見出し画像

ミスドで出会って結婚した両親へ

両親の出会いについて初めて聞いたのは、小学校低学年の時だったと思う。わたしはまだ幼くて、恋愛だとか結婚だとか、大人になって悩むであろうそれらについて何も知らない無垢な子供だった。こたつで寝かけていた父が、寝ぼけた声で「ミスドのバイト」と答えたのを、25歳になった今でもはっきりと覚えている。

父は福島、母は秋田出身だ。進学と同時に神奈川で住み始めたふたりは、ミスドのアルバイトで運命の出会いを果たす。その頃のミスドは、男性がドーナツを製作し、女性は売り子をするというのが一般的だったらしい。父はキッチンで黙々とドーナツを作り続け(フレンチクルーラーを作るのが難しいそう)、母はカウンターでお客様に接客をしていた。バイトをしてから大学へ行くと「あれ、ミスドのバイト帰り?」と突っ込まれてしまうそうだ。その話を聞いてから、あの甘くてなんともいえない香りが好きになった。父と母の思い出の香りなのである。

時間をかけて発酵して、やっとおいしくなるドーナツ。両親が当時作っていた丸いドーナツのように、父と母、兄とわたしで手をとりあってお互いをみつめながら輪になれたわたしたちは、「家族」になれた。最初から家族だったわけではない。家族になりたくて努力をしたから、家族になれた。

父と母が結婚をしてくれて、心から感謝をしている。結婚と家族がどれほど難しくて、でも幸せなものかを教えてくれて、感謝をしている。わたしもいつか、誰かと手を繫いで家族を作りたい。

たとえ父と母がいなくなっても、ミスドはこれからも存在するのだろう。

それでいい。そうあってほしい。これからも、父と母の思い出がつまったミスドがあり続けますように。

お母さんの隣にいてくれたお父さん、ありがとう。

お父さんの隣にいてくれたお母さん、ありがとう。

わたしはふたりの子供でいれて、幸せです。

ミスドがあって、よかった。

愛しの両親と、フレンチクルーラーに愛をこめて。


いつも応援ありがとうございます。