広報人講座 生活者はどう情報を選ぶのか? 自ら魅力を伝える
こんにちは。荒木洋二です。前回に続き、今回も「生活者は情報をどう選ぶのか?」について、解説します。
前回は、まず「生活者」とはそもそも何者なのか、ということについて解説しました。そして、生活者と組織人では、若干、情報をどう選ぶのかという基準が変わる可能性があることも触れました。
今回は2番目、「自ら魅力を伝える」です。早速、解説を進めましょう。今回の講座では、生活者を対象にした調査のうち、経済広報センターと広報戦略研究所が実施したデータを明らかにします。それぞれの調査の趣旨を簡潔に説明します。
・経済広報センター
生活者はいったい誰が発信する情報を信用するのか、ということに対する調査です。
・企業広報戦略研究所
生活者は企業のどんな活動・事実(ファクト)、何に魅力を感じるのか、ということに対する調査です。
・経済広報センター
まず、経済広報センターの「第23回生活者の企業観に関する調査」の結果から見ていきましょう。2020年3月に経済広報センターから発表されました。経済広報センターは、毎年1回同時期に同調査の結果を発表しています。関心のある人は、経済広報センターのウェブサイトを訪れて、過去数年分ダウンロードしてみてください。
今回挙げている「企業評価の際の情報発信者の信用度」を含め、それ以外に関しても、いろいろ比較し分析してみると、非常に興味深い内容が分かってきます。ここで注目したいのが、今、申し上げた「企業評価の際の情報発信者の信用度」です。
いったい生活者は、誰が発信する情報を信用するのか、ということです。
第1位は「メディアからの発信」です。ここ数年変わっていません。「信用する」「ある程度信用する」、と回答した人は80%にのぼります。「ニュースや記事などの報道」を信用する、これが第1位です。僅差の第2位が、「企業からの発信」で「信用する」「ある程度信用をする」を合わせて78%です。上位二つはここ数年変わりません。企業の不祥事があると企業が下がったり、あるいはメディアがやらせ報道をするとメディアが下がったりしますが、いずれかが第1位、第2位となる結果は変わりません。
「企業からの発信」を詳しく見てみると、「企業ホームページ・各種刊行物・ソーシャルメディア」などと記載されています。各種刊行物の中には冊子、あるいはプレスリリース、ファクトブック、アニュアルレポートといったものも含まれています。つまり、企業が自ら発信する情報を生活者は信用する、ということです。「自ら伝える」ことが大切なのです。
・企業広報戦略研究所
続いて、広報戦略研究所の「第4回 魅力度ブランディング調査」の結果について見ていきましょう。2019年10月に広報戦略研究所から概要が発表されています。同研究所では「魅力度ブランディングモデル」、という独自のモデルを掲げ、毎年調査を実施しています。
内容は、生活者が企業のどのような活動やファクト(事実)に魅力を感じ、その魅力がどのように伝わっているのかを解析しています。非常に興味深い内容ですウェブサイトにアクセスすると過去の結果が分かります。比較してみると、非常に興味深く示唆に富んだ内容です。ぜひ一度ご覧になってください。
同モデルでは企業の魅力を三つに分けています。「人的魅力」「財務的魅力」「商品的魅力」です(「財務的魅力」は、かつては「会社的魅力」としていましたが、近年変わりました)。各魅力ごとに6領域12項目を設定しています。全部で36項目で分析しています。結果は4年連続第1位が「ビジョンを掲げ業界をけん引している」で、今回は47.2%でした。上位5項目のうち4項目が「人的魅力」だった、という興味深い結果が出ています。
「人的魅力」の6領域は次のとおりです。
・リーダーシップ
・職人のこだわり
・職場風土
・アイデンティティ
・誠実さ・信頼
・社会共生
これらのファクトは、その会社の「舞台裏」です。「舞台裏」に生活者が魅力を感じる、という調査結果が出ているということです。ここでは詳しくは説明しませんが、「財務的魅力」と「商品的魅力」は「表舞台」です。財務とは業績、数字ですし、商品は商品そのものですから「表舞台」です。同研究所の調査結果からいえることは、会社は自らの「人的魅力」「財務的魅力」「商品的魅力」を生活者に伝えていきましょう、ということです。それが重要だということです。
二つの調査結果から分かることは何でしょうか。
生活者あるいは組織人に対して、企業は自らその魅力を伝え続けることで共感を醸成できる、ということです。では魅力とは何でしょうか。「人的魅力」が上位5項目中の4項目がを占めていました。つまり、自ら「舞台裏」を伝え続けることで、利害関係者から共感を醸成できる、ということが調査結果から分かるわけです。
最後に今回の講座をまとめてみます。
・生活者は企業が発信する情報を信用する。
・生活者は企業のどんな活動に魅力を感じるのか。
「人的魅力」に最も魅力を感じる。
つまり企業は生活者(=利害関係者)に対して、
・自ら「舞台裏」を伝え続けることで共感を醸成できる。
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