医療法人における組織の収益と社会貢献の関係について

 医療現場では、見返り(診療報酬)のついていない社会貢献について、ある意味シビアである。全ての診療科が一律に収支を黒字にすることを求められている。多くの病院は非営利団体であり、経営に余裕があるわけではないので、致し方ない点もある。
 
 一方で企業では、販売(収益をあげる)部門と社会貢献(支出が収入を上回る)部門が存在し、その足し算で経営を成り立たせるという考え方をしているように見受けている。このことは興味深い考え方だと感じた。持ち出しになっても何らかの社会貢献を行うことは、その分野の販路を広げたり、新しい価値観を想像して新たなフィールドを生み出したり、既存の製品販売を単に継続するのみでは得られない、将来の収益に対する投資と言える。

 糸井重里さんの会社では、会社の収益を支える「手帳」部門の人がいばる事なく、他の部門の人のことを尊重していると話していた。余裕がなければこの考え方はできないが、これは健康な経営と社内風土作りである程度実現できる可能性が示されている。そもそも会社は「社会を良くする」ための営利組織で、それは「未来の社会を良くする」投資を行う存在としても期待されているのだから、あるべき姿とも言える。 

 もし仮にこれを医療法人に適応するのであれば、診療報酬算定が高い診療を行うことができる診療科が収益を稼ぐ。一方で体重が小さく、病気になる頻度そのものが少ない小児を対象とし、さらに人口比の中で締める割合も10%程度とそもそも患者(顧客)が少ない小児科は、現在の診療報酬の仕組みでは売り上げが少なくならざるを得ないが、将来の社会の担い手を病から助ける、健康習慣を指導して将来の病気を予防する、それによって健康な社会を実現する、という意味での社会貢献・投資をしている部門と考えれば、これらが足し算で黒字を出せば良いという考え方をすることで、今の診療報酬の体制のままでも、お互いの存在を尊重しながら働くことが可能かもしれない。
 ただし、この社会貢献は、社会全体の医療費を減らしたり、健康度を上げることには繋がるが、その組織の「収益」は、むしろ下げる方向になる点は、企業の社会貢献とは効果が逆方向とも言える点は考慮が必要だが。
 

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