レシピを参考に作ってみた感想としては・・・

・味がしない!!!(他の食物の味はするので味覚は大丈夫)
・煮込み時間が長い!!!(トータル約2時間)
・じゃがいもがしぶとい!!!(煮崩れはするがスープに溶けない)
・スープ中に入っているコーンを食べるのが面倒!!!(熱い)

と、まあそこまで成功とはいえない結果に。
作り方に何かミスがあったのかもしれないし(煮込み時間を少し短めにしたこと、じゃがいもがそこまで溶けなかったこと等)や現地で使われるグアスカがないことが影響したのかもしれない。
あと、上記には書いていないが現地でもチキンスープの素を入れていたりするので、それなら味ももう少し分かりやすくなったかもしれない。しかしそれはそれであまり面白くない気もする。

というわけで、「溶けているじゃがいもと、溶けていないじゃがいもが混在しているスープ」「鶏むね肉とコーンが入っている」という基本要素はあまり変えずに思い切ってアレンジレシピを考慮しました。

<日本用に思い切ってアレンジバージョン>
1.鍋に水・鶏むね肉・ネギ・にんにく・塩胡椒を入れて30分ほど煮込む
2.鶏むね肉とネギを取り出す
3.煮崩す用のジャガイモ(男爵いも等)を入れて20分ぐらい煮込む
4.少し粗熱をとってからミキサーに入れてポタージュ状にする
※必ずしもスープを全部入れる必要はなく、要はじゃがいもが液状になればよい
5.ミキサーから鍋に戻し、煮崩さない用のじゃがいも(メークイン等)およびとうもろこし(缶)を入れて20分ぐらい煮込む
6.煮込み中に鶏むね肉を割いておく
7.ハーブ類&割いた鶏むね肉を入れてもう5~10分ほど煮込む
8.塩胡椒で味を調えて完成

これで作ってみたところ、見た目は完全にアヒアコらしくなったし、味も(想像上の)アヒアコにかなり近い。そしてまったりとして美味しい。
※想像上の、というのはそもそも日本でアヒアコが食べられる店が現存していない可能性が高く、食べたことが無いのである

鍋にフタをしていても長時間煮込むことで水分が蒸発するので、思ったよりしっかりとろみがついたスープになった。あと、じゃがいもは投入タイミングや調理時間を調整すれば、男爵いも一種類でも成立すると思う。要は一方が溶けてスープのとろみになり、一方が溶けずに具材になればよい。

トッピングに関してもアボカド・ケーパー・牛乳と試してみたが、アボカドはアヒアコのまったりさとかなりマッチして美味しい。ケーパーも味のスパイスとしてあっていいのだが、そこまでなくてもいいかも。牛乳は味のまったりさを増す効果があり、ポタージュに近くなる。入れすぎには注意。

構成要素の比率

以下、水を1000gとしたときの比率(約4人分)
鶏むね肉:400g
じゃがいも:合計が500g近辺になるように調整(種別にだいたい均等。2種類使う場合は250gずつ程度)
コーン:1本分程度(缶1つ)
にんにく:1かけ
長ネギ:60g
ハーブ類もろもろ:10g程度
塩胡椒:全員「適量」としか書かないので正直不明、いったん10g程度から調整してみるとよいのではないか
アボカド:1個
ケーパー・牛乳:適量

参考文献・サイト

アヒアコ、構成要素はシンプルながら記事によって言っていることが全然違ったり、情報が不足していたりと調べるのになかなか苦労した。また、出てくるじゃがいもが現地品種なので、じゃがいもについても知識を得る必要があった。

じゃがいもに関する情報
https://hcvalor-navi.com/gardening/konsai/potato/potato-osusume

https://www.eltiempo.com/archivo/documento/MAM-781019

アヒアコのレシピ
日本

https://tokuhain.arukikata.co.jp/bogota/2012/02/post_6.html

以下すべて現地(英語かスペイン語)
https://www.mycolombianrecipes.com/es/ajiaco-colombiano/

https://recetinas.com/ajiaco-colombiano/

https://www.quericavida.com/recetas/ajiaco-colombiano/b566aa96-1eef-49e5-823b-8bf4cc7a961b

https://www.colombia.com/gastronomia/recetas-colombianas/ajiaco-r3

https://www.slowfood.com/ajiaco-bogotano-recipe/

アヒアコの動画


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