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カサンドラの嘆き5 『今何次? n次!』


小学生のころ私はパソコン少年であった。宇宙船を月面にソフトランディングさせるBASICで作られた簡単なゲームがパソコンのおまけについてきた。今考えると、2次関数を利用して加速と減速のシミュレーションをしていたのだろうが、当時の私は等加速度運動も微分積分の計算法も知らなかった。

だからというわけではないが、ゲームには苦戦した。実際に宇宙船に乗っていて速度や加速度を感じられたら、うまくいったのであろうか?


3次関数


1、4、9、16…

    *            *            *

前回は、2次関数の話をした。一応話は中学校で習う範囲のところまで来た。それでも、一般的には充分難しい話ではないであろうか? 2次関数は空中でのボールの軌跡や加速する車の移動距離を含め日常にあふれてはいるものの、実際にそれを計算することはまずない。日々の買い物使う数学は、小学校で習う比例までがいいところである。


それでも上の問題は「2乗」なんて言葉は使わなくても、1×1、2×2、3×3、4×4となっていることに気づくことはぎりぎり小学生でもできるかもしれない。ところが今度はそれさえをも裏切る話である。

なんと数列が

1、4、9、22…

となっていた!



今回もアクセル、ブレーキで考えると感覚的に解りやすいと思われる。アクセルを踏むにせよ、ブレーキがかかるにせよ、「加速度」というものがかかるおかげで物体は速度を変える。平たく言うと加速度とは「スピードメーターの動く速度」と言えるかもしれない。この加速度というやつにものすごく慣れてくると、物体の運動について体感的なイメージを持つことができる。

前回までが2次関数までの話なら、今回は3次以上の関数のさらに複雑な話である。


アクセルやらブレーキやらをいろいろ調節することは可能である。そのようにして、とりあえず車は前に進んでいった。その移動距離を測ろう。


車は最初の1秒間で1m先に着いた。次の1秒では4m先までついた。3秒後には最初の位置からちょうど9m先にいる。移動距離は、2次関数で増えているかのように思われる。

物理や数学が得意になってくると、計算まではしなくても「ああ、同じ加速度で運動しているなあ」という感覚が宿るようになる。もっと得意になると「1秒後の車の速度は秒速2メートルだな」なんて暗算する曲芸も披露できるかもしれない。まあ、そんなものは必要ない。

運転している人は本能的に、4、5秒後あたりで


「ああ、そろそろアクセルを緩めよう」


と思って、走りたい速度である例えば時速40kmくらいで同じ速度を維持するようになるかもしれない。

車の動きを予測して制御するのだ。

そりゃそうだ。つまり車はいつまでもスピードを上げない。そんなことをしたら警察に捕まるし、そんなスピードで走り続けられる道路も少ないし、なにより車にも限界がある。



ということは、どこかで等加速度運動をしていないわけで、それは「これは等加速度運動だ!」という予測を裏切っている、ということになる。


じゃあ『1、4、9、22』という数列は、途中で減速するというドライバーの常識さえもをさらに裏切って、逆に4秒後に急加速したのか?


実はこの数列を算出する3次式を、私は予め用意していた。3次式については「3次関数」と言ってもよい。途中まで2次関数であったものが裏切られたのではなく、最初から3次関数を考えていたのである。

それは f(n)= n^3 - 5n^2 + 11n - 6  という関数である。

こういう数式にアレルギーのないかたは、試しにnに1から4まで順に数を放り込んでみるとよい。順に、1、4、9、22が得られるはずである。
見出しのグラフは、この式の n の範囲を実数にしたものである。


3次以上の関数…


3次関数があるなら4次関数もある。5次でも6次でも、n次関数というものはいくらでも作ることができる。(だが高校数学では、グラフに表す関数は4次までにするという訳の判らないルールがあるようだ)


この「ナントカ次」というときのナントカに入る数字のことを次数と言う。次数が上がれば複雑になるので、複雑な動きをする数字を表しやすくなる。


だから、2次関数であると思ったら3次関数であった、3次関数であると思ったら4次関数であった、などということは無限に考えられるのである(逆の裏切りはたいていの場合無理だ。複雑なものをシンプルすぎるものでは表せない)。


関数の次数をあげるほど、より正確に現象を数式で表すことはできるであろう。

例えば100次関数を利用すると、ほぼ直角に見える曲線を描くことができる。( y = x^100 )

厳密にはn次関数によって直角をグラフで描くことはできない。だが次数を上げることによっていくらでもそれに近づける(近似する)ことができるのである。


さあ、予測のための強力な数式としていくらでも大きな次数のn次式が用意された。n次式一般の記載については、あまり数式を書きたくないので略す。とにかく、比例(直線)による予想よりはるかに複雑な振る舞いを予測できるようになった。それも、根気があれば(数字も大きくなければ)まだ普通の計算機でも計算できる。すごいぞ、n次関数!


・・・と言いたいところだが、まだ足りない。何次関数でもない振る舞いというものがあるのだ。

またまた予測は外れるのである。



Ver 1.0 2021/7/28
Ver 1.1 2024/1/17  少しだけ文章を整えた。


#科学
#未来予測
#予測
#n次関数

前回はこちら。


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