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真珠と模造品

真珠の模造品を見たことがある人はいるでしょうか?

模造品で有名なもので言うとマジョルカパール(スペインのマジョルカ島でドイツ人が製造を試みたのが起源という真珠の模造品)、国内流通量で大半を占めるものとして和泉市で作られているもの(明治時代にフランス人が持ち込んだ真珠の模造品(魚の魚鱗を使用したもの)が起源と言われている)があります。

これらは真珠とどう違うのかというと、真珠がアラゴナイト(霰石)の多結晶と有機質による層状構造を有する生体鉱物であるのに対し、模造品は一般的に貝殻、ガラス、プラスチック珠にパール塗料を複数回塗布したものになります。

「何だ、塗料を塗っているだけか」

そう思われる方もおられるかと思います。しかし、後述しますが、真珠の模造品は一見すると真珠と見分けを付けるのは非常に難しいと思います(蛍光X線等専用の器材や真珠と模造品の違いを知っているなら見分けがつくかと思いますが、予備知識なしに肉眼で見分けるのは意外と難しいです)。

という訳で、今回は『なぜ私は真珠好きなのに真珠の模造品も集めているか』という私の真珠好きの方向性に関する話を綴っていこうかと思います。

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          左:模造品 右:アコヤ真珠      


私が真珠の模造品を収集・観察する理由として、「そもそも真珠って何が模造品と違うんだろ」という事を自分自身が深く知りたいという考えから来ております。

人に真珠の良さを説明するとき、真珠と見間違う模造品を脇に置いても『真珠の方が良い!』とちゃんと自分なりの考えを持って言いたいというね(^^;)。

実際、真珠と見間違う模造品がある場合、外観のテリ(干渉色・光沢を総称した真珠に現れる光学現象の総称)及び比重に真珠と大差がない模造品よりも真珠の方が良いと説明できなくなりそうだなって(^^;)。

自分にとって真珠とはここが模造品より美しいと説明できないと、真珠の良さを『真珠』って名称以外で表現できなくなりそうだなと。

ぶっちゃけ真珠の模造品は綺麗です。日本だと明治にフランスから真珠の模造品の技術が伝来した訳ですが、そこからの積み重ねな訳なので、100年以上は技術が蓄積されております。
品質にもよりますが、パッと見だと見分けられないものもあります(昭和40年代に実際に貝殻を原玉に用いた模造品を真珠と見間違える事件がありました)。

実はこの記事のトップに使っている写真の中にも模造品がいくつか混じっております。ここで模造品があると言わなければ、模造品が混じっていると気付かない人もいたかもしれません。

模造品のレベルは上がっています。一見して真珠と見間違うなら、模造品より真珠の方が良いという理由って何でしょう?

それを知るために!真珠の構造や真珠の発色原因を知る事は重要だと思うのです。

私の場合は、真珠のどういった所が模造品より美しいのかを言葉で説明するには真珠の結晶構造、色素、金属元素等がどのように絡まり合い、色のグラデーションであったり、表面の光沢であったりが発現しているのか、そして、模造品の塗料の構成物質・光沢の原理を知っておいた方が良いと思ったのです。

真珠の何がどう美しいかを自分なりに判断できる材料が増えれば、模造品ではなく真珠を使う理由も増えます。

模造品を知り、真珠との違いを知り、真珠自体の美しさがどこにあるか自分なりに探し始めたら、真珠の世界は広がると思います。

「模造品だからダメ」「真珠だから良い」って訳じゃありません。
「真珠のここが好きだから、模造品じゃ満足できないんだ!」って言う納得があって欲しいのです!!

真珠に対する向き合い方や愛で方は人それぞれですが「こういうところが好き」と語り合える場が増えたらなーと思う次第です。

それでは、今回はこの辺りでお暇します。真珠について無駄に熱くなってしまう英虞屋を今後ともよろしくお願いいたします!

※補足ですが、模造品を手持ちの機材で判別する場合、①ブラックライトによる真珠との蛍光の違いを見る、②真珠との熱伝導率の違いを観察する等があります。比重で分かりそうなものですが、原玉に貝殻やガラスを使っている場合、違和感を感じ取るのは難しいかと思います。アクセサリー用の金具を留めるための穴の部分を見れるなら、その部分の奇妙さで模造品と判断できますが、その箇所を樹脂や金具等で塞がれている場合、そうはいきません。中古品等を購入される際に「うーん、この真珠っぽいの何か違和感ある・・・」と思ったら、蛍光の観察や熱伝導率を測る簡易な機材を使われると良いかもしれません。

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