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三鷹歌農書 1361-1380

ひむがしの果ての唐津にオフィーリア従者イスパハン連れて湯浴みす
三鷹歌農書(一三六一)
薔薇淹れし茶碗をならべ春雨の奏づる音を濡れながら聴く
三鷹歌農書(一三六ニ)
オフィーリア沈む茶碗に雨つぶの落ちてわうごんいろのさざなみ
三鷹歌農書(一三六三)
お湿りを天つ空から賜りぬ通り雨の矢根まで届けよ
三鷹歌農書(一三六四)
あたらしき畝と並んで鯉のぼり泳ぐを仰ぎまた鍬を打つ
三鷹歌農書(一三六五)
畝切つてトンボで慣らす黒ボク土のガトーショコラをあと三つほど
三鷹歌農書(一三六六)
壊せるもの壊してみたき少年に万力使はせ刀豆取りぬ
三鷹歌農書 (一三六七)
ナタ豆とムクナ豆もて子の描くアンパンマンは星座のやうな
三鷹歌農書(一三六八)
白浪のうねり黒地の巻物に畝ととのへて石灰を撒く
三鷹歌農書(一三六九)
デュシェス・ドゥ・モンテベローに潜りこむアオドウガネの尻のふさふさ
三鷹歌農書(一三七○)
葉の数を三、五、七と増やしつつムベは緑を開いて登る
三鷹歌農書(一三七一)
空中にラグビーボールらしきもの発生し太りゆくアケビの実
三鷹歌農書(一三七ニ)
草むらを並木に変へてゆくやうに条播きにせしダイコン間引く
三鷹歌農書(一三七三)
穿山甲(センザンコウ)シロアリ好みアーティチョーク油虫に好まれ丸まる鎧
三鷹歌農書(一三七四)
親友にしてライバルの顔合はせ土垂れとショウガ埋めゆく前に
三鷹歌農書(一三七五)
釣り糸の切れてしまふはどのあたりニンニクの芽を抜く恐る恐る
三鷹歌農書(一三七六)
白銀の根の髭張りて威嚇せるあまた玉ネギ両手にあふれ
三鷹歌農書(一三七七)
惑星の影に衛星生まれゆくをアーティチョークの側枝に見たり
三鷹歌農書(一三七八)
分蜂は古き仲間を半ば連れ古き女王が逃げ果(おほ)すこと
三鷹歌農書(一三七九)
新しき女王を無駄に生ませぬも蜂養ひの心得と知れ
三鷹歌農書(一三八○)


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