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みんなと私の『動機づけ面接』ーークライエントとの同行二人指南(23) 『「動機づけ面接とは?」を考えよう』

「動機づけ面接とは?」を述べてみよう

なにか説明を求められてよく「サイコドラマってのは結局のところ人間の関係性だと思うんですよ…」とか「トラウマっていうのはまずドライブにたとえるとよくてね…」などと自分の私見とこだわりポイントから話す人がいる。聞いている人は、

「あ、長そ」
「聞き終わってもなにもわからなそう」

と予感する。その予感はたいてい当たる。説明を求められたときは、聞いた人が本当に聞きたいことを、その場でふさわしい時間内にまとめることが大事だ。どんな短い時間であれその時間なりに説明できないのは、端折れるところと外せないところが区別できず、あれもこれもとなるからである。つまるところ、ちゃんとわかっていないのだ。


では動機づけ面接とは? と聞かれたときにどう答えたらよいだろうか。

一般人に伝える場合はかなりポイントを絞った説明になるだろう。動機づけ面接を学ぼうとする人々に伝えるなら、簡潔なアウトラインになっているといいだろう。動機づけ面接を使う人が成長するために動機づけ面接のイメージを言葉にするという意味もある折に触れこういったことを考えておくのはよいのではないか。


そういうわけでぜひ、動機づけ面接に知識のあるかたはこの質問に、できれば本など見ずに答えてみてはいかがだろう。



たとえばこんなのはどうだろう。

「『変わりたい』という気持ちを引き出すもの」


結構である。こう言うと、動機づけ面接って役に立ちそうなものに思えてくる。

ここからもっとしっかりとした定義に近づけてみよう。動機づけ面接をまったく知らない人には、上の定義では「お金」「脅し」なども動機づけ面接ということになってしまう。「動機づけ面接」というからにはそれは面接、コミュニケーションの一種なのだということになる。

具体例も入れると次のようにまとめられようか。


「アルコール使用障害や受刑者の再犯防止などに使われている、『変わりたい』という気持ちを引き出すための面接スタイル」


ぐっとよくなった。

さらに考える。叱ったり励ましたりして人が「変わりたい」と思うこともないとは言えない。親に「とっとと片付けなさい!」と言われた子どもがあわてて片付けるとき、しぶしぶながらも「変わりたい」と思っていることには変わりない。もちろんそれは、動機づけ面接のやりかたではない。そこで定義に修正をするなら「自主性の尊重」の要素を付け加えられる。



さらに動機づけ面接の位置づけも考えて

そうは言っても、今や自主性を尊重しないカウンセリングのほうが少ない(実際にできていないカウンセラーが多かったとしてもだ)。治療的な面接はみな自主性を重視する。むしろ動機づけ面接は誘導的なほうである。

そこで『動機づけ面接』ならではという感じを出すために、各種技法における位置づけも意識した定義を考えよう。そろそろ教科書的な定義を改めて載せることにする。そのひとつは



というものである。
「人中心」は「自主性の尊重」を含意しており、動機づけ面接がロジャーズの『クライエント中心療法』をはじめとする人間性心理学の流れを汲んでいることも示唆している。


人間性心理学は「人は成長する」という性善説的な人間観に立つ。だからクライエント中心療法では相手の成長のために「受容」「共感」をする。それを行動の言葉にすると「傾聴」となる。いっぽう動機づけ面接では「人は両価性を持つ」と考え、相手を「健全」なほうに導くために技術を用いる、というのが特徴となる。


最後に学びに来た人相手には?

定義は、正しいというだけでわかりやすくない。もうひと工夫しよう。基本スキルの話は入れるのか? チェンジトークは動機づけ面接の主要な概念だ。それを入れるか? とくに、ワークショップに学びに来た人にはなんと説明すればいい?


私は、どんな技法も、講師ならば5行くらいで伝えられるようにしておいたほうがよいと思っている。ならば、こんなのはどうだろう。



「面接のスタイル」ということも押さえてある。使われている場面も述べている。これで動機づけ面接のイメージがつかめるのではないか。

順番はアレンジしても構わない。ワークショップの講師であれば、これくらいは自分なりの強調点をおさえつつ、諳んじて言えたほうがよいと思う。


動機づけ面接の記事はこちら


Ver 1.1 2023.3.11 

#心理学
#カウンセリング
#動機づけ面接

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