見出し画像

仕事と結婚とお母さんと

今の仕事を始める前は身分上は大学生だった。
神戸の某私立女子大教育学部に在籍。
小学校と特別支援学校の教員免許取得のために勉強に励み、学費と生活費を稼ぐために毎日仕事に行った。

勉強と仕事の両立ができなくなっていた私は、
留年が決定してから直ぐに中退した。
4年生2月の話だ。
教育実習も終わっているし、不足単位だって少ない。あと1年通えば卒業できる。
しかし、私は早く社会人になってお金を稼ぎたかった。お金の心配をしながら勉強をするのが私には酷だった。
もうこれ以上耐えられなかった。

母子家庭で、物心つく頃からお金の無さに苦労した。思春期の多感な時期だって、それで嫌な思いばかりした。
勉強はしたい。が、先に社会人になって稼いでお金貯めてそれでもしたければしたらいい。
そう思って辞めた。
やっと肩の荷がおりた気がした。

大学を辞め、神戸で営業職に就職し、その後に姫路に戻ってきた。

今の仕事は、主に異性を対象にするサービス業だ。
これも、営業職のひとつなので、毎日「売上」という名の数字が出る。誰がどれだけ売り上げて、順位はどこなのか。キャスト全員の成績が開示されるシビアな世界。

学歴も捨て、神戸でも仕事が上手くいかなかった。そんな自分が自分への責任をとるチャンスはここしか残っていない。
この世界に飛び込んだあの夜から、私は常にそう思いながら仕事している。


女手一つで姉妹を育てた母は、偉大だった。
父からの養育費はとうに貰っていない。
お金に苦労したのは、娘よりも実は母の方である。

そんな母の教えは、私たち姉妹を女の立場が不利な世の中でも、男手無しでも自立して生きていけるようにというものだった。
その手っ取り早い手段は、学歴でものを言わせること。学歴社会になりつつある日本は、就職するのに高卒<大卒の企業が増えている。
学歴なら性別で有利不利はほぼない。
だから母は、私に大卒資格を得ることを望んだし、公務員という安定を望んだ。不安定な生活を強いられてきた家庭だったからこそ、娘には安定した人生を送って欲しいと切に願ったことだろう。

そんな母の教えとは真逆を、今の私は歩いている。しかももう20代半ばに入るのに。
子育ての終わった母が、まだ子の心配をしている。
私も歳をとるが、同時に母だって歳を取り若くない。もう7年もしたら母は還暦を迎える。母を安心させるのが、私の使命だと思う。それが親孝行にも繋がるはずだ。

では、私の母への恩返しとはなんだろうか。
恩返しといえば、結婚して孫の顔を見せることが定番なように思える。
しかし、女ひとりで自立することが教育方針の母への恩返しとなると、結婚は二の次だろう。

そこで私は考えた。
自分で稼いだお金で苦労せずに1人で生活できるという自立が親孝行になるのではないかと。
嫁いで旦那の収入で生活することが親孝行になるわけではないと。
仕事で成功をおさめたら、母はやっと安心する。

うちは早死の家系だ。
祖父は50代になるかならないかで亡くなった、
祖母も60代で亡くなった。
だからといって、母が早死するとは限らないが、
それでももう還暦も間近だ。
病気もしやすくなる。今だって、病気してもおかしくない。
せめて、還暦を迎えるまでには成功せねばならない。

そんな思いを背負い、今私は仕事をしている。
恋愛にかまけていられない。
勉強と仕事の二足のわらじを履けなかった私が、恋愛(結婚)と仕事の二足のわらじを履けるわけがない。どちらも中途半端になる未来しか見えない。

どうしても異性対象のサービス業なので、色んなお客様から告白されることもプロポーズされることもしばしばある。それくらい、私のことを好いて飲みに来てくださるのはとてもありがたいことだ。
それでも私ははっきりとお断りしている。
それは、その方が嫌いだとか歳が離れているからとかではない。先に述べたように、私には、それよりも優先すべきことがあるからだ。
お断りする際は、断るだけでなく、恩返しの話も踏まえて全ての理由を述べている。
私が結婚するのは、自立した後だ。

結婚は"今じゃない"

いつになるかは分からない。
母の還暦までに親孝行を達成できると仮定すると、最長7年後の結婚だろう。
もし結婚するなら、そこまで私を応援してくれる、本当に私の事が大好きな方としたい。
長い道のりになるだろうけれど、暖かく見守ってくれるファンと共にすごしたい。

まずは、店で1番の売上をあげなくては。
1番になるためには、私の売上に桁をひとつ足さなくてはならない。
1番になれば、それを続けていかなくてはいけない。
そこでやっと、自分で稼いだお金で不自由しなくなるだろう。
不器用な私だから、すぐには結果が出ないことくらいわかっている。
私の大好きなお客様は、こんな私を長く愛し、見守っててくれるだろうか。
それもこれも、全て"自分次第"である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?