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お酒が飲みたくなる話

こだわりの果て

貴方は”こだわり”というものを持っているだろうか。
こだわりとは、良く言えば妥協を許さない玄人気質なところであり、悪く言えば細かい事へ執着し、頑固で融通が利かないといったイメージだろう。
”こだわり”というと大そうなことに聞こえてしまうかもしれないが、少なからず自分ルールというものを胸の内に潜めているのではないだろうか。

そういう私にも”こだわり”とも言えない”こだわり”を持っている。
コートと言えば”トレンチコート”だし、歩き始めは左足からでないと気が済まない。美容室では二度続けて同じヘアースタイルにしないというのも当てはまる。
酒のつまみに関してはもっと露骨である。

ビールにはジャーマンポテトが良く合う。
大きめにカットされたホクホクのジャガイモと、塩気の効いた厚切りベーコンのコンビネーションを包み込むバターの香りは、一口頬張れば背徳感さえも遠い記憶となる。
玉ねぎも忘れてはならない。熱を帯びた玉ねぎは、ジャガイモとはまた違うシャリッとした歯触りととろけるような甘味を感じさせてくれる。三位一体とはこのことだ。
濃厚に味付けされた塩味と甘味には、苦いビールが実に合う。
苦味を追求するならばIPAは如何だろうか。
ドイツが発祥とされるビールと、その名の通りジャーマンポテト。
相性が良いわけだ。
とりわけベートーヴェンを聴きながら味わいたいものである。

日本酒には味噌だ。
焼き味噌も良い。香ばしい香りとねぎの風味、甘みのある白みそ。
少しづつ、少しづつ頂く。
この上ない贅沢な瞬間を、繰り返し楽しめる喜び。
多くは語らない。

赤ワインにはビーフジャーキーが良い。
硬く筋張った肉片が噛む度にほぐれ、旨味が広がっていくのだ。
そこに絹のようにしなやかに流れ込む赤ワイン。
フレッシュな赤も捨てがたいのだが、やはりフルボディの重厚さが肉の旨味をさらに昇華していく感覚がやめられない。
ひとたびゴツゴツと乱暴にすら思える肉片と繊細な果実酒が合わさった時、グラスから目を逸らすことができなくなっている。

白ワインには鳥軟骨揚げ、これは揺るぎない。
昔よく通っていたバーのマスターから聞いたことがある。レモンをかけて食べるものには白ワインが合うというのだ。
目から鱗であったが、激しく同意した。
鳥の唐揚げや牡蠣はもはやレモンをかける食べ物の王道と言ってもいい。
ましてや鳥の唐揚げにレモンというのは古から語り継がれてきた文化だ。かけるタイミングは人それそれであるし、あえてかけない者もいる。勝手に唐揚げにレモンをかけるという行為によって、どれだけの争いが生まれたことであろう。
卓上に設置された時限爆弾、それが鳥の唐揚げなのである。
確かに鳥の唐揚げのジューシーさを白ワインの酸味が中和し、口内をリセットしてくれるという永久機関は実に魅力的である。
だた、鳥軟骨揚げのちょうど良いサイズ感と軟骨のコリコリとした食感が実に良いアクセントを生み出している。
やはり鳥軟骨揚げが至高なのである。

酒とのペアリングについては枚挙に遑がない。
ウィスキーにはチョコレート
バーボンにはジャイアントコーン(アイスではない)
焼酎には焼き鳥

こだわりは常に変化が必要である。
相反する考えではあるが、固執した意識のままでは更なるこだわりへの道を閉ざしてしまう。
こだわるためにこだわりを捨てなければならない。
飽くなき探究心の旅はこれからも続いていく。

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