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三鷹歌農書 1621-1640

蓮の葉の包みを取りて蕊おほふ茶葉の湿りを指に確かむ
三鷹歌農書(一六ニ一)
大碗に蓮のくれなゐ褪せながら茶葉のみどりに甘みを与ふ
三鷹歌農書 (一六ニニ)
咲きひらくべきに花茶に供されし蓮の蕾のいのちいただく
三鷹歌農書(一六ニ三)
あられもなき花の姿を見届けぬ蓮茶三煎服したるのち
三鷹歌農書(一六ニ四)
零れ落ちたる者の生きざまサトイモの呉座押しのけて出てきたるあり
三鷹歌農書(一六ニ五)
岩割りてメタセコイアが飛び出すをオオマサリの発芽は見せてくれたり
三鷹歌農書(一六ニ六)
水無月の光に浮かれぽんぽんとシュンギクの花の打ち上げ花火
三鷹歌農書(一六ニ七)
小回りの利くわが手動ショベルカーお亀鋤簾(じょれん)を侮るなかれ
三鷹歌農書(一六ニ八)
UFO を産むにも先ずは受粉からズッキーニ雄花の槍を雌花に
三鷹歌農書(一六ニ九)
カレンデュラに登頂したる夜盗蛾の二齢幼虫を褒めてつかはす
三鷹歌農書(一六三○)
夜の闇に打ち開きたる大花火の消えゆくさまにアーティチョークは
三鷹歌農書(一六三一)
キズものをハナムグリから貰ひ受けビワの実染めにして枇杷に謝す
三鷹歌農書(一六三ニ)
ジャガイモの花の盛りを愛でながら摘みゆく芋よ早う太れと
三鷹歌農書(一六三三)
先駆けのグーズベリーが赤み帯ぶ梅雨前線北上すらむ
三鷹歌農書(一六三四)
日に向かひ踊り狂へる長き葉の玉蜀黍(コーン)の畝にわれも加はる
三鷹歌農書(一六三五)
チリチリの天パの次男おもはせてアーティチョークの花の散りざま
三鷹歌農書(一六三六)
ブルームーン昨夜の雨に打たれしを支ふれば指に香を移しけり
三鷹歌農書(一六三七)
ダンシャクの恰幅良きが地に出でてオカメジョレンの婿にどうかと
三鷹歌農書(一三六八)
手の甲にシャクトリムシをあそばせて疲れ見ゆれば葉に移しやる
三鷹歌農書(一六三九)
陽に透くるマロウの花の内がはにミツバチ花粉まみれの銀河
三鷹歌農書(一六四○)


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