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三鷹歌農書 221-240


口かたくへの字に結びシカクマメ声漏らすがに蕾ほころぶ
三鷹歌農書 (ニニ一)
昃(ひかげ)れば降りし霜とも痣かとも葡萄紅葉が映すたましひ
三鷹歌農書 (ニニニ)
天辺に穴を空けられ逆さ吊りふた月を経て瓠(ふくべ)と成りぬ
三鷹歌農書 (ニニ三)
稜線を二つに割りてオクラの実土に届けと種整列す
三鷹歌農書 (ニニ四)
堂々と広げ感謝をされながら命絶たるる通路のレタス
三鷹歌農書 (ニニ五)
紋章のごとし一枚のみ紅きサツマイモの葉を目に入れにけり
三鷹歌農書 (ニニ六)
チャの花の黄金の蕊の雪崩るるに時の淀むをわが幸とせり
三鷹歌農書 (ニニ七)
ブロッコリの花蕾ひと粒一粒が雫宿してゐたる朝なり
三鷹歌農書 (ニニ八)
稲穂から朝のひかりがなだれこみ土に血の気の通ひてゆくを
三鷹歌農書 (ニニ九)
立ち続くる意志と支ふる根のあれば畝のオクラのコントラポスト
三鷹歌農書 (ニ三◯)
咲き継ぎて数増やしゆく万寿菊ツマグロヒョウモンも花の一つに
三鷹歌農書 (ニ三一)
散る夢こそ味はふべけれハチミツを金唐松のナムルに少し
三鷹歌農書  (ニ三ニ)
鶏が鳴く東(あづま)武蔵野厚物の兜まるごとおひたしにせり
三鷹歌農書(ニ三三)
紅葵の屑もて染むる布生地のいたるところに薔薇咲くと知れ
三鷹歌農書(ニ三四)
秋バラの驕りに怯むヘビウリのかかあ天下といふ言葉あり
三鷹歌農書(ニ三五)
愚直さを愛せ甘藷のしら絹の肌(はだへ)の秘むるむらさきの蜜
三鷹歌歌農書(二三六)
ゆびに摘みうりずん豆の花食めば空のあをさの甘さひろがる
三鷹歌農書 (ニ三七)
薔薇もまた花のみならず木枯らしにローズヒップの音符があそぶ
三鷹歌農書 (ニ三八)
天蛾(スズメガ)の頭の取れし抜け殻のやるべき事を遂げたるひかり
三鷹歌農書 (ニ三九)
稲に粟黍の稔りを竿に掛け仰ぎながらに送るしら月
三鷹歌農書 (ニ四◯)

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