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夏の夜の幻影 シロクマ文芸部
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夏は夜 月のころはさらなり
硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、淀みに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし
夏は夜がいい。月のころは言うまでもない。文机に向かい、心に浮かぶあれこれを思うままに書き綴れば、淀みに溜まるあぶくのような事柄も、様々に形を変えながら、やがてどこかへ消え去ってしまうものである。
徒然草 吉田兼好
方丈記 鴨 長明
山のドアを開けると男と女がいた。女が立ち上がろうとするのを男が右手で制した。
男は立ち上がってフォークと何やら香辛料らしきものを手に戻ってきた。
女はフォークを手にして微笑んだ。なんとも魅力的な微笑だ。
調味料は何だったのだろう。思い出せない。テーブルの上には皮をカリカリに焼いた分厚いサーモンのステーキ。それとクリームシチューかクラムチャウダー。ここに何を足す?そんな拘りはなかった気がする。暮らしの中ですり減ってしまったのだろうか。
結婚前の光景だった。彼女は、そして私はここで何を見つけたのだろう。
月のドアを開けると、学校の教室だった。何年生かはわからないが、小学校の高学年のようだ。テストの答案がかえってきて、少年は項垂れている。どうやら結果は思わしくなかったらしい。
教師に声をかけられて、少年は背筋を正す。
ああ、思い出した。この時、発想がおもしろいと言われたのだった。答えは間違っていてもそれでいいんだ。そう思ったのだ。
私の学習意欲はここが端緒だった。
これが死ぬ直前に見るという走馬灯なのだろうか。
了
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小牧部長さま
よろしくお願いいたします。
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