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フェイジョアーダ(ブラジルの肉と豆の煮込み)の構造

フェイジョアーダというブラジルの料理がある。肉と豆を煮込んだもので、現地では国民食といって良いほどポピュラーだ。シンプルながらパンチのある料理で、タンパク質も豊富でたまに食べたくなる味である。

日本ではどこで食べられるか

ブラジルでは前述のようにきわめて一般的だが、日本で食べられるところはそこまで多くない。そもそもブラジル料理屋が存在しているのが特定の地域に偏っており、大都市圏かまたは自動車産業が盛んなところに限られている印象がある。

しかも「ブラジル料理屋」の多くは「バイキング形式のシュラスコ屋」であり、だいたいバイキングコーナーの片隅にフェイジョアーダが置いてあるという感じである。『孤独のグルメ』よろしくソロで食べ歩くのが好きな人であっても、単独でバイキングに行くというのは少しハードルが高い。

ともあれそんな中でも入りやすいところを見つけて行くか、素直に人と一緒にブラジル料理屋に行けばフェイジョアーダはあるはずである。私もそこで食べて「かなりうまいし、なんならこれを単体で出してくれ」と思った。
現地ではファロッファ(Falofa)といううまい粉(キャッサバ芋からできている)、コウヴィ(Couve)というケールの炒め物を添えてお米と一緒に食べるのが一般的。いってみればカレーみたいな感じで食べられる。

料理の構成要素

<必須要素>
・肉(塊肉、ソーセージ、ベーコン等。詳細は後述)
・黒インゲン豆(日本で豆をどう手に入れるかが問題。詳細は後述)
・にんにく
・玉ねぎ
・ローリエ
・塩

<お好みで入れるもの>
・オレンジ(またはオレンジジュース)
・カシャッサ(ブラジルの蒸留酒)
※いずれも煮込むプロセスで入れる

料理の手順

<共通の下準備>
1.にんにくと玉ねぎはみじん切りにしておく
2.乾燥豆を使用する場合は前日から豆を水につけて戻しておく
※水煮缶の場合はこのプロセスは不要
3.肉類(塊肉、ソーセージ、ベーコン等)を食べやすい大きさに切る
※焼いてから切るパターンもある
<超簡単バージョン>
1.にんにくと玉ねぎを炒める
2.肉を入れて少し炒める
3.黒豆と水とローリエを入れて煮込んで完成
<少しこだわりバージョン>
1.豆を煮込んでおく
2.並行して別のフライパンで肉(特に塊肉、ソーセージ類)を焼いておく
3.同じフライパンまたは別のフライパンで玉ねぎとにんにくも炒める(ベーコンを分けて焼く場合はこのタイミング)
4.煮込んで柔らかくなった豆の鍋に2~3を入れる
5.さらに煮込んで完成

たったのこれだけである。ちなみに後者の方が豆と肉の煮込み時間を別々に調整できるため、時間調節の自由度は高い。やわらかくなるのに時間がかかる塊肉はじっくりと、ソーセージ類は比較的後でなど肉によって時間を分けて投入することもできる。

構造的にはかなりシンプルなのだが、肉と豆をどれだけこだわるかで難易度・手間が大きく変わってくる。現地のレシピサイトを見るとわかるが3日かけて作るバージョンもある。(※さすがに3日間つきっきりではない)

肉をどうするか

現地のレシピでは多種多様な肉が入っている。とりあえず入っていることが多いメンツを書き出してみたが、これら全員を日本で集めるのは大変なので「へ~そうなんだ~」程度で読んでほしい。

linguiça calabresa(リングイッサ・カラブレーザ)
→少しピリ辛のソーセージ
linguiça paio(リングイッサ・パイオ または単に パイオ)
→豚肉のソーセージで、燻製されているもの。ポルトガル・ブラジルで使う
carne seca(カルネ・セッカ)
→塩漬けにして乾燥させた牛肉。切るとビーフジャーキーみたいな見た目
costela(コステラ)/costelinha(コステリーニャ)
→リブ(あばら肉)のこと。後ろにde porco salgada(ヂ・ポルコ・サルガーダ)が付くと「塩漬けにした豚肉の」の意味合いがつく
lombo de porco(ロンボ・ヂ・ポルコ)
→豚ロースのこと
pé de porco(ペ・ヂ・ポルコ)
→豚足のこと
orelha de porco(オレリャ・ヂ・ポルコ)
→豚の耳のこと
rabo de porco(ハボ・ヂ・ポルコ)
→豚のしっぽのこと
toucinho defumado(トウシーニョ・デフマード)
→ベーコンのことで、ふつうに「ベーコン」と書いてあるレシピも多い。defumadoが「燻製された」の意味

このうち、どこまで用意すればいいのかだが、現地系レシピでも全部使うわけではない。豚足・耳・しっぽなどは使わないものも多い。
高頻度で登場しているのはカルネ・セッカ、コステラ(ヂ・ポルコ・サルガーダ)、リングイッサ、パイオ、ベーコンと思われる。

日本で普通にやるとしたら塊肉部分は肩ロースやバラ肉の塊を3cm角ぐらいに切るか、シチュー用の四角い肉など。リングイッサやパイオは食べ応えのある太めのソーセージを買う。ベーコンはベーコン。雑な思い付きではあるが豚足・耳・しっぽはホルモン系でも代用できるかもしれない。

カルネ・セッカやポルコ・サルガーダの塩漬け感を出すとしたら、少し塩をふっておいて自家製で塩漬け肉風にするのもありかもしれない。このへんは以前に書いた「咸肉(中国式塩漬け肉)」の記事も参考になるかも。

より本気でやろうとするならば南米系食材店に行くしかない。調べた感じ少なくとも五反田、横浜市鶴見区、群馬、静岡、愛知、岐阜、三重、滋賀、島根などには南米系スーパーがある。フェイジョアーダを作るかどうかは置いておいても外国気分が味わえるので普通に行ってみても楽しい。

なお、塩漬け肉に関しては前日から水につけておくなど塩抜きのプロセスが必要になるのでこれはこれで面倒さがある。こちらに関しては「塩漬け肉 塩抜き」などで調べてみてほしい。

豆をどうするか

フェイジョアーダでは、地域によって差はあるものの黒インゲン豆が使われることが多い。そのほかカリオカ豆(インゲン豆の一種)や赤インゲン豆も使われる。ポルトガルのフェイジョアーダでは白豆を使ったりミックスもあるという。

さて、この黒インゲン豆であるが、普通のスーパーだとまず売っていない。黒大豆はあるのだが、黒大豆と黒インゲン豆は似て非なるものである。かといって黒インゲン豆をネットで購入するとそれなりに大容量になってしまったり送料が高くハードルが高い。
また、仮に豆を買ったところで、豆を水につけて戻すという作業が発生するのでそれはそれで面倒というのがある。なお、水につけるのは前日からという表記が多いが、30分~1時間ぐらいでもいいとするレシピもある。(あまり長くつけると色が落ちたりする?)

そこでオススメしたいのが「成城石井に行く」である。

成城石井に行って缶詰コーナーに行くと下記黒インゲン豆の水煮缶が売っていることがある。いろんな店舗で見てみたが意外とどこでも置いてある可能性が高いので一度チェックしてみてほしい。

これなら特に豆を水で戻す必要もないし、すでに煮てあるからある程度豆がやわらかい。豆のうまみが出ている汁も入っているので格段に料理が楽になる。プルタブがついていないので缶を開けるのはやや面倒だが、それを差し引いてもかなり楽。

短時間でも煮込むとちゃんとやわらかくなるのだが、意外に1時間ぐらい煮込んでもフェイジョアーダ独特のドロッと感が出ない。もちろん私の煮込み方が甘い可能性もあるし、もっと長く煮込んだり圧力鍋を使えば変わるかもしれないが。
少しズルをするやり方として、豆を煮込んだあと汁ごとミキサーにかけるというのがある。こうするとかなりドロッとするし豆と汁が混然一体になって美味い。よりこだわるならば半分ぐらいはミキサーにかけ、半分ぐらいとっておくというやり方もある。

構成要素の比率

肉と豆をどうチョイスするかでバランスが異なってくるので、一概に比率を記載するのが難しい。

豆に関しては、乾燥のものから水で戻すとインゲン豆は2.2倍ほどになると言われている。(200gの乾燥豆を戻すと440gぐらいになる計算)
これを踏まえた上でいうと、「水で戻した後の豆の重さ」と「肉の重さ」が1:0.8~2ぐらいというのが相場ではないかと思われる。

肉に関しては「ソーセージ類が半分を超えることはない」というのが共通の法則かと思う。どの肉を何グラムぐらい使うかはまちまちだ。これらを踏まえた上で共通解に近いバランスは以下ではないかと思われる。もちろん肉肉しくしたければもっと肉を増やしてもなんとかなると思う。

黒豆水煮缶:1缶(固形量240g/総量400g ※汁ごと使ってよい)
 or 乾燥黒いんげん豆100~150gを2.5倍ほどの水で戻す(※この場合は水は全部使わなくてもいい、様子を見て増減させる)
塊肉類:150~300g
ソーセージ類:100~150g(でかいソーセージ2本ぐらい)
ベーコン:50~100g(塊で少し太めに切るほうが似合う)
玉ねぎ:1/2個
にんにく:1かけ
塩:好みや使う肉によるので難しい。また、水煮缶の場合最初からある程度味がついている。適量としか書けないが少ないところから始めてみるべし

参考文献・サイト

今回調べるにあたってだいぶポルトガル語になじむ必要があった。ポルトガル語でレシピを調べたい場合は「〇〇 receita」または「Como fazer 〇〇」で検索するとよい。

<日本語情報>
https://www.latinyamato.co.jp/brasil-food-feijao

https://koizumipress.com/archives/11193

http://brasilsilsil.blog.fc2.com/blog-entry-42.html

https://nipo-brasil.org/archives/1239/
※レシピではなくフェイジョアーダの歴史についての書き物

<現地系レシピ>
https://caldobom.com.br/receita/feijoada.html

https://www.panelinha.com.br/receita/Feijoada

https://www.tudogostoso.com.br/receita/2998-feijoada.html

https://br.recepedia.com/receita/carne/54349-feijoada-completa-tradicional-deliciosa/

https://caldobom.com.br/blog/receitas-de-feijoada.html
フェイジョアーダの別バージョンを紹介しており、シーフード版、ヴィーガン版、鶏肉使う版、やや軽め版の4つを紹介している。
基本的に牛と豚を使うのでガツンとしているため、小食な方や脂分を控えたい方はこれも参考になるかも。

<動画>

陽気なおじさんがすさまじい量のフェイジョアーダを作る動画。José Almiroという方で25年間肉屋で働いたあと、肉屋が閉鎖されたのでテレビやYouTubeを始めたら人気が出たというすごい人生である。(出典:https://www.segs.com.br/eventos/206667-churrasqueiro-mineiro-conquista-o-brasil-com-os-seus-videos-de-receitas-praticas

『Cozinha Prática』というテレビ番組をやっているシェフのRita Loboさんによる解説動画。もともとはモデルをやっていたそうだ。

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