【詩】虐殺

『あらゆる芸術 あらゆる希求 
そしてまた あらゆる行動と探索は
何らかの善を目指していると考えられる
それ故に 物事が目指しているものから
善なるものを正しく規定することができる』
「何ですかそれは?」
「アリストテレスだよ。『ニーコマコス理論学だ』アリストテレスを読んだことはあるか?」
「ほとんどありません」
「読むといい。君ならきっと好きになれる。俺は読む本がなくなったときにはギリシャ哲学を読むことにしているんだ。飽きることがない。いつも何かそこから学べることがある」
「その引用のポイントはどこにあるんですか?」
「ものごとの帰結は即ち善だ。善は即ちあらゆる帰結だ。疑うのは明日にしよう」と小松は言った。「それがポイントだ」
「アリストテレスはホロコーストについてどう言っているんですか?」
小松は三日月のような笑みを更に深めた。
「アリストテレスはここでは主に芸術や学問や工芸について語っているんだ」