【長編小説】 初夏の追想 25
――今朝のことである。私はこの屋敷に到着してから初めての来客を迎えた。
昨夜その人のことを書いたばかりなので、言霊が呼んだとでもいうのだろうか、玄関の呼び鈴が鳴ったのに驚いて出て行くと、扉の向こうに立っていたのは、何と篠田その人であった。
「ご無沙汰しています」
屋敷に上がりながら、篠田は紳士らしい仕草で、被っていたパナマ帽を脱いだ。いまでもこの土地に別荘を所有している数少ない人士の一人である彼は、噂に私がこの建物を買ったことを聞いたという。
思いがけない来客にあた