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猫と暮らす築100年越えの古民家。①

  家を初めて見に行ったのは、秋口だった。空を見上げた時、夏の終わりが近いことを感じた昼下がり。
高い屋根の母屋、隣接した倉とかつて牛車だった建物が、樹齢のわからないような巨木に囲まれている広い敷地内が印象的だった。

  真っ黒な太い梁が何本も渡されていて、土壁に覆われた土間には、石で組まれた釜戸がふたつ。鉄扉を開けると、小さな炭の残りが転がってきた。
  土間の隅にそっと重ねられていた羽釜に、ここで煮炊きされていた年月をふと思う。

   室内は、土間を含め9部屋で、一間が6畳から8畳とすると、60畳ぐらいになるのかな、という印象。この家に住んでいたおばあさんが亡くなり、3年経つことをひと区切りとし、貸し出すことに決めたそう。

  山の中の一軒家。南側、集落のてっぺんになるようなところにあり、見晴らしが良く、母屋の側にはアロエがすくすくと育っていた。

 そしてこの家には、おばあさんと住んでいた猫がいるということ。息子さんが、3年間毎日、ご飯をあげにきていたけれど、なかなか人見知りで姿を見せないとのお話でした。

 おばあさんが居なくなってから、1匹でいた猫とは、どんな猫なんだろう、会いたいな、と思いつつ会えないままお家の見学を終えたのが入居少し前。
  さわさわと風に吹かれて枝を揺らす巨木たちを見ながら、綺麗な山の中だなぁって、そう思ったのが最初です。

   その猫に出会えたのは、もう少し後のこと。

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