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本屋のUIを変えたい話

ネット本屋とリアル本屋はもっとシームレスでいい。

本屋がブックカフェというUIに変わった日

☑ ブックカフェは空間を売っている
☑ 書店本来の客層以外にも本に触れる機会を増やした
☑ 本は雑貨になった

本屋というUIやUXが変わったのは、蔦屋書店とスタバが併設された頃だと思う。今までは本を買って、あるいは買っておいた本を持って、カフェに行って初めて優雅な生活スタイルを演出できるのだ。
だけど、この併設型は未購入の本をゆっくり読んで買うか買わないか検討することが出来るし、別に読まなくても、みんな大好きスタバのドリンクをガバガバ飲んでゆっくりすることもできる。人が本屋に行く意味をガラッと変えてしまった、ブックカフェにいることがファッションになった。

多分、昔から本を読む人ってほんの一部の人間だった。大半の人は本なんて興味ないし、物語に浸りたい好事家か、勉強に追われている人、あるいは書痴だ。だけど、おしゃれな外観の蔦屋でスタバ飲みながら、おしゃれな本、あるいはMacの製品を使うことで良い感じの自分に浸れる。本は飾りで、自分を引き立てる小物になった瞬間だと思う。

読書という小さなパイ

☑ リアルの本も電子書籍も読書という娯楽のUI違いでしかない
☑ 時間もお金も限られている娯楽産業の中で成長する必要がある
☑ 本屋はいよいよ電子書籍と共存し始めた

本は、本屋は、出版業界と密接だ。今までは本というUIしかなかったし、それさえ供給していればよかった。元々一部の人しか利用していなかった書店は、中流層が減っていき娯楽産業というパイが小さくなっていくと、当然苦境に立たされる。だって本しか売っていなかったのだから。だから、蔦屋書店はライフスタイルや空間を売り始めた。

スマホが出てネットで色んなものが見られるようになると、かなり本を買わなくてよくなった。渋々本を買っていた層はいっぺんに離れただろう。出版社は電子書籍を出し始め、なんとか手に取ってもらおうと努力を始めた。
ここで本屋は電子書籍というUIが出てリアルの本と内輪もめを始めてしまったのだ。だって大概の本屋は本を買ってくれないと困るから。

しかも、最近の新刊は電子書籍とセットで出るようになってきたし、私達は大概、本か電子書籍、どちらのUIで情報や娯楽を手にするのか選べるようになった。今すぐ読みたい、に圧倒的にすぐ答えてくれる電子書籍は強い。
本来書籍というのは娯楽全般と競わなければいけないのに、本か電子かというUIの違いで揉めても何もいいことはない。そうしたことに気付き始めた本屋は、電子書籍と共存し始めた。たとえば、hontoの読割50とか。

これはリアルの本を買った人向けに、安く電子書籍を提供するサービスだ。今までリアルの本を電子書籍で買うときは大体定価だったし、画期的だと思う。「リアルの本を買ったけど本棚がいっぱいで何か処分しないといけない、だけどまた読みたくなったらどうしよう」とか「リアルと電子の両方が欲しいけど、2倍は辛い」という層にヒットしていると思う。
(電子書籍からリアルの本という流れには、まだまだ課題があるんだろうけど)

結局、本屋ってリアルの本を一番に扱ってる

☑ 本屋はリアルの本がないと生きていけないと思っている
☑ 出版社や取次頼みの路線から脱却してない

結局、普通の本屋にしても蔦屋書店にしても、本というUIを最初に提供していることに変わりがない。これから先、リアルの本が出続けるという状態にすがって生きている。出版社がこれまでも変わらず、大量に刷って大量に配ると思って生きているのだ。

私は正直、そのうち電子書籍が先に出て、売れ行きの良いものだけがリアルの本になると思っている。あまりにも多くの本が売れずに捨てられているし、そもそも本というUI自体が遠くなってきているからだ。

リアルの本はとてもコスパが悪い。場所をとるし、作るのも捨てるのも金や労力がかかる。不況しか知らない世代は、リアルの本を揃えるだけのお金がない。しかも満喫に行けば流行りの本は全て読めるし、所有する必要性がない。安い給料では広い部屋になんて住めない。リアルの本を所有するということは贅沢品になりつつある。限られた本しか持てないということは、リアルで所有すること自体に価値のある本しか手に取らない。
リアルの本は雑貨、あるいはトロフィーとなってしまったのだ。

だから、電子書籍じゃないリアルの本を手に取る理由を、もっと深く考えていく必要がある。

それでも僕らは本屋が好き

☑ 本屋には本屋のUXがあるから、本屋に寄る意味が生まれる
☑ 本を買える以外のUXを提供できる本屋は強い

リアルの本を手に取らなくてもいい時代、本屋に寄ることの意味って何だろう。本屋で買うものがなくても、本があるという空間は好きな人が多いと思う。

ネット世界は常に個人に最適化したレコメンドを表示し続けている。あらゆる履歴から分析され、いわば閉じた世界で無難な選択肢が提示され続けている。どう、あなたはこれが好きでしょう?と。
本屋にはそれを打ち崩す力がある。書店の本棚は担当がついていて、その人が推せると思ったものが前面に出ている。売れ筋もあるが、売れてほしい知ってほしい、そういう望みをかけて並べられるものもある。
自分で検索しボタンを押す、そういった行為から解き放たれて、足を動かすだけで全然違う秩序が見える。本屋はきっとメディアの一種になった。
これもある種のUXだとおもう。新しい世界を発見するというUXだ。

ある本屋ではキッズコーナーがあり、読み聞かせ会もある。親にとっては幼稚園・保育園・児童館以外の第3の選択肢を提供した。同年代の子供が触れ合えるUXを提供したのだ。

何度も例に挙げた蔦屋書店とスタバの組み合わせは、本を雑貨にしファッションにするUXだと思っている。

これからの書店UI・UXとは

☑ リアルイベントを推す
☑ リアルの本以上に電子書籍を推す
☑ 新しい世界を見つけるUXを手助けする
☑ 各書架を担当する人の個性を打ち出す

「リアルな体験」や「新しい世界の発見」を提供するのが書店の価値となっていくのなら、リアルの本も電子書籍もきっと区別なんていらない。リアルの本と電子書籍が並んでいて、どちらもQRコードでサクサク買えるのが理想的なUIだと思う。「こっちはリアルの本が欲しいけど、こっちは電子書籍にしたい」そういう気分に対して、今のUIだと同じようには手に出来ない。書架も店舗在庫もなかった時、今日は荷物が多いから持ち帰りたくない時に、そのままQRコードで買うことができるのは絶対強い。
検索というステップを踏まずに速攻で購入できるということは、今買える選択肢を増やすということだ。

もっとみんなの興味がバラバラになって、リアルの本がどんどん消滅して、書籍のオンデマンド印刷が流行ったとしたら、QRコードで注文して速攻印刷して届けることが出来るようになってほしい。
ブックカフェで見つけた本のQRコードから、動画版の書籍を友達とシェアして過ごしたり、そうしたら、もっと書籍は自由になれる気がする。

まとめ

☑ リアルの本を買う理由をもっと突き詰めて考えるべき
☑ 本屋は本だけじゃなく体験を売るべき
☑ QRコードをもっと使ってほしい
☑ リアルの本と電子書籍を区別なくアクセスさせてほしい

電子書籍で立ち読み出来たら見本誌はいらないかもしれないし、QRコードで会計出来たらレジ待ちなんていらないかもしれないし、その場で買って手ぶらで帰ったりもっと遠くまで行けるかもしれない自由を手に出来る。

もっともっと便利になってほしい!ある種オムニチャネルっぽい。本屋もリアル店舗って考え方にそのうちシフトするだろう。デジタルネイティブが職に就く時代なんだから。

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