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01:死刑にいたる病/櫛木理宇


好きだ、この連続殺人鬼。

鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也(かけいまさや)に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和(はいむらやまと)からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」地域で人気のあるパン屋の元店主にして、自分のよき理解者であった大和に頼まれ、事件の再調査を始めた雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていき……一つ一つの選択が明らかにしていく残酷な真実とは。

ひたすらに面白い作品だった。
冒頭から引き込まれるのはFラン大学で鬱屈とした日々を過ごす筧井雅也くんがすごく身近に感じられたからかもしれない。

この筧井雅也くんが事件を調べていくうちにのめり込んでいく様、正直一番ヒヤヒヤした。取り返しのつかないことをしてしまうのではないか、もう戻れない一線を越えてしまうのではないか、、、そんな気持ちで読み進めた。

筧井雅也くんがこうなったのは明らかにこの作品に出てくる榛村大和という連続殺人鬼の影響なのだけれど、榛村大和、果てしなく沼が深い。なんだろう、人の心の弱い部分とか僅かな隙間に入り込むのが上手すぎるというか、単純に口が達者だとかそういうんじゃない気がする。彼には何が見えてるんだろうな。作中でもみんなから好かれる、みんな彼を好きになるっていうキャラクターなんだけど、本当にそうだと思った。文面から伝わる榛村大和のイメージ、かなり解像度高くてビビる。ハマってはいけない人にハマる感覚が小説で味わえるとは思わなかった。

全体的に暗くて残酷で痛々しいシーンもあるけれど、ずっと寂しさみたいな感情が付き纏う。

映画はまた観て無いので機会があったら観たいな。


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