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第56回 ビバリーヒルズ・コップ(1984 米)

 さて、BL的映画鑑賞もそれなりの回数を重ねてきたわけですが、ここへ来て重大な問題に気付いてしまいました。あまりに映画のチョイスが偏っていると言う事です。

 数えてみますと55回中スタローンの出演作10本、松方弘樹8本という偏りぶりです。しかも、面倒なので数えてないですが多分最多登場は室田日出男です。

 というわけで、平等をモットーとするこのnoteに相応しくないこの偏りを是正すべく、2021年のBL的映画鑑賞はもっと幅広い映画をレビューしていくことを目指します。

 差し当って足りないのが黒人俳優です。未だ主演映画のレビューゼロというのは偶然とは言え由々しき問題であります。

 というわけでnetflixで何か適当な映画をと物色したところ、なかったはずのエディ・マーフィーの代表作『ビバリーヒルズコップ』が配信されていたのでここから行きましょう。

 ミスター面白黒人エディ・マーフィー演じるデトロイトのはみだし刑事アクセルが、殺された幼馴染の仇を探してビバリーヒルズで大騒動というあらすじがもうわくわくさせてしまいます。

 本作の大ヒットでハリウッドの名士となり、『ジーリ』でラジー賞を総なめにして以来消息を聞かないマーティン・ブレストが監督。愉快にストーリーを仕上げた脚本のダニエル・ペトリ・Jrはアカデミー脚本賞にノミネートされ、1500万ドルのお値打ち映画でありながら実に3億ドルも売り上げる大当たりを取りました。

 陽気で知恵が回って黒人である事をフル活用するエディ・マーフィーのキャラクターは本作で既に完成されています。勿論山寺宏一の吹替で観なければその魅力は半減です。

 そして何より『トップガン』でも知られるハロルド・フォルターメイヤーのクールなBGMは素晴らしく、事実上のメインテーマである『Axel F』は聞けば知らない人はないでしょう。

 このnoteでエディ・マーフィーならむしろ『48時間』じゃないのかと詳しい方はお思いかも知れませんが、それでは60点です。アクセルのモテ男ぶりを過小評価しています。そりゃあもう凄いですから。

ビバリーヒルズ・コップを観よう


AmazonとNetflixで配信があります

真面目に解説


結局は…
 スタローンの映画が多すぎると言った矢先ですが、この映画も最初はスタローン主演の方向で作られたものです。結局はスタローンに収束するのです。

 脚本が愉快に過ぎてスタローンが書き換えを要求したことから、愉快な役ならこいつしかいないとばかりエディ・マーフィーにお鉢が回って来てこの映画になりました。

 しかし、それでは勿体ないのでその脚本にさらに手を加えてスタローンが撮ったのが『コブラ』です。この二本が元は同じ脚本だとは、知らずに見抜ける人は一人もいないでしょう。

 いずれにしても、スタローンの結構根暗な側面と、エディ・マーフィーのおちゃらけたキャラクターが対照的であり、そう知ったうえで一緒に見ると中々味わい深いものがあります。


エディ・マーフィーという役者
 今度『星の王子 ニューヨークへ行く』の続編が出ますが、エディ・マーフィーは表舞台にあまり出なくなってかなりの年数になります。

 80年代のエディ・マーフィーの人気ときたらそれはもう凄く、コメディアンからキャリアをスタートさせ、まだガチムチで淀川先生の好みにどストライクだったニック・ノルティといちゃつく『48時間』で映画に進出して以来ヒットメーカーとして引っ張りだこでした。

 コメディアンのバックボーンと黒人である事をフルに活用した際どいジョークとマシンガントークで「面白黒人」の型を作った偉大な名優です。本作はまさにエディ・マーフィーの全盛期の作品と言えます。

 エディ・マーフィーを知らない人は滅多に居ませんが、出演作を見た事がない人は意外に多いので、これを機会に全盛期の彼を知るのは良い事のはずです。『ホーンテッドマンション』あたりは本当の姿ではないのです。


黒人であるということ
 今では黒人俳優は何ら珍しくなく、むしろどんな映画にも黒人を一人は入れる事が不文律化して逆に問題の種になっているくらいですが、当時は黒人が映画で役を貰うのは非常に困難で、アカデミー賞に黒人は数十年に一人という寂しい時代でした。

 黒人をメインにすれば黒人が観に来るかというとそうでもなく、黒人だけの映画は当たらないというジンクスもあるくらいで、この辺は日本に居るとあまりイメージがわかない根の深い問題なのです。

 というのも、白人に人気のある黒人スターは黒人からは逆に嫌われるという傾向があります。黒人に支持されるのは黒人の地位向上に努めてジャンジャン政治的な発言をしていくようなタイプなのです。そうすると白人には怖がられるわけで、難しい所です。

 ところがエディ・マーフィーはノンポリもいいところなので黒人からはあまり人気がありません。むしろ黒人差別をネタにしたり、特殊メイクで白人になって人種ネタをやったりして笑いを取りに行くのが得意技です。

 ともすれば、そういう肩を張らないでいいところが日本での人気の根底にはあるのかもしれません。マルコムXとキング牧師なら、友達にしたいのはは後者でしょう?


無法地帯デトロイト
 主人公アクセルは元不良でデトロイト市警の刑事であり、型破りな捜査で実績を残す一方、周りが迷惑をこうむるという石原軍団スタイルの刑事です。

 デトロイトと言えば『ロボコップ』を例に出すまでもなくアメリカでも指折りの治安の悪い都市であり、刑事もこのくらいでないとやってられないのです。

 アクセルの上司であるおっかないトッド警部を演じるギルバート・R・ヒルは本物のデトロイト市警の刑事で、取材に行ったらあの調子で実に怖かったので監督が頼み込んで出演してもらったのだそうです。

 このシリーズで人気者になって警察を退職後は市会議員になったというのですから、世の中何が幸いするのか分かりません。ハートマン軍曹もびっくりです。


上級国民しかいない街
 一方、舞台は前半のうちにそのデトロイトからビバリーヒルズに移ってしまいます。ビバリーヒルズはセレブの街であり、警察のカラーも全く違います。

 デトロイトではルールなど律義に守っていては殺されるので殺伐としていますが、ビバリーヒルズは何かあればすぐ悪徳弁護士が飛んでくるので逆に杓子定規に過ぎます。

 このギャップをギャグに昇華するのもエディ・マーフィーで、持ち前の知恵とデトロイトの流儀でビバリーヒルズの刑事たちを振り回すのが映画の一つの軸になっています。

 ビバリーヒルズ市警も芝居の出来る面々が揃えられています。アクセルのおもりを命じられて頭を抱えるタガート巡査部長(ジョン・アシュトン)中間管理職の悲哀と刑事の矜持の間で揺れ動き、その部下のローズウッド刑事(ジャッジ・ラインホルド)無鉄砲に過ぎてタガートを困らせ、この掛け合いは飽きさせません。

 彼らのボスが私の好きなロニー・コックス演じるボゴミル警部補です。『ロボコップ』でデトロイトを混乱に陥れたのを知っているので笑ってしまいますが、悪役の印象が強いこの人に珍しく一本筋の通った男ぶりで映画を締めています。


悪そうな奴は大体友達

 映画は無茶をやって怒られたアクセルの元に幼馴染でムショ帰りのマイキー(ジェームズ・ルッソ)が訪ねてきたところから本格的に幕を開けます。

 二人は子供の頃は一緒に悪戯と言うには度の過ぎたワルを一緒にやった仲で、再会早々いちゃついて私の腐の心を刺激するのです。

 何しろ『マイ・プライベート・アイダホ』でホモの兄貴をやっていたのでルッソはBL力が強く、二人はもうそういう関係があったとしても驚かないレベルで仲良しです。

 しかし、マイキーはどこからかかっぱらってきた大量のドイツマルクの証券を持っていて、これが元で殺されてしまい、アクセルは敵討ちに彼が働いていたというビバリーヒルズに向かうのです。

 アクセルが目を付けたのが二人のこれまた幼馴染でアートギャラリーを経営するジェニー(リサ・アイルバッハー)で、彼女の雇い主である見るからに悪そうなメイトランド(スティーヴン・バーコフ)が怪しいというのでアクセルは捜査を進めていくのです。

 このジェニーが実に良い女です。マイキーが死んだと聞いて放っておけずに無茶するアクセルを助け、身の危険を厭わず捜査に協力する。こんな幼馴染が私も欲しいと思ったものです。

 一方バーコフと言えば何と言っても『ランボー/怒りの脱出』のポドフスキー中佐なのでその裏の顔はギャングで、騒動は段々と大きくなっていくのです。やっぱりスタローンに収束していきます。


緊張と緩和

 エディ・マーフィーと言うと常にジョークばかり口にしている印象がありますが、若い頃はアクションでも強みを見せる俳優でした。

 本作でも冒頭で闇煙草の取り締まりで街を破壊しながらカーチェイスをかまし、終盤にはメイトランドの屋敷にタガートやローズウッドと一緒に殴り込んで盛大に銃撃戦をやっちゃいます。

 勿論ギャグもばっちりで、車のマフラーにバナナを詰め込むのは有名ですが、ジェニーのギャラリーの店員であるゲイのサージ(ブロンソン・ピンチョット)を気味悪がったり、ホテルで黒人差別だとゴネてスイートルームを確保したりと際どいギャグを入れてと終始絶好調です。

 その一方でアクセルはちょい悪ですが刑事としては優秀なので安定して事件の核心へも近づいて行き、安心感がある映画です。成程アカデミー賞にノミネートされる価値はあると感心させます。

BL的に解説


アクセル×マイキー
 この映画はつまるところアクセルの敵討ちの話です。親友を殺された男が腐りきったヤクザの元へ殴り込む。そう書けば健さんの映画と同じなのです。

 二人の再会は意外な物でした。アクセルがアパートに帰ると何者かが勝手に部屋に入り込んでいます。

 拳銃を手に部屋に突入するアクセル。そこには冷蔵庫を勝手に開けて中身を食べるマイキーの姿が。抱き合って再会を喜ぶ二人。もう新婚夫婦のような仲の良さです。

 そして半年前にマイキーが出所したと聞いてアクセルは「何故すぐ来ない」と露骨に嫌そうな顔をします。

 つまり、アクセルはマイキーなら出所の日にその足で自分に会いに来ると疑っていなかったのです。半端じゃありません。

 そしてマイキーはアクセルに債権の束を手土産に差し出します。出所を問われて口ごもるマイキーに察して「聞いて悪かった」などと言ってハグでごまかすアクセル。

 警官としての自覚が欠けています。『ロボコップ』の後輩だけあってホモコップです。もうマイキーの股間のオート9は暴発寸前です。

 そして二人でバーでビリヤードしながら再会を祝って飲みます。この酒はホモとか抜きで美味いことでしょう。

 そしてマイキーは昔アクセルと一緒に車泥棒をした思い出を語ります。マイキーはその結果少年院に入りましたが、マイキーはアクセルが共犯だった事を隠して一人で服役したのです。

 その理由を問われてマイキーの答えは何と「お前が好きだから」とぽつり。英語だと「I love you」と明言してますから議論の余地はありません。さすが弟が男娼だけの事はあります。

 この事から、アクセルとマイキーには肉体関係はなかった事が分かります。しかし、マイキーは間違いなく少年院で男を覚えた事でしょう。

 しかし、今や妨げるものは何もありません。二人は『ブルーオイスター』で二次会を挙行したに違いありません。そして肩を組んでアクセルの家に帰る二人。そこへ謎の男二人が現れ、債券の事でマイキーを射殺して去っていきます。

 アクセルはマイキーの仇を取るべく、トッド警部の首を突っ込んだらクビという脅しも聞かずに休暇のふりをしてビバリーヒルズに乗り込みます。これが愛でなくて何でしょうか。

 大体マイキーがそんな危険な代物を持ってアクセルを訪ねたのだって愛がないと説明できません。一緒にこれを持ってトロントにでも逃げようというわけです。

 愛の逃避行には失敗しましたが、アクセルは見事にマイキーの仇を取ってくれました。涅槃で待つマイキーは本望でしょう。

 それに、ジェニーがあんなに身体を張ってアクセルに協力したのだって、ジェニーはマイキーのの想いを知っていたからではないかと思えるのです。

 芸術家に同性愛者が有意に多いのはもはや常識ですが、ゲイの従業員を使うくらいなのでジェニーもそんな事は先刻承知、ゲイの機微には明るいのです。友達の恋路を応援するいい女です。

 一方、オネエのサージを気持ち悪がるところからアクセルのセクシャリティが読み取れます。つまり、アクセルは警官になったくらいなのでマッチョがお好みというわけです。逞しい男同士が激しくぶつかり合う。それがアクセルのセックスなのです。

 凄くいい女のジェニーに幼馴染という大きなアドバンテージがありながらちょっとセクハラをかます程度なのもアクセルのガタイ専説を裏付けます。

 そして強引にも花屋のふりをしてメイトランドの元に乗り込みます。明らかに無謀です。案の定子分につまみ出されて警察のお世話になってしまうのです。

 愛の前に持ち前のクールな思考力を失っていた証拠です。アクセルの頭の中にはもはやマイキーの事しかないのです。

 そしてアクセルは最後はジェニーを人質に取ったメイトランドを無事討ち果たし(ボゴミルが美味しい所を持って行きましたが)、本懐を遂げて万々歳となります。最後に勝ったのは愛であり、この映画は実は純愛ラブストーリーなのです。


トッド×アクセル

 アクセルは非常に有能ではありますが前述の通り検挙率も被害額もずぬけて高い石原軍団スタイルなので上司にとっては扱いにくい存在です。

 たかが闇煙草の摘発にトラックで街を破壊しながらのカーチェイスです。なんならデトロイトの治安が悪いのはアクセルが警察予算を圧迫してるからかもしれません。

 しかし、アクセルのワイルドな捜査スタイルは同僚達には人気があり、トッド警部以外は皆アクセルの無茶を楽しんでいます。

 のっけから「どうして俺の許可もなしにおとり捜査をやった」と怒るのがポイントです。

 百万ドル単位になりそうな被害の事よりも先にこの一言。実はトッド刑事が一番アクセルを可愛く思っているのです。

 俺のアクセルのヤンチャぶりを愛しつつも、俺のアクセルが言う事を聞いてくれないという尊い苦悩がトッド警部の心中にはあるのです。

 「他所の管区でやってくれ」という言葉も意味深です。アクセルもまたなんだかんだトッドの事を深く尊敬しており、アクセルもトッドのお説教は素直に聞きます。

 転属など有り得ないのをトッドもアクセルもお互い知っているのです。ようはそういうプレイです。

 油を搾られて「もうひとかけらの糞も残ってねえ」という表現もホモです。アメリカンポリスをこよなく愛する水野先生いう所の入り口の話です。いやあ、映画って本当に素晴らしいもんですね。

 そして唯一アクセルの捜査に苦言を呈していた同僚のジェフリーが「だから言ったろ」と口を挟むとトッドは凄く怒ります。ここにも怪しい関係が見て取れます。

 ジェフリーもまたトッドを愛しているのです。自分だけを見て欲しいのにトッドはアクセルに夢中で面白くないのです。しかし、トッドの返事は「余計な口を挟むな」でした。この愛のシーソーゲームはジェフリーがシーソーから放り出されて完全KOです。

 そしてトッドは「お前は優秀で将来性もある」と持ち上げつつ「次おとり捜査をしたらクビ」とジャック・モリスのスプリットのような落差で言葉のSMをかまして説教を結びます。こんなセリフはアクセルへの愛無くして出ません。

 愛するトッド警部なればこそお説教も素直に聞いていたアクセルですが、「糞ならまた出ますよ」と余計な事を言って「舐めた口をきくな」と怒られてしまいます。

 何をいわんやです。二人はお互いの入り口を舐め舐めする仲なのです。そしてその愛はシリーズを追うごとに深まり、『3』でピークに達するのですが、これについては別の機会に譲ります。

 マイキーの射殺事件の後もトッドは捜査より先に殴られた傷の手当てをして来いと指示します。しかし、それを聞くアクセルではありません。

 そしてアクセルを捜査から外します。身内の事件は捜査させないのは警察の基本ですが、ここには明らかにトッドのホモのジェラシーが覗いています。

 俺のアクセルが昔の男の為にヤンホモ化して暴走するとそれこそ殉職しかねません。それはトッドには耐えられない事です。

 そしてその警告を聞かずにビバリーヒルズへ乗り込んだことをボゴミル警部補に知らされ、「戻るのを歓迎しない」とジェラシーを爆発させます。ついでに非常に優秀であると特に必要のない自慢を添えるのを忘れないのが二人の爛れた関係を物語ります。

 最後はボゴミル警部補に取りなしてもらい、アクセルは無事にデトロイト市警への復職を果たします。デトロイトに帰った最初の夜は燃えた事でしょう。しかし、シリーズを通してみれば二人の関係はまだ序章に過ぎないのです。

メイトランドホモ説
 マイキーはジェニーの口利きでメイトランドに倉庫番として雇ってもらい、債権を盗んで殺されたわけですが、ここに謎があります。

 何故メイトランドはマイキーをそんな役目に就けたのかということです。しかし、それはBL的に読み取れば明白です。マイキーは尻を差し出したのです。

 権力者に取り入るには身体を差し出すのが一番です。そうやってマイキーは身体は売っても心は売らないスタンスでアクセルの元へ走ったのです。

 しかし、嫉妬に狂ったメイトランドはマイキーを探し出して消します。プロの流儀と称してアクセルを殺さなかったのは完全な失敗であり、彼の男としての器量が知れます。愛する男を殺された男がいかに危険かは語るまでもありません。

 大体表向きの仕事がアートディーラーなのもホモ臭い話です。世界的な大物らしいので、彼の元へ数多のゲイ術家が尻を向けて訪ねて来るのは明白です。画商と画家がデキるのは本当によくある話ですから。

 アクセルがパーティーに乗り込んだ時の手口がモロです。なんと男娼のふりをして性病になったから伝えたいと言って乗り込んでいくのです。

 それで受付が素直に通してしまうあたり、本当にメイトランドがホモである事が街の名士の間では公然の秘密になっているのに違いありません。

 エディ・マーフィーのカマホモ芝居も見事です。本物は本物を知るとはこういう事を言うのでしょう。

 第一、メイトランドがノンケだとすればこの映画は話が変わってしまいます。ジェニーの存在です。

 ジェニーはメイトランドの後押しでギャラリーを任せてもらっているわけですが、これがもしパパから愛人へのプレゼントだとすれば、その事実がスルーされるのはあり得ないでしょう。むしろ、サージがメイトランドの愛人なのです。

 いずれにしても、男同士の愛はゴッホの絵よりも貴重で尊いのを見抜けなかったのがメイトランドの死因であったわけです。


タガート×ローズウッド
 腑抜け揃いのビバリーヒルズ市警の中で一番男気を残していたのが他ならぬタガートでした。

 規則にうるさいのを承知でヤンホモ気味に暴走するアクセルをぶん殴り、ボゴミル警部補に怒られてしまいます。

 その姿を見て複雑そうな顔のローズウッドをご覧ください。これは主君を気遣う小姓の目です。

 どこか女性的な佇まいもそうだとすれば説明が付きます。ビバリーヒルズはさぞかしゲイが多いでしょうから。

 ローズウッドはそういう警官本来のマッチョさを忘れないタガートが好きなのです。そして、そういうマッチョさを自らも欲しているのが後の行動からも明らかです。

 アクセルはこのカップルが保釈後も尾行しているのをたちまち見抜き、ルームサービスを届けさせて精神攻撃を食らわせます。

 バレたのに驚くローズウッドですが、タガートは「お前の運転のせいだ」と嫌味を言います。終始ローズウッドの未熟さにタガートは振り回されるわけですが、タガートもなんだかんだこのイケメンを仕込むのがたまらなく楽しいのです。

 そして、ルームサービスに気を取られている隙にアクセルは二人の車のマフラーにバナナを詰め込み、車をエンストさせて尾行を阻止します。

 映画史に残るこの名シーンもなんだか意味深です。オレンジでもいいはずなのにあえてバナナですから。

 当然二人は署でお目玉を食らいます。ローズウッドなど「バナナ対策」と称してバナナを使った鼻眼鏡をプレゼントされる陰湿な攻撃を受けますが、タガートは「笑ってろ」と優しくローズウッドを励まします。

 二人が特別な関係にある事がこのやり取りからも見て取れます。庇ってもらったローズウッドの股間のバナナはもう熟れ切り、尻のマフラーは不穏なオイルを垂らし始めています。

 そして張り込みでローズウッドはアメリカ人の腹の中には大量の脂肪が消化されずに残っているという意味深な雑誌記事を読んで時間を潰します。

 その他ローズウッドはタガートが肉ばかり食べる事やコーヒーの飲み過ぎを咎め、まさに新妻です。

 そこへアクセルが戻って来て立場上アクセルから離れるわけにいかない二人を伴ってストリップバーへと繰り出します。

 踊るお姉ちゃんに興味津々のローズウッドと比べてタガートはお姉ちゃんにモテてるのに嫌そうです。ゲイは女にモテるというのは本当なのです。

 アクセルは既にメイトランドの麻薬密輸を感づいており、自分を消しに来た刺客の存在にもいち早く気付きます。

 そうしてアクセルとタガートは見事銃を持って襲ってきた刺客を撃退し、お互いの実力を認めて次作以降への伏線を作ります。

 その後先走ったのはローズウッドでした。アクセルの捜査に首を突っ込み、銃撃戦なんてやっちゃって大興奮です。

 そして三人仲良くメイトランドの屋敷に殴り込みをかまします。腑抜けのビバリーヒルズ市警に居ては味わえないアクセルのデトロイト仕込みのハードプレイにメロメロのローズウッドが止められないと知るや、タガートもショットガンを持って参戦しちゃうのが萌えポイントです。刑事たるものやはりドンパチがしたいのです。

 この殴り込みでの二人が実にホモ臭くいい味を出しています。既にオッサンのタガートが無理をして塀を上ろうとするのをローズウッドが助けたり、ローズウッドが銃撃戦で無茶してタガートに怒られたりと完全に夫婦です。

 挙句ローズウッドは自分たちが『明日に向かって撃て』のようだと言い出します。レッドフォードとニューマンは殺される側なのでタガートはお怒りです。そして、あの映画は議論の余地なきホモ映画です。こんな映画を作る人が知らないはずがないでしょう。つまりはそういう事なのです。

 二人はシリーズ通してこんな感じで夫婦生活を続けるのです。段々深い仲になっていくので必見です。

 そしてビバリーヒルズを去るアクセルはホテルのローブを買い取って二人にプレゼントします。これ着て二人で楽しめというメッセージです。

 そして見送りを命じられた二人をアクセルが飲みに誘って映画が終わります。「あんたらにぴったりの店」だそうです。勿論ブルーオイスターです。今夜はフィジカルなのです。

お勧めの映画


 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します

『日本侠客伝』(★★★)(実は大体同じ話)

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