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三鷹歌農書 1901-1920

スベリヒユは他の雑草の抑止力抜かずマルチにニンジンの畝
三鷹歌農書(一九○一)
駱駝の首のごときを伸ばしたる芋のレッドムーン月の砂漠ゆく夢
三鷹歌農書(一九○ニ)
レッドムーン掘り出し揚げて八ぐわつの月の明かりの固まりを食む
三鷹歌農書(一九○三)
熟れてゆく水彩画(ウォーターカラー)あをぞらにブドウの粒の色づき映えて
三鷹歌農書(一九○四)
蓮鉢に妙蓮ひとつ二つ咲き花の火口の噴きては崩る
三鷹歌農書(一九○五)
蓮三つひと日違ひに咲き始め孫と子と親四日目に散る
三鷹歌農書(一九○六)
大粒の甘き葡萄にハナムグリ為り変らんとする凄まじさ 
三鷹歌農書(一九○七)
背伸びしてブドウの粒を摘み食ひ一つぶ分の青空ひろぐ
三鷹歌農書(一九○八)
着物脱ぎ捨てて髪の毛振り乱しトウモロコシ飛び出たるも見たり
三鷹歌農書(一九○九)
F1のキュウリ終はりてしまひたれど地這ひ胡瓜が貫禄を見す
三鷹歌農書(一九一○)
ブルーシートのプールの海を地引網引くやうに畑の土に飲ませつ
三鷹歌農書(一九一一)
うれしさう顔あからめて水を吸ふ日照りつづきの圃場の土よ
三鷹歌農書(一九一ニ)
帝国の版図極まりたる後の大玉トマトにハナムグリたち
三鷹歌農書(一九一三)
灯台の光放ちてゴマの花甘薯の海に赤ジソの波
三鷹歌農書(一九一四)
ゴマの花トランペットのたからかに音無く夏の圃場を統ぶる
三鷹歌農書(一九一五)
フライパンに空芯菜の空を抜きニンニク香るやはらかき骨
三鷹歌農書(一九一六)
妙蓮は撓みながらも盛んなり鉢の面(おもて)を覆ふ花びら
三鷹歌農書(一九一七)
三つ四つ茎のひとつに犇きて千弁蓮の妙蓮なほも
三鷹歌農書(一九一八)
押し合ひて押し出されたる妙蓮の花の一つは堕つる他なく
三鷹歌農書(一九一九)
白き血を茎から噴けり妙蓮の花の重さに耐へられざりき
三鷹歌農書(一九ニ○)


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