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26歳の女がオナラと同時に出しちゃって、彼女と結婚しようと考えた時の話

その日、私は油断していた。
彼女は夜勤で、家には私ひとり。
なんてことはない、誰にも何にも遠慮せずオナラをした。
私のオナラを止めるモノはこの世界のどこにもいない、私でさえも。
無意識でオナラをぶっ放した。

オナラをした後に分かったことだが、それはただのオナラではなかった。
尻に感じる暖かい違和感。出た、これ完全にオナラと同時に出た。

確信した瞬間にトイレに駆け込み、パンツを確認すると、
完璧に出ていた。
26歳になったばかりの夜、わたしは茶色のやつをオナラと同時に出した。

パンツを洗いながら、不甲斐なさがこみ上げる。
なぜ普通のオナラと危険なオナラを区別することが出来なかったのか?
この辛さを誰かと共有したい。しかしそんな話、この世の誰に話できよう。きっとうんこを見るような目で見られるだけだろう。
親に言えば泣く。

一晩経って朝方、彼女が帰ってきた。
「おかえり」の代わりに「昨日うんち漏らした」とカミングアウトする私。

「ただいま」の代わりに「誰とア〇ルセックスしたの!?」とあらぬ疑いをかける彼女。
鼻をくんくんならし、「なんか部屋がうんこくさい!」と騒ぎ始める。
いやいや、昨日みじめにも一人でパンツを洗い、消臭剤をかけまくったのだから、めちゃくちゃ気のせいだと思うよ。

うんこの臭いがする!とひと騒ぎしたあと、彼女は私の隣に座り、
のび太を温かく見守ってやってるドラえもんのような目で、
「私はね、いつもオナラには気を付けてるんだよ」と自分のオナラ語りを
し始めた。


「オナラをする前には、必ずそれが出るやつか出ないやつか確認すること!」「おならをするときは、穴とお腹の具合に細心の注意を払って判断するべし」

オナラを語る彼女の眼はどんどんと真剣になり、言葉も雄弁で熱がこもる。便だけに。
私はさらに自分のオナラへの意識の低さを痛感させられ、
彼女のオナラへの意識の高さに驚嘆させられた。

こんなにオナラに対して意識が高い彼女なんてそうそういない。
しかも、私が出しちゃったことに、一切の笑いもなく真剣にオナラとうんちの関係について熱く語ってくれる。
「もうこの人と結婚するしかない」と心に決めた。
そして、こんなに意識が高いということは、きっと彼女もオナラと同時に
出してしまったことがあるんだろう。
そう思いつつも言葉にできない、窓から吹く秋風が気持ちいい朝だった。

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