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三鷹歌農書 1581-1600

試し採り間引き菜育ちすぎたるを集め引き出す味を思案す
三鷹歌農書(一五八一)
蒸しあがりバーニャカウダとなるご縁野菜たちどれもこれもほっこり
三鷹歌農書(一五八ニ)
ヤマノイモの蔓が支柱を越えゆけばずり下ろし伸びなほしてもらふ
三鷹歌農書(一五八三)
枝に沿ひグーズベリーの連ねゆく初夏の緑色燃料タンク
三鷹歌農書(一五八四)
ロールパンちぎりて作るカマクラに薔薇ジャムの濃き淡きを並ぶ
三鷹歌農書(一五八五)
異空間に向かふ宇宙船(シップ)の噴火炎アーティチョークの花あかるみぬ
三鷹歌農書(一五八六)
山伏の湯立神楽の鬼面を背負ひテントウムシひとつ行く
三鷹歌農書(一五八七)
葉表を天道虫ふたつ凱旋すアブラムシもう慈姑に居らず
三鷹歌農書(一五八八)
牡蠣殻をハーブの庭に並べゆく土壌の秘むる海の思ひ出
三鷹歌農書(一五八九)
うす雲とあそべる月よいつまでも渚に残る白き貝殻
三鷹歌農書 (一五九○)
カレンデュラのカメムシに手を伸ばせどもわが靴に似てをれば弾かず
三鷹歌農書(一五九一)
解散ののちも残りてバラの花父の日なれば探す子のゐて
三鷹歌農書(一五九ニ)
メロンのアレが実を着けたよと示せるは「かわい〜ナ」などと言はぬをぢさん
三鷹歌農書(一五九三)
うつくしき売れ残りラミーカミキリが苗の葉に一つゐたるを購ひぬ
三鷹歌農書(一五九四)
万福寺人参の畝作る子のトンボ捌きに見惚れてしまふ
三鷹歌農書(一五九五)
できたての畝のふかふか踏みつける裸足の子らの裸足の気もち
三鷹歌農書(一五九六)
畝作り楽しむ子らは完成ののちを踏んづけ壊してはまた
三鷹歌農書(一五九七)
見て触れて切りとつて手に重さ知る子どもら咲(ゑ)ませ瓜の役割
三鷹歌農書(一五九八)
病み苗を除けばブドウクロバスカシ逃げ出たり草に捉まりてをり
三鷹歌農書(一五九九)
風生まれ雨来る気配落とさるる前に赤き実攫つてやりぬ
三鷹歌農書(一六○○)


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