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ライティングプロセスをモデルにしてみた

おおつかあぐり

先週、とある勉強会で「書けるようになる」ということについてお話をしました。参加者がデザイナーやディレクター、カスタマーサービスと多岐に渡っていたこともあり、比較的抽象度の高い内容を用意する必要がありました。

ざっくり言うと、「”書ける”というスキルは、ただアウトプットとして作文ができるということではなく、コミュニケーションの軸となる「意図」を明確にするための観察や思考を重ねたうえで、その意図が受け手に伝わる言語化ができるということ」なんですよ〜という内容でした。

その中で、ライティングプロセスをモデル化した図を紹介しました。それが、この図。今回はこの図にまつわるお話です。

aguringoが考えたライティングプロセスのモデル図

勉強会のスライドで使用した図には、横軸と縦軸は書いていませんでしたが、改めて加えました。

この図では、

  • 「書きあげる」までのプロセスを5つの段階に分解

  • その過程の思考の発散と収束のイメージを図示

しています。

最初に断っておくと、これはイギリスのデザインカウンシルが提唱したデザインプロセスのモデル、「ダブル・ダイヤモンド」(リンク先は発表後、時を経たダブル・ダイヤモンドに関する記事)に酷似しています。

ダブル・ダイヤモンドのモデル図

というのも、勉強会の事前打ち合わせで運営陣と内容をブラッシュアップする過程で、「これってダブル・ダイヤモンドと言ってることは変わらないんですよ」と口にして、生まれたものだからです。勉強会参加予定リストにデザイナーが多くいたので、ダブル・ダイヤモンドが共通言語として使えるかも!というひらめきました。

再掲

このモデルで示した、ライティングプロセスにおけるポイントは、

  1. 意図を明確にすることに重点を置いている

  2. 具体と抽象を意識しながら、行き来する

という部分です。この2つのポイントが、書けるようになるために欠かせない要素なので、説明します。

コミュニケーションで達成したい“意図”を明確にする

ライティングは、相手をなんらかの状態にしたいというコミュニケーションの目的を達成するための手段のひとつです。マーケティングにおけるコピーライティングでも、アプリケーションやサービスのUIテキスト(マイクロコピー)でも、本質的な目的は同じです。

これを達成したい

ライティングスキルを向上するコツのひとつが、このコミュニケーションで何を達成したいかを、書くたびに意識することです。意識するのは、ただの願望では足りません。

「意図を明確にする」とは、”図”の字が表す通り、どうやって相手と自分が届ける主題の距離を近づけるかを計画することとも言いかえられるでしょう。

そのための、1つ目のダイヤモンドのプロセス(1.集める・調べる、2.整理する)です。1つ目のダイヤは、いわゆる”分析”と呼ばれるものと実態は変わりません。分析のフレームワークはたくさんあるので、利用しても構いません。

ただ、このとき、意図を明確にするという目的を見失わないよう気をつけましょう。分析の実施が目的化してしまったり、テンプレートを埋めることで満足してしまわないように。

具体と抽象の行き来が、なぜ大事なのか

私の考える「書く力」とは、ひとつひとつの個別具体の事柄を整理し、関係性や構造として、見立てて言語化することです。もちろん、アウトプットとしての文章が具体的な表現(例示やメタファー)になることもありますが、そもそも言葉自体の本質は抽象化です。なので、2つ目のダイヤモンドの形に収束していくことは自然だと考えます。

ここで大事なのは、具体と抽象を行き来しているということです。

思考プロセスとして、具体と抽象を行ったり来たりすること(※1)を、私はとても大切にしています。やや感覚的ですが、全体を見る”鳥の目”と詳細を見る”虫の目”を意識した視座と視野の切り替えを心がけています。なぜかというと、視座を切り替えていくと、コミュニケーションを隔てるギャップを見つけやすくなるからです。

そもそも抽象化して説明することは、受け手がメンタルモデルを使った認知をしやすい状態(=わかった)を作るという側面をもちます。しかし、度が過ぎた抽象論では「当たり前なことを言っている」という印象に終始してしまい、意図を伝えることは叶いません。

そこで書き上げる文章自体には、ある程度の具体性を持たせる必要があります。このときにどんな具体性を持たせるかの判断軸として効いてくるのが、相手と自分、または世の中とのギャップを測る物差しです。

ライティングがうまい人は、使おうとしている言葉や、相手が使っている言葉の規定する範囲に敏感です。言語感覚があるとはこういうことを言います。ボキャブラリーの多彩さよりもこちらの方がずっと大切です。

自分の書いた言葉と世の中のギャップを意識しながら、文章に具体性を持たせていくことができると、相手に届く文章になっていきます。

先日書いたライティングガイドの作り方に関するnoteでも、「SmartHR Design Systemは私たちの日々の実践(具体)と理論(抽象)の往復からできている」ということと、「再現性の高いガイドラインは具体的なものだ」と書いたのですが、ここまで説明した話はこの2つと同じです。

偶然にも、これまで積み上げてきたことが結実した感

私はUXライターになって約2年なのですが、〇〇ライターという肩書きになったのは、実は初めてです(極まれに「コピーライター」だったことも)。とは言え、編集者時代も、コンテンツディレクター時代も、原稿はたくさん書いてきました。

日々開発をしていると、UXライターがというよりも、自分が顧客に提供できる価値とそれに必要なスキルの獲得を意識することはあるのですが、最近はUXライターの採用をしていることもあって、ライターという肩書きの見られ方について考えさせられることがあります。

そうした背景もあり、勉強会で話す機会を得たことをキッカケに、偶然の産物ではありましたが、自分が長年キャリアを重ねて大切にしてきたことを、ひとつのモデル図として表せたことが結構うれしいです。

ここでは、5つのプロセスごとの詳細の説明はできてませんが、最後に、勉強会で使用したスライドも置いておきますね。

※1.なお、具体と抽象の話については、私がするよりも『具体と抽象』という本を読んでいただくほうが早いので、そちらをおすすめします。とっても読みやすい本です。

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おおつかあぐり
出版業界からデジタルマーケティング業界を経て、SaaS企業でライティングスキルを活かして働いています。 雑誌編集者として過ごした時間が占める割合は減る一方だけど、カスタマーエクスペリエンスを意識したアウトプットの基盤になっているのは、編集者としてのスキルです。