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遠隔診療の備忘録(5)『オンラインやっちゃいました論文の乱舞』

(写真はオリンピックの表彰台か)

遠隔診療の備忘録。まさかの続き。精神科のオンライン治療の話題が少し溜まってきたので、触れてみる。

今やひと通りのことがオンラインで試されており、感染のこととも絡めて様々な報告・発表がなされている。今でこその話題である。

ただ、たとえば行動療法の報告でも、単に対面の部分をオンラインでした、というだけの報告しか見ていない。誰かもっと面白い取り組みをしていないものだろうか?(そういう論文があったら教えてほしいものである)

というのは、行動療法は、まず治療室よりは生活場面でデータを収集したり介入したりすることがキモになる。だが、アセスメントをしグラフをきちんと作って分析する必要がある。ならば日常の行動を観察するのには今ならカメラも簡単に使えるし、オンラインの機器は大変に便利で良いであろう。

介入するにも、診察室で話すだけでは、充分にその方法を指導できないことがある。オンラインで細かいニュアンスを本人なり協力者なりに伝えれば、行動変容に導くのはよりうまくいくのではないだろうか?


一点問題がある。建前では、オンライン診療はプライバシーへの配慮をかなり厳しくする必要がある。生活場面への介入は、個室でパソコンを用意して話をする、というのとは異なり、他者が入り込む余地が増える。まあ、それくらいだ。



そもそもオンライン診療は、推進したい勢力があった。昨今の容易に外出できぬ事情は、その追い風にしたかったことであろう。だが厚労省の慎重派は、どさくさにまぎれて今オンライン化を推し進めるのには賛成しなかったそうで、オンライン診療に関する緩和措置も今ならではの過渡的なものとみなしているようである。


「対面で話す」を「画面を観て話す」に変えるだけがオンライン治療ではあるまいに、各種の「こんなんオンラインでやっちゃいました」はオンラインならではの話が少ない。読む前から、どうせ「細かいニュアンスが伝わりにくいのが難点である」といった考察とかで締めくくられているのだろう、と思ってしまう。


ならばいっそ、「こんな状況下でも、対面での診察にこだわりました」という論文のほうが面白いのではないか?



Ver 1.0 2022/4/8


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