『金井美恵子自選短篇集 砂の粒/孤独な場所で』感想
『金井美恵子自選短篇集 砂の粒/孤独な場所で』はそれこそ、自分にとっての、本を読むことの理由そのものだ。この一冊がそのまま、自分が本を読むことの理由そのものとなる。この本を語ることがすなわち、読むことを語ることであり、読む快楽を語ることだ。
生きているとしか言いようのない体験なのだ、それは。生きているというよりほかのない、痛切な体験、痛切さを伴う体験。欠如を、喪失の記憶を。失いつづける痛みを。不在であること、不在をめぐりつづける繰り返しを生きることの孤独を。永遠に辿りつくこと