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三鷹歌農書 241-260


傷もののイモと余り物のクリのモンブランには野花を添へて
三鷹歌農書 (ニ四一)
シモン1号九州137号も加はりてイモの今年の出席を取る
三鷹歌農書 (二四二)
取らざれば芽を茎を葉を隼人イモ土の表に出て伸ばすのみ
三鷹歌農書 (ニ四三)
伊賀焼の破れ袋が土中から出てきたり否(いな)コガネセンガン
三鷹歌農書 (ニ四四)
藁燃やし土壌のタタキ土室(つちむろ)に芋よしまらく安らぎたまへ
三鷹歌農書 (ニ四五)
空を恋ひ空に捧ぐる毱花の空に枯らされゆくを見てをり
三鷹歌農書 (ニ四六)
大皿と見紛ふ葉あり一枚もツルムラサキを採らずにおけば
三鷹歌農書 (ニ四七)
乳頭のごときがふいに現れて十一月の桑の実と知る
三鷹歌農書 (ニ四八)
ローゼルの枝を煮たてて枯山のごとくになれば布を泳がす
三鷹歌農書 (ニ四九)
じふいちぐわつになれどもなほもしろがねのゴーヤ実れる三鷹となりぬ
三鷹歌農書 (ニ五◯)
本当の名はgoldenrod(黄金の竿)なるにセイタカアワダチソウとか呼ばれ
三鷹歌農書 (ニ五一)
たまゆらの秋のかがよひ消ゆるまへにゴールデンロッドを布に移せり
三鷹歌農書 (ニ五ニ)
青空に浸し乾かすコットンのゴールデンロッドもて染めし布
三鷹歌農書 (ニ五三)
棚の上にわが地下足袋のあるかぎり薔薇と葡萄に喧嘩はさせぬ
三鷹歌農書 (ニ五四)
秋の気をゆるり透きとほらせながら蜻蛉の翅は角度を深む
三鷹歌農書 (ニ五五) 
モモノスケの赤き皮むきモモノスケの桃つぷりの良さに見惚るるばかり
三鷹歌農書 (ニ五六) 
うつくしく熟れしゴーヤの宮殿はタバコガの子のものとは知れど
三鷹歌農書 (ニ五七)
暖かし有り難しとや霜月もオクラの花がしつかりひらく
三鷹歌農書 (ニ五八)
片付けを終ヘて帰るさ入り口のマリアカラスと会釈を交はす
三鷹歌農書 (ニ五九)
オオマサリ茹であげ指に殻と実のぺりしほつこりぺしりほつこり
三鷹歌農書 (ニ六◯)


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