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プラハがよかった話

(※2015年に書いた記事を加筆修正したよ)

プラハが大好きだ、というと何度も行ったことがあるような響きになってしまうけれど、実際に赴いたのはたったの2回。それも1度目はほんの一泊。そんなプラハを薄い情報とともに振り返っていく、だらだら旅行記。
がっつり観光情報を求める方はあまり参考にならないかもしれない。

チョコクロのすばらしさ


わたしのプラハ初体験は2014年の12月末のことで、当時はベルリンに留学中だった。友人3人とろくに下調べもせず、ベルリンからバスに4時間ほど雪道を揺られながらの弾丸旅行を敢行した。

そのときの一番の記憶としてはバスの停留所の売店でお札を崩すためだけに買ったチョコクロワッサンがバカみたいにおいしかったということ。

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なんかもう、クロワッサンなんだけどクロワッサンじゃない。フワッフワしていて、中はシットリしていて、ちょうど加熱してポワンと膨らんだマシュマロみたいに繊細な口当たりで、あたたかいデニッシュ生地ととろとろのチョコのハーモニーがたまらない夢のような逸品だった。

あんまりにもおいしかったので帰りにも同じ場所で買ったが、初めて食べた時ほどの感動はなく、というか別の種類買っちゃったんじゃない?っていうくらい味がフツーだった。今思うとたまたま焼きたての時間帯にうまいことあたっただけだったのだと思う。

初めて食べたときはおいしすぎて写真を撮ることすら忘れていたので上の写真は帰りに買ったフツーのチョコクロ。撮り方が雑。

1回目のプラハ旅行はチョコクロがアホみたいにおいしかったこと以外には時間の余裕があまりなく、事前に情報を十分に仕入れていなかったためか、そこまで印象に残っていない。強いて言えば、旧市庁舎のクリスマスマーケットがドイツよりもこぢんまりとしていて、ホットワインが黒糖梅酒並みに甘かったことくらい。むせた。おいしかったけど。

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ゲストハウスの窓から見えたクリスマスマーケットの風景。そうだこの宿が安いのにとても広くて快適だった。(ベッドルームとバストイレが2つずつ付いていた)

あとは兎にも角にもビールがやたらと安く、ドイツのそれよりもガツンとくる。のに程よい爽快感。すっかりチェコビールの虜になった。ピルスナーウルケル愛してる。

町並みも落ち着いていて、それなりに栄えているのに都会の喧噪感が薄い。おとぎの国みたい、という月並みの感想を持ちつつ、もっとビール飲みたかったなあという後悔が残ったのでヨーロッパ滞在中に絶対もう一回行こうと心に誓った旅であった。


VSプラハ~リベンジマッチ~


2回目のプラハは2015年3月末、春休みを利用してのことだった。
同行者は同じく日本から来ていたベルリンの大学の友人で、これまた彼女も一度プラハに行ったものの、日程的に十分に観光できなかったのでリベンジしたい、いやむしろ観光とかいいからうまいビールが飲みたいという意見の一致のもと4日間ほど滞在した。

今回もバスで4時間かけて、途中個人用シートモニターで揃ってラストサムライを鑑賞、二人して泣きながらプラハへ到着。なんとなくこれ以上がっかりしたくないという気持ちが勝ってチョコクロワッサンは買わなかった。一応友人にお勧めしたものの、彼女も買わなかった。

その日の夜は前回立ち寄ったレストランが良心的なお値段かつおいしいお肉を食べさせてくれたので同じところに行き、同じメニューを頼んだ。

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左:2014年12月 右:2015年3月

同じメニューを頼んだ……はずなのにあきらかにパワーアップしている。ポテトを筆頭に。コロコロしたのもポテト。もちもちしている。ころころでもちもちってかわいいね。お芋は最高。

キノコの濃厚なクリームソースと程よい固さの牛肉がとてもおいしい。チョコクロとちがってビギナーズラックでは終わらなかった。さすがは信頼と安心のお肉先輩。

多い多いといいながらなんだかんだで完食し、加えてビールをそれぞれパイントグラスを少なくとも4杯以上は飲んだ覚えがある。お代わりを頼むたびに笑顔が増えていく店員さん。お会計の後にニッコニコでキンキンに冷えた紫っぽい色のウォッカのショットをサービスしてくれた。帰り道はフラフラだけどポカポカだった。

Pushkin Restaurant -Husova 14, Prague, Czech Republic


ミュシャ巡り


2回目の旅の前にプラハの観光情報を収集する中で目に留まったのがアルフォンス・ミュシャの博物館。

ミュシャとは19世紀に活躍したアール・ヌーヴォーを代表する巨匠である。近年日本ではだいぶポピュラーになったとはいえ、ピンとこない人は多いと思う。わたしもその一人だった。でも耽美で華やかな作品は誰もが一度は目にしたことのあるように思う。

実は数年前に東京でミュシャ展が開かれたとき絵を観に行ったことがある。絵に関する知識も教養もへったくれも持ち合わせていないわたしは友人と「きれいだねえ」「すごいねえ」と繰り返しては首が痛くなるほど眺めていた。いろんな人に怒られるかもしれないが何も知らなくても眺めていられるくらいに美しい。そして愛しやすい。

完全に個人的な意見になってしまうが、ミュシャの絵はアニメっぽいキャッチーさがあって、だから日本人に人気なんじゃないかと思う。どのくらい人気かといえばミュシャ美術館のサイトが日本語に対応しているくらい。ちなみにドイツ人の友人はミュシャのことを知らなかった。

そんなこんなでミュシャ美術館に行って数年ぶりにミュシャの絵を見てきた。けれど館内は思ったより小さく、その割に人が多く、そして騒がしい。口コミで評価があまりよくなく、心の準備はできていたのだが、スタバかミュシャ美術館か、という程度にはにぎやかだった。そして館内撮影禁止だったので写真も撮れず。

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お土産にかったポストカードのような、しおりのようなものと、入場券。

お土産もTシャツとかあったが、絵はもちろん可愛いのに生地の色がものすごくビビットでドギツイ。なんだか惜しい。ちょくちょく残念なところがあるのは仕様なのだろうか。バナナマンのグッズデザインを見習え。

ミュシャ美術館
Muchovo Muzeum Kaunicky palacPanska 7110 00 Praha 1
開館時間:毎日午前10時~午後6時


すごすぎてよくわからないスラヴ叙事詩


やや遺恨の残る美術館だったが、しかしここで終わってしまわないのが我等が巨匠ミュシャである。

彼が18年もの歳月をかけて作り上げた「スラヴ叙事詩」という作品をご存知だろうか。(わたしは知らなかった)

スメタナの「我が祖国」(これは知ってる)、イラーセクの歴史小説(ほとんど知らない)に並び、スラヴの歴史を題材とする代表的な作品とのこと。

何坪?ってくらいの大きい絵が20点連なっており、一枚一枚スラヴ民族の歴史が描かれている。それもいつものポップな画風よりも写実的で、ミュシャの印象がガラッと変わるらしい。
この作品は今年の末までプラハで限定公開中なのだ。(※2015年時点の情報です)

もうこれは見るしかない。ミュシャ美術館から少し離れたヴェレトゥルジュニー宮殿というところで展示されている。宮殿とあっちゃあより期待も膨らむ。

路面電車に揺られて向かう。途中で乗ってきたドーベルマンが口輪をしていないという理由で運転手がめちゃくちゃ怒る。飼い主が口輪つけるまでの1分弱を運転手はしっかりと注視し、その間電車は停止し、そんなに犬嫌いなのかなあと悲しくなりながらわたしたちは黙視した。

そんなこんなで宮殿に到着。
「宮殿だよね……?」「なんか現代的だね……」
記憶しているわたしたち2人の第一声である。
いやな予感がした。だってこの宮殿、ものすごく近代的な建物なんだなあ。銀行と言われたら納得するくらいのシステマティックな佇まいよ。あんまりにも普通すぎて写真を撮ることすら忘れてしまった。

どこかの国で「蛾」と「蝶」を区別せずひとつの言葉で表すように、チェコ語では「宮殿」に「銀行」という意味も含まれているのかもしれない。

とりあえず中へ入ってみる。あんまり人がいない。不安になるが受付のおばちゃん2人がスラヴエピックならここよ、とやさしく迎えてくれた。館内はフラッシュを焚かなければ撮影OKとのこと。

いざ行かん、と展示室の大きな重い扉を開けるとそこは別世界だった。

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なんかもう、でかい。実家のリビングより広いんじゃないのってくらいでかい。

パノラマ撮影を駆使して頑張って撮ってはみたものの、写真ではやはりまったく迫力が伝わらない。まず画面にこの大きさの絵が収まりきらない。

ということでもう木を見て森を見ず作戦だ。そんな負けそうな作戦名ある?

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なんかこう、何かを祝福をする乙女たち(詳しくはわからない)

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爺やと物憂げな青年(たぶん聖書を持っている)

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聖人っぽい雰囲気の青年(なにかを持っている)

他にもたくさんあったが、これ以上無教養さを晒したくないのでここまでとする。でも本当にすごい迫力なので是非行ってみてほしい。いやな予感とかいってごめんなさいだ。あと調べれば解説はいくらでも出てくるのでそちらを読んでほしい。わたしも読むね。

噂によれば2017年に国立新美術館で全作品が展示されるとのことらしい(※現在は終了)が、きっと、いや確実にプラハで見た方が堪能できるはず。ものすごく空いてたから。
とかいいながらわたし自身が再来年美術館を混雑させる一因になるのだろうなあ。

Galerie hlavního města Prahy
NG-Prague, 170 00
開館時間:火〜日 10:00〜18:00
※現在は展示終了

チェコ在住の方の2019年の記事によると2020年7月モフスキー・クルムロフ城にて一般公開される模様。感染症予防の影響でずれているかもしれない。


ナイトクルーズはとりあえず行っとこ?


ミュシャ以外にもなんだかんだカレル橋だのプラハ城だの王道観光スポットをほどほどに堪能し、要所要所でビール休憩を挟み堪能した2回目のプラハであったが、何が一番よかったかといえばこれはもう断然ナイトクルーズ。

もともと予定には入れておらず、とはいってもミュシャとビール以外とりたてて目的もなく、宿泊先で予定を立てているときにたまたまパンフレットを見つけたのだった。

ジャズバンドの演奏もあり、ディナーもありの2時間ほどのクルーズで5000円弱というお安さ。これは行かねばと謎の使命感に駆られ、ネットで予約。

チケットとか発券するのかな、言葉わかんないな……と不安に思っていたが、チェコはエコフレンドリーな国らしく、メールがそのままチケット代わりになるとのことで前日予約でも気軽にできた。安心設計。

実は予約なしでも参加できるらしく、しかも出航30分前になると学生割があるようだった。しかし確実に席が空いているとは限らず、また席も選べないので事前予約をおすすめしたい。

時間通りに港へ向かい、予約のメールを見せ、船に乗るとウェルカムドリンクを渡される。まだまだ春とはいえない寒い季節だったので冷えた体に嬉しいホットワイン。あまくておいしかった。チェコの人はワインをあたためるときわりとがっつり甘くしがちなんだろうか。

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スパークリングワインがものすごくおいしかった。直前までたらふくビールを浴びていたので2人で飲みきれるかなあ、なんてかわいいこといってたのにばかみたいにすぐになくなった。

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おじさまたちの粋なジャズセッション。

窓の外には情緒溢れるプラハの夜景。そしておいしいごはんと素敵な演奏。もう五感を同時にフルに使って楽しめる。こんなお得な楽しみ方、他にあるなら教えてちょうだい。

クルーズの前に休憩がてら入ったお店で遅めのランチをしたのだが予想外に量が多く、またビールも進み、完全に満腹かつ酔っぱらいながらの参加だったのであまり写真が残っていない。けれどとても最高な夜だったことには違いなかった。

PRAGUE JASS BOAT
チェフーフ橋下
毎日 20:30〜


プラハを振り返って


昼も夜も、晴れも曇りも雨も似合う街、という印象だった。

カレル橋なんかはどんよりした空のなかの方がそのアンニュイな雰囲気を遺憾なく発揮してくれているような気がするし、雨が降ればそこらへんの小さい教会で雨宿りでもして、東欧の風を感じることができる。

実際に最終日前日の夜、雨に降られ、途方に暮れていたところを教会のでコンサートがあるから、とちょうどよく勧誘され、比較的安価で弦楽アンサンブルを聴くことができた。例に漏れず音楽にも精通していないが、それでも本場チェコで聴くスメタナはなんだか五臓六腑をぎゅんと鷲掴みにされるような迫力があった。

ヨーロッパ、というと物価が高いイメージだがチェコは東欧だからかそんなことはなく、金銭的にほどほどに余裕があればかっちり予定を組むよりもふらふらっと街を歩いてあえて勧誘しているお兄さんたちに身を任せてみるのもアリかもしれない(もちろんぼったくりには気をつけてほしい)。

あとなぜか至る所でタイ古式マッサージと角質を食べてくれるドクターフィッシュのお店を見かけたので石畳に疲れたら寄ってみるのもいいかもしれない。

とにかくビールがおいしく、わたしにはたまらなく居心地のいい街だった。この直後にウィーンにも行き、もちろんめちゃめちゃに楽しんだが、プラハの方が印象に残ってるね、と友人と意見が一致した。なんでだろうね。2回目でなんとなく気楽に回れたからかもしれないけど。本当に居心地のいい街でした。言葉わからないのに。

言葉わからないのに英語もしゃべれないのにごりごりにおすすめ商品を紹介してくれるキオスクのおばちゃん。同じく英語しゃべれないのにものすごく怪しい感じで騙そうとしてくる、駅で出会った兄ちゃん。いろんな人がいた。わたしの大好きな坊主もめちゃめちゃいた。あとエスカレーターがやたらと速かった。

ビールすきでミュシャすきでのんびりするのがすきで坊主がすきな方、プラハ、全力でおすすめです。また行きたいな。

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