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2022年映画感想

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2022年5月の記事一覧

映画『死刑にいたる病』感想 ホラーというジャンルに収めた腕を評価すべきか否か

 確かに怖い作品ですが、怖がらせようとしている感もありました。映画『死刑にいたる病』感想です。  櫛木理宇による原作小説を、『孤狼の血』『凶悪』などで知られる白石和彌監督が映画化した作品。人間ドラマから裏社会ものまで、多作で幅の広い作風の白石監督ですが、今作はバイオレンス側の白石作品になっています。今まではヤクザものでの暴力描写のイメージでしたが、今作での猟奇殺人、シリアルキラーものの雰囲気は、初期の傑作『凶悪』以来な気がします。強いていえば、『孤狼の血LEVEL2』

映画『マイスモールランド』感想 悲劇を強さに変える作品 

 酷い社会制度と、人間の美しさの対比が素晴らしい。映画『マイスモールランド』感想です。  是枝裕和監督の助手などを務め、今作が商業長編映画デビューとなる川和田恵真による監督・脚本作品。川和田監督自身も、日本とイギリスのハーフなので、その経験が多分に含まれた物語であることを想像させます。  主演を務める嵐莉菜さんも、本作が映画初主演にして初出演。実際にはクルド人ではなく、母親が日本とドイツのハーフ、父親がロシアやイラクにルーツを持つ元イラク人で日本国籍を取得しているという

映画『カモン カモン』感想 心の奥底にある感情を翻訳する映画

 モノクロ映画は最近の流行りぽいですが、その中でも最もカラフルに感じられました。映画『カモン カモン』感想です。  『20センチュリー・ウーマン』でも知られる映画監督マイク・ミルズによるアメリカ映画。配給会社はA24ということなので、センス良さげな雰囲気を感じて観てまいりました。  あらすじを読んでもらえばわかる通り、筋書きとしては物凄く凡庸な物語だと思います。子役の可愛らしさで引っ張りつつ、大人が色んなことに気付く姿を感動的に描くというのは、正直手垢まみれもいいところ

アニメ映画『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』感想 元版の広告のための劇場版

 元版の全13話が素晴らしいアニメです、という話をしています。アニメ映画『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』感想です。  『セトウツミ』などで知られる漫画家の此元和津也が脚本を手掛け、テレビ東京系列で2021年に放送、及び配信され、話題となったアニメ『オッドタクシー』を、再編集・新規カットを加えて劇場版映画とした作品。  放送時、スカートとPUNPEEのコラボ曲が主題歌という情報だけで第1話を観たところ、ドハマりしたアニメでした。2020年が『映像研には手を出すな!』なら