他人に期待しないことの代償
「他人に期待するな」。これが基本的な信条である。
誰かに何かを期待してしまうと、期待が裏切られた時の失望感は計り知れない。
だからこそ、最初から誰にも期待しない。
自分のことは自分でやる。そうすれば、誰かに頼ることもなく、失望することもない。
しかし、この信条には思わぬ副作用があることに気づいた。
他人からの親切に戸惑うのだ。
ふいに誰かが親切にしてくれた時、どう反応すればいいのか分からなくなる。
たとえば、重い荷物を持っているときに、見知らぬ人が手伝ってくれるなど、日常の中でちょっとした親切を受けることがある。
その瞬間、戸惑いが生じる。「どう反応すればいいのだろうか?」と。
親切にされたことに対して、どのように振る舞えばいいのか、それを持ち合わせていない。
感謝の言葉を口にしても、それが形式的なものに聞こえてしまう。
心からの喜びを表現することができない。
おそらく、他人に期待しないという姿勢が、他人からの善意を受け入れる能力も奪ってしまったのだろう。
期待しないことで心を守ろうとするあまり、人の温かさを素直に感じ取る感性も鈍らせてしまったのかもしれない。
他人に過度に期待せず、かつ他人の善意を素直に受け止められる —— そのバランスをどう取ればいいのか。
簡単な答えはないだろう。しかし、この問題に向き合うことで、人との関わり方に新たな視点が生まれるかもしれない。
他人に期待しないことと、他人の善意を受け入れることは、必ずしも相反するものではない。
これからは、他人に期待しないという姿勢を保ちつつも、予期せぬ親切に出会った時は、素直に喜び、感謝する練習をしていきたい。
それが、この硬くなった心を少しずつ柔らかくしていく道筋になるはずだ。
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