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三鷹歌農書 1641-1660

ミツバチが花粉団子になりながらマロウに溺れ飽くを待ちをり
三鷹歌農書(一六四一)
兄妹(あにいもと)先の世如何に手のうへにラズベリー一つハナムグリ一つ
三鷹歌農書(一六四ニ)
花潜(ハナムグリ)がフンコロガシにベリー一つ与ふれば頭からのめり込む
三鷹歌農書(一六四三)
遭遇に戸惑ふはわれのみならず双帯緑虎天牛(フタオビミドリトラカミキリ)も
三鷹歌農書(一六四四)
古代魚の鱗の萼をうちひらきアーティチョークは外界(げくわい)に蕊を
三鷹歌農書(一六四五)
トロ火からアーティチョークは一息に強火へ花の鋳物のコンロ
三鷹歌農書(一六四六)
放つべき花粉はなちて踊りだすアーティチョークの花の六調
三鷹歌農書(一六四七)
UFOを作るズッキーニもあるぞ憂ふるならばみどりを植ゑよ
三鷹歌農書(一六四八)
水無月のアブラナ科たち根菜を抜けば何れも野武士面(づら)なり
三鷹歌農書(一六四九)
ひび割れに美を見出せる伊賀焼の水指はわが蕪に似たるも
三鷹歌農書(一六五○)
聖獣の忿怒の舌の穂の先をアマランサス夏に突き出さんとす
三鷹歌農書(一六五一)
太陽と遊べる盾の勢ぞろひ真緑の葉をクワイ並べて
三鷹歌農書(一六五二)
タンポポは踏まるる度に杭と化し直根ふかく地球の芯へ
三鷹歌農書(一六五三)
言ふまでもなき紫陽花に真白なる画竜点睛ムラサキ一花(いつくわ)
三鷹歌農書(一六五四)
日本のムラサキは白き花咲かす黴雨の季の地に映ゆる星々
三鷹歌農書(一六五五)
一連の雨に負けざりしムラサキの苗の一つは花芽頂く
三鷹歌農書(一六五六)
人肌を拒むと知ればムラサキの苗は土ごと包みて移す
三鷹歌農書(一六五七)
ムラサキの種の翡翠はまだ早く白銀(しろがね)は良してのひらに受く
三鷹歌農書(一六五八)
高らかに無音の喇叭カボチャ咲き萎んで鞴(ふいご)実を膨らます
三鷹歌農書(一六五九)
野菜好き増やさむと子に採らせたるヴェールペダルとグリーンパンツ
三鷹歌農書(一六六○)


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