うわのそら

このすっきり晴れた青空の理由を、以前誰かから聞いた覚えがあるが、何だったのか思い出せない。
私が行く方向を指し示すように、飛行機雲が南西の方に伸びていく。我が町には空港がない。ないから飛行機はいつも、その姿が見えないくらいの高度を飛んでいる。でも、あの矢印の先に本当に飛行機があるのかなんてわからないのだけれど。
なぐさめるような風が水面に細かな波紋を作る。受像機が軽い太陽風を浴びたかのように。蓮が清廉な花を咲かせていた庭の壺も、今は雨を受けるだけになってしまった。
見えなくたって構わない私と青い空が映っている。水面に顔を寄せると、その小さな蓮池の底に、僅かな光を見つけた。それはかつて、パンドラの箱の底にあった小さな希望に思えた。

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