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ふりかえり、おすすめのテンプレート

【ほぼ月刊】シンアジャマガジンvol.6として「ふりかえり」がテーマに挙がっていたので投稿したい。だってふりかえりが大好きだから。

【約3000文字、およそ6分で読み切れます】


はじめに

 ある日、チームがうまく機能していないという相談を受けた。「どういうこと?」と尋ねてみると、方向性が一致していない、チームに対する距離感が人によって大きく異なるなどが返ってきた。「具体的に起きた良くないことは?」には、「タスクが無駄に二重で処理されていた。同じことを別の担当者が重複して対応していた。そんなことがたびたびある」とのことで、「それなら来週時間を取るので今の状況をもう少し教えて」と返した。すると相手はまじめに「それまでに今の状況整理しておく」と言ってくれた。

  そこで、来週のいつにしようかとカレンダーを開いた時に、気が付いた。「ちょっと待てよ。今、私は相手の仕事ふやしてしまった」と。それどころか話を聞きながら、方向性を合わせるならインセプションデッキ、タスクの重複をふせぐならカンバンといたように解決策ばかり思い描いてしまっていた。

 「さっき状況整理させようとしたのは間違いだった。まずはフラットに一緒にふりかえりをしてみよう」急いで相手を追いかけて、ちょうど予定に空きがあったので30分のふりかえりを行ったところ「すっきりできた。気になっていたところのもやが晴れただけでなく、新しい気づきもあった。ふりかえりをするのは大事だね」


 相手の状況をヒアリングして提案を持っていくのも悪くないけれど、こちらの思い込みが入ってしまい、あたりはずれが出るので、答えは相手から引き出すようにしたい。コーチング寄りの発想だけれども、答えを持っているのは悩んでいる相手なので、こちらから決めつけるのではなく、引き出せるよう働きかけるのが良い方法だと改めて教えてくれた出来事だった。そんな時に、ふりかえりは強力だ。

おすすめのテンプレート

 では、ふりかえりはどう進めたらよいだろうか。有名な「ふりかえりカタログ」などを見てもらうと分かるのだが、ふりかえりに使えるテンプレートはたくさんある。用途によって使い分けるのはいいだろう。とはいえ、状況が見えていない時に使い分けするのは難しいため、一つおすすめのテンプレートをここで紹介する。

 おすすめのテンプレートそれは「アジャイルふりかえり(Agile Retrospective)」だ。

 ふりかえりに使える市販ソフトウェア*で一番上位に配置されているテンプレート。日本で有名なKPTと似たような構成で、それをよりクイックに改善へとつなげるようにしたものと捉えている。

* ふりかえりに使える市販ソフトウェア TeamRetro(https://www.teamretro.com/
80以上のふりかえりテンプレートにくわえて、チームの状況を確認できるダッシュボードなどを搭載している。

 

 - 「アジャイルふりかえり」の簡単な進め方は以下の通り

  1. うまくいっていることを付箋に書き出す。それらを口頭で共有する。

  2. うまくいっていないことを付箋に書き出す。それらを口頭で共有する。

  3. 上記1・2を見返して特に取り上げたいものに投票する。

  4. 最も多く得票した付箋に対して改善策を考えていく(うまくいっていることが選ばれた場合は、それを伸ばす方法を考える。うまくいっていないことが選ばれた場合は、それを解消する方法を考える)。

  5. 出てきた改善策に対して、実行しても良いと思うものに投票し、あらかじめ設定した基準(過半数以上の得票など)を満たしたものをAction Itemとして実際に実行する。

 - 「アジャイルふりかえり」のポイントとそこで期待される効果は以下の通り

  • うまくいっていることから始める → 前向きな姿勢で始められる。

  • 特に取り上げたいものは一つだけ選ぶ → 重要なものにフォーカスして時間を使える

  • 改善策は一つだけ実行する → 負担が大きくなりすぎない

  • 上記1、2の洗い出しから毎回スタートする → 改善効果を実感しやすくその時に最も重要な課題に向き合える(毎回、前回と同じ課題を取り扱いつづけると改善策を出すのが難しくなるとともに大きな効果が得られにくくなるし、状況は常に変化しているためすでにその課題は重要でなくなっていることもある)

書いているほど難しくはないのでぜひ試してみてほしい。

ふりかえり、その先に

なお、ふりかえりを何度か続けていると、まんねりしてくることが必ずある。そんなときは以下の対処法を試してみることをおすすめする。

  1. クイックに進行する。
    ふりかえりを短時間で終わらせられるとまんねり感が抑えられる場合がある。上で書いた「簡単な進め方」には「口頭で共有する」としたが、ふりかえりを繰り返して関係性ができあがったのであれば、対話を省略しても良いだろう。ブレインライティングよろしくスピーディーな展開が爽快感を生み、まんねりを打破してくれる。

  2. 別のフレームワークを利用する。
    いつもとはちがうフレームワークを使うだけで気分は変わるし、見えてくるものも変わってくる。

  3. 持ち込みテーマを確認する。
    つかっているフレームワークに当てはまらないテーマで話したいことがあるかもしれない。ストレートに「何か特別に議論したいテーマはないですか?」と聞いてみるのも良いだろう。

  4. 共有するだけでも効果があることを思い出す(思い出させる)。
    改善策が出なくても無理に新しいことをしなくても、うまくいっていることと、うまくいっていないことを共有するだけで効果はある。私は、ふりかえりを掃除と同じようなものだともとらえている。普段の生活を思い返すと、汚そうと思っていなくても、暮らしているだけでホコリはたまっていってしまう。だから掃除する。しなくても生きていけるんだけど、するとスッキリと健全に暮らしていけるもの。それが掃除。
    チーム活動の中でも、同じようにホコリはたまっていく。小さな違和感や、思い違いなどがホコリと言える。ふりかえりの場で、うまくいっていないことを話すことで、このホコリに気づき、改善策を見つけるまでいかなくても、共有するだけでスッキリすることは多くある。そして、そのホコリに埋まってしまって気づけなかった、うまくいっていることを発見することができる。しなくても生きていけるのだけど、するとスッキリと健全に暮らしていける、掃除のようなものがふりかえり。

  5. 次のステップへ移行する。
    まんねりしているのは簡単すぎるからかもしれない。もっと難しくやりがいのあることに取り組みたいサインであるかも。このケースでは「チームの生産性を10倍にするにはどうしたらいいか」などふりかえりで扱うテーマのハードルを上げてみると面白いだろう。

おわりに

ふりかえりは、どんな状態であっても改善に踏み出しやすくしてくれる使い勝手の良いプラクティスだ。集まって対話する時間は必要になるものの、違和感の残る状態でチームでの仕事を続けて、大きなしこりを作ってしまってから、それを除去するよりもずっと簡単。困ったときにはふりかえりをおすすめする。さらには定期的なふりかえりを習慣にできるともっと良い。

【ほぼ月刊】シンアジャマガジンvol.6として「ふりかえり」がテーマに挙がっていたので投稿した。だってふりかえりが大好きだから。


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